絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのブログから「#恋の記憶」タグの検索結果

5 件中 1 - 5 件表示
カバー画像

夜に読む、恋の記憶 第10話最終話

その夜、私は古いノートを開きました。何かを探していたわけではありません。ただ、部屋を片づけていたら、引き出しの奥から出てきたんです。少し角が折れた、薄いノート。何気なくページをめくると、そこに彼の名前がありました。何度も書いたわけではありません。たった一度だけ。でも、その一文字を見ただけで、胸の奥が少しだけ静かになりました。ああ、ここにも残っていたんだ。そう思いました。スマホの中だけじゃない。写真の中だけじゃない。歌や、駅や、雨の日だけじゃない。こんな何でもないノートの端にも、あの恋は残っていたんだと思いました。そのページには、短い言葉が書いてありました。「ちゃんと好きだった」たぶん、あの頃の私が書いた言葉です。誰にも見せるつもりなんてなくて、きっと自分でも忘れていました。でもその一文を見た時、少しだけ泣きそうになりました。あの頃の私は、うまく愛されなかったことばかりを気にしていました。連絡が来ないこと。会えないこと。言えなかったこと。選ばれなかったこと。そんなことばかり数えて、自分の恋が間違いだったように感じていました。でも、違ったのかもしれません。ちゃんと好きだった。それだけは、嘘じゃなかった。不安になった日も。期待してしまった夜も。ひとりで泣きそうになった帰り道も。全部、ちゃんと誰かを大切に想っていた時間でした。私はそのページを、しばらく見つめていました。消したい過去ではありませんでした。戻りたい過去でもありませんでした。ただ、もう抱えて歩かなくてもいい記憶になっていました。彼を好きだった私を、恥ずかしいと思わなくていい。あんなに待ってしまった私も。言えないまま終わらせた
0
カバー画像

夜に読む、恋の記憶 第9話

彼の好きだった歌を、偶然お店で聞いた夜がありました。もう思い出さなくなったと思っていたのに、そのイントロが流れた瞬間、足が少しだけ止まりました。あの人がよく口ずさんでいた歌。車の中でも、帰り道でも、何でもない夜の電話でも。「この曲、好きなんだよね」そう言っていた声まで、一緒に戻ってきた気がしました。私は何も買わずに、そのお店を出ました。外は少し蒸し暑くて、夏の夜の匂いがしました。もう終わった恋なのに。もう連絡先を開くこともないのに。たった一曲で、あの頃の気持ちが戻ってくるなんて、少し悔しかった。家に帰ってから、私はその曲を検索しました。聞かなければよかったのに、どうしても聞きたくなりました。再生ボタンを押すと、懐かしいメロディーが部屋に流れました。彼と一緒にいた時間が、少しずつ思い出されました。助手席から見た夜の道。信号待ちの横顔。私が何か言うと、少しだけ笑ってくれた声。特別な言葉をもらったわけではないのに、あの頃の私は、それだけで幸せでした。でも、曲が進むにつれて、だんだん胸が苦しくなりました。この歌は、私だけの思い出じゃない。きっと彼は今も、どこかで何気なく聞いているのかもしれない。何も思い出さずに。私のことなんて、少しも思い出さずに。そう思ったら、急に寂しくなりました。同じ歌を覚えていても、同じ気持ちで覚えているとは限らない。同じ時間を過ごしていても、同じ重さで残っているとは限らない。それが少しだけ、悲しかったんです。曲が終わったあと、部屋はまた静かになりました。私はもう一度、再生しようとして、指を止めました。これ以上聞いたら、またあの頃に戻ってしまいそうでした。でも、戻
0
カバー画像

夜に読む、恋の記憶 第8話

スマホの写真を整理していた夜、彼の写真が出てきました。消したはずだったのに。忘れたふりをしていただけで、ちゃんと残っていました。写真の中の彼は、少しだけ照れたように笑っていました。たしか、あの日はたいした予定もない日でした。駅前で待ち合わせをして、なんとなく歩いて、途中で見つけた小さなカフェに入りました。彼は甘いものが苦手だと言いながら、私のケーキをひと口だけ食べました。「思ったよりおいしい」そう言って笑った顔が、なんだか可愛くて。私は思わず、スマホを向けました。「撮らないでよ」そう言いながらも、彼はちゃんとこっちを見てくれました。その写真でした。あの時は、この写真を何度も見返す日が来るなんて、思っていませんでした。会えない日も、少し寂しい夜も、その写真を見ると安心できました。ちゃんと一緒にいた日がある。ちゃんと笑ってくれた日がある。ちゃんと私の隣にいてくれた日がある。そう思いたかったのかもしれません。でも、いつからか、その写真を見るたびに苦しくなりました。もう戻れない時間なのに、画面の中だけはずっと優しいままで。写真の彼は、私を傷つけませんでした。冷たい返事もしない。約束を曖昧にしない。急に遠くなることもない。だから余計に、手放せなかったのだと思います。その夜、私は写真を開いたまま、長い時間ぼんやりしていました。消そうかな。何度も思いました。でも、指が動きませんでした。消したら、あの時間まで嘘になってしまうような気がしたんです。好きだったことも。嬉しかったことも。隣にいられて幸せだったことも。全部、なかったことにするみたいで、できませんでした。でも本当は、写真を消せなかったん
0
カバー画像

恋日記 第4話

忘れたふりが、少しだけ上手になる恋があります。もう平気だよって顔をして、普通にご飯を食べて。友達と笑って。仕事もして。ちゃんと毎日は過ぎていく。でも、ふとした瞬間に、まだ心が覚えていることに気づく日があります。似た香りがした時。同じ名前を見かけた時。あの人と行った場所の近くを通った時。もう思い出したくないのに、心だけが先に反応してしまう。忘れたつもりだったのに。大丈夫になったつもりだったのに。まだ少しだけ、あの恋の中にいる自分がいる。そんな時、少し悔しくなることがあります。こんなに時間がたったのに。もう終わったことなのに。どうしてまだ、胸がきゅっとするんだろうって。でも心葉は思うんです。忘れられないことは、前に進んでいないということではないのかもしれません。ちゃんと好きだったから、簡単には消えないだけ。大切だった時間ほど、心の中に少し長く残るだけ。忘れたふりをしながら、本当は少しずつ、思い出との距離をとっているのかもしれません。昨日より泣かなくなった。前よりスマホを見なくなった。思い出しても、少しだけ早く日常に戻れるようになった。それもちゃんと、前に進んでいる証だと思います。今日は、あの人の好きだったものを見かけました。一瞬だけ、心が止まりました。でもすぐに、私はその前を通り過ぎました。忘れたわけじゃない。でも、もう立ち止まらなくても大丈夫だった。そんな自分に、少しだけほっとしました。恋って、終わったあとも、すぐには心から出ていってくれません。でもいつか、思い出しても苦しくない日が来る。忘れたふりをしながらでも、ちゃんと今日を生きているなら、それで十分なのかもしれません。心葉(
0
カバー画像

あのとき伝えられなかった「好き」が、今も残ってる

「好き」って言えばよかったって思うことがある本気で言ったら、何かが変わってしまう気がして黙ったまま時間だけが過ぎたあなたはいつもどおりに笑ってた私も笑っていたけど心の奥ではずっと揺れてたんだ言えない「好き」ってどうしてあんなにも苦しいんだろうあのときの私は“タイミング”とか“関係性”とかいろんな理由を並べて自分の気持ちをなかったことにしようとしてたでも、本当は気づいてたんだ伝えられなかったその気持ちはどこにも消えていないってことに時間が経ってあなたとは何も交わさなくなっても心の中にだけあの「好き」がちゃんと残ってるたった一言のはずなのにどうしても言えなかったその言葉それでも誰かを真剣に想った時間があったことその気持ちが今も続いていることがどこか誇らしいとも思える想いって言葉にしなかったからって無意味になるわけじゃないむしろ言えなかった分だけ強く胸に残るのかもしれないもしまた会えるなら言いたいと思う「好きだったよ」じゃなくて「今も、ちゃんと好きだったんだよ」ってでもたぶんそれは過去に向けた言葉じゃなく今の私自身に伝えるための言葉なのかもしれない言えなかった気持ちも言わずに終わった恋も消さなくていい残ってるならそれはまだ、大事な想いだから
0
5 件中 1 - 5