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ドイツ語翻訳~メルヒェンの国からの依頼~「アウグストゥス」第一話

(写真はヘッセがバイトしていたというテュービンゲンの本屋さん。今は二階部分が古書店になっているそうですが、私が行ったときは残念ながら定休日でした。定休日じゃなかったとしても入れなかったでしょう・・・値段が高いものを多く扱っているようです)明けましておめでとうございます。年末年始、私、メルヒェンの国にいたんです。 時差ぼけならぬメルヒェンぼけしておりました。 12月のはじめにドイツ語翻訳のお仕事を頂いたんです。 その依頼してくださった方が、メルヒェンの国の住人だったというわけですね。 何がメルヒェンかというと、頂いたお仕事内容がヘッセのメルヒェン「アウグストゥス」の日本語訳だったということだけではなく・・・依頼人ご本人様が私にとってすでにメルヒェンだったのです!! 殺伐とした現代。日本は?経済は?世界はどうなる?来るのか?大災害!失業者数増加!税金が!財務省が!なーんてユーチューブ動画ばっかり見ていた私にとって、依頼者さんの存在自体がまぶしすぎてもう・・・くらくらしてしまったんです。 みんながスマホを片手に自分の世界に入り込み、お手軽な現実逃避で時間をつぶすだけ。 町を歩けば、他人に無関心、ぶつかっても無反応。 たまに親切な人がいたと思えば、キャッチか宗教の勧誘。 本音を言おうものなら、クレーマーか教養ない人だと思わるだけ。 それなら他人と関わるよりは、スマホ片手に自分の世界にこもっていたくもなりますよ。 さらに、クリスマスにサンタさんが来て枕元にプレゼントを置いてくれる・・・なんてサンタの存在を信じているかいないかという世界ではもはやなく、私は「サンタはいる・・・サンタの正体は
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ドイツ語翻訳~メルヒェンの国からの依頼~「アウグストゥス」第三話

「私は、このメルヒェンをそのまま、この作品がこの瞬間にあなたに語り掛けるように、そのまま、何かの意味を探すのではなく、そのままの絵と音楽に従って、読んでくださればいいと思っています。 だって、それはその中にすでにある、だけど、人によってそれは別の服を着ているからです。もし、私がそれを裸の言葉で語ることができたならば、もちろん、私はもう詩を作ることはしないでしょう」  Hesses Kunstmärchen - Augustus „Ich hoffe, Sie werden auch weiterhin die Märchen einfach so lesen, wie sie im Moment zu Ihnen sprechen, einfach den Bildern und der Musik nach, ohne Suchen nach einem ‘Sinn’. Denn dieser ist wohl darin, aber er nimmt für jeden ein anderes Kleid an, und wenn ich ihn in nackten Worten sagen könnte, würde ich natürlich keine Dichtungen mehr machen. ヘッセは、「アウグストゥス」について、1919年6月にゲオルグ・ラインハルトという人物にあてて手紙でこう書いているそうです。 ヘッセは、魂に直接語り掛ける。そういう文章を書く作家なのだなと私は思ったのです。だから、読む人によって、また読むタイミングで、どんな感想を抱くか
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ドイツ語翻訳~メルヒェンの国からの依頼~「アウグストゥス」第二話

依頼人様は私にとってはメルヒェンの国の住人で、私とはかけ離れた世界で、この世を生きてこられたお方。世界観を壊してしまったらどうしよう・・・こんなの「私のアウグストゥスじゃない」って思われたら悲しい・・・私、メルヒェンを裏切りたくないし、メルヒェンから嫌われたくない。私のようなヒキコモリ人間が、この仕事を受けていいのだろうか・・・とちょっと躊躇したんです。だけど、このメルヒェンのメルヒェンである理由も分からぬどっかの誰かにこのメルヒェンの国からの依頼を取られるのはイヤだったのです・・・誤解しないでいただきたいのですが、依頼者様がメルヒェンの国出身・在住であると気づくのは、私のようなすれっからしにしかできないと言っているだけです・・・。 文芸作品を依頼で日本語にするなんてこと、私、実は未体験。 しかも、ヘッセのメルヒェンはドイツ文学翻訳界の巨匠、高橋健二さんが翻訳をされ出版されており、長く愛され続けているのです。 boみたいな中途半端なやつが手を出していい世界じゃない!! だけど、今回の依頼は、依頼者様の好きな世界観を絵本にするためである。 つまり、私が自分で解釈・分析して「翻訳」作業をする必要はないわけです。 そのまま素直に訳して、原文にある単語の関係性を明らかにする、というところまででいい、ってことなんですね。 一般的に言われている「翻訳作業」の半分くらいでいい、ということなのです。読みやすいように文体を変えたり、言い回し変えたり、読者対象年齢に合わせて使う言葉や表現方法を変えたりする作業まで私はする必要がないわけです。年末、私の住んでいる地域でも雪がちらついたんです。 お休み
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アウグストゥス 第十七話 最終話

なかなか最後の一手が思いつかない二人。 お互いに「アウグストゥス」のどの部分が好きか、どういう時に読むのか、ということを話し合いました。その後、そもそも「どうしてこの本を手にしたのか」という話にまで遡りました。 挿絵の女の子は子どもの頃のことを話しました。 きっかけは、読書感想文でした。ヘッセの「車輪の下」が課題図書でしたが、本を読むのがあまり好きでなかったので、どうしても読めなかった。そこで、同じ作家のものでもっと短い作品はないかと探し「メルヒェン」を手に取った。短編がいくつか収録してあり、一番最初の「アウグストゥス」で感想文を書こうと読み始めたのでした。 読んでみたら、それは絵本ではなかったのにも関わらず、女の子の頭の中にははっきりとその場面が立体映像のように浮かび上がってくるのです。夢中になって読み、その印象を読書感想文に書いた。それが先生にとても褒められた上に、そのイメージを絵に描いたものが、コンクールに出品され、賞をもらったのでした。それ以来、絵を描くのが好きになった。そういう記憶もありこの物語は特別なのでした。 翻訳担当の女の子も自分の思い出を語ります。 父と母が離婚することになり、父の実家で祖父母に預けられていた時のことです。 ある日、学校から帰ると机の上に「メルヒェン」が置かれていました。 寂しい気持ちや不安な気持ち、色々あってふさぎ込んでいましたが、読み進めると夢中になってしまいました。 「メルヒェン」の中には別の作品も載っていましたが、「アウグストゥス」が一番好きでした。「あの時、机の上に本を置いてくれたのって死んだおばあちゃんだったのかなぁ」と、女の子は言
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アウグストゥス 連続ドラマ第十五話

元ドイツ語講師は、隣に座って絵を描いている女の子のスケッチブックをちらりと覗き見しました。 そして、ぎょっとしました。 女の子はそれに気づいて「どう?最後のシーンの挿絵なんだけど!」と自信満々な顔をして聞きました。 翻訳に夢中になっていた女の子も顔をあげて「見せて」とねだります。挿絵の女の子は、ちょっとテレながら、「じゃーん!!」と描いた絵を見せました。小さな教会のような空間に、火が入った暖炉があります。そして大きな窓があり、そこから月の光がさしていました。 名付け親のおじいさんにもたれかかり、眠るように息絶えるアウグストゥス。 金色の天使が鈴を持って打ち鳴らし、母親の姿をした天使がアウグストゥスの魂を天国に導いているようでした。 翻訳の女の子はじっと見て、「素敵」と言いました。元ホストも手を休めて「いいじゃん、雰囲気ある」と褒めています。 元ドイツ語講師だけが浮かない顔をしていました。 どう感想を言うべきか、分からなかったのです。 全体がキリスト教的なイメージそのものだったのでした。女の子は「じゃ、これで進めていくね!ちゃんと色を付けて・・・」と満足気でした。 元ドイツ語講師は、ヘッセがインドやアジアの宗教にも関心が深く、キリスト教に関しても独自の視点を持っていたことを知っていました。 単純にキリスト教的発想で描いてほしくない、そう感じていたのです。 最後のシーンが思い浮かばなくて悩んでいた女の子が夢中になって描いた絵を、全否定することになってしまう。どう言うべきなのか・・・そもそもこのプロジェクトは女の子二人のもので、自分には関係がない。絵のアドバイスまで頼まれていないのに
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ドイツ語翻訳~メルヒェンの国からの依頼~「アウグストゥス」第五話

アウグストゥスは、名付け親の好意で、母親の願いを現実化されてしまいました。 名付け親が母親に「願い事を一つかなえてあげよう」と言ったからです。 母親は、子どもに願います。「この子がみんなに好かれますように」と。 言ったそばから、母親は「もしかして、とんでもない間違いをしてしまったのではないか?」とゾクリとします。 ちょっと想像してみてください。 あなたは、子どもを産みました。まだ小さいその子のために、願い事を一つかなえてあげると言われたら、あなたは何を願いますか? あなたの腕の中で安心して眠っている子に、あなたはなんと願いますか? そして、想像してください。 あなたは子どもです。子どもとして、あなたは親から願い事をされるとします。どんな願いをしてほしいですか?どんな願いをしてくれていたら、今のこの状況をよりよくできると思いますか? メルヒェンのお約束。願い事をしたら、その願い事のために苦しむ羽目になる。 「いっそ、こんな願いなどしなければよかった」という事態に陥るのです。 大金持ちになるように、と願えば、そのお金で苦しむことになる。 愛を望めば命を取られる。 権力を望めば、その権力のせいで、賢ければ賢いという理由で孤独になる。 そして健康や長寿を願えば、「自分が死ねばよかった」と思わされるか「お前が死ねばよかったのに」と人から思われるようになるのです。 よい仲間に恵まれますように、と願えば、その仲間を切らねばならない事態に遭遇する。 「幸せになりますように」という願いならば、無害だろうと思うかもしれませんが、幸せを感じるためにはどん底の不幸を味わわされることになる。 じゃ、平凡
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原文で味わいたいドイツ語「アウグストゥス」 連続ドラマ第十話

「ちょっと待て待て」と元ドイツ語講師は割って入りました。 「お前、この文をどう理解してんの?」 es gab nichts Schönes und Herrliches und Beneidenswertes, das sie nicht für dieses Kind ausgedacht und gewünscht und geträumt hätte 「前から素直に訳したよ。dasはSchönes、 Herrliches 、Beneidenswertes美しいこと・すばらしいこと・羨ましがられるようなことを指してる」 女の子はなんの疑問もなく答えました。 「母親には、美しいことも素敵なことも、人から羨ましがられるようなことはなくて、この子の為でなければそういったことを考えもしなかったってことなんじゃないの?」 元ドイツ語講師は、頭を振りました。 「dasは関係代名詞だろ?」 「先行詞はこれ」と言いながら、元ドイツ語講師はnichtsを指さしました。 nichts=nothing つまりこの文は二重否定、二重否定は肯定の意味になる。 女の子ははっと気づき、しばらくショックのあまり絶句していました。その後、頭を抱えながら「うわぁぁぁ」と叫び出しました。 この子のためでなければ、考えも、願いも、夢を見ることもしなかっただろう、美しいこと、すばらしいこと、人から羨ましがられることはなかった!! 挿絵の女の子と、元ホストは二人で声を合わせて「意味が全然分からなくなったんだけど!!」と言いました。 「だから、つまりこれはね。母親がありとあらゆる妄想をしましたってことなんだよ。生まれて
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ドイツ語翻訳~メルヘンの国からの依頼~「アウグストゥス」第六話

Liebe、愛。「アウグストゥス」のテーマの一つには、確かに「愛」というものがある。 だけど、その愛は、もしかしたら、ヘッセは階級、もしくは種類で分けて考えているのではないか?という印象を受けた。 試しに、はっきりとLiebe(名詞)、またはlieben(動詞)と書かれている箇所を抜き出してみましょう。 1、アウグストゥスが子どもの頃、女の子からキスをねだられた時、彼は女の子の指輪と引き換えにキスを与えた。母親がその現場を目撃し、自分の息子が女の子の愛をひどい態度で受け取ったとショックを受けた。 2、金持ちの未亡人がアウグストゥスのパトロンだったが、アウグストゥスが愛していたのは町娘だった。 3、簡単にいつも手に入るので、彼は愛をくだらないものだと思うようになっていった。 4、アウグストゥスの初恋。船上の北欧美女に一目ぼれ。愛を勝ち取ろうとした。 5、北欧美女はアウグストゥスを愛していた、それは彼女にとって初恋である、と告白するシーン。北欧美女は「愛」を連発して使っています。 6、失恋し、自暴自棄になったアウグストゥスは、もう愛を感じる感性を失っていました。 7、自分が求めて勝ち取ったものではない愛を受け取るのにうんざりした。 8、自分を内省、振り返っても愛の痕跡すらないと気づく。 9、名付け親のビンスヴァンガーから彼自身の願いをかなえてもらう。そこで彼に対する愛が燃え始めた。 10、アウグストゥスは人々から暴行を受ける。その人たちはかつてアウグストゥスのことを愛していた人たちだった。 11、アウグストゥスは見かける人たち、子どもたちのことを愛しました。 12、すっかり老いぼれ
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