[小説]第3話 旅立ちの理由
白い光に満ちた部屋だった。
壁も、床も、天井も、無機質な白で統一されている。消毒液の匂いが、わずかに空気に混じっていた。
私は、硬い椅子に腰を下ろし、正面の壁を見つめていた。横では、トム・ブラウニーが同じように座っている。
だが彼は、私とは違い、落ち着きなく足を揺らし、指先を強く握りしめていた。
メディカルサービスセンター。
リサ・ブラウニー博士が倒れてから、どれほどの時間が経ったのか。私の内部時計は正確に刻んでいたが、それが「長い」のか「短い」のかは、まだ判断できなかった。
ただ、トムの様子から察するに、この待ち時間は、人間にとって耐え難いものなのだろう。
トムは、何度も時計を見ていた。そして、また足を揺らす。指を組む。解く。また組む。
その動作が、不安を表しているのだと、私は理解し始めていた。
待合室には、他にも何人かの人間がいた。
老人、若い女性、子どもを連れた母親。
みんな、同じように待っている。
誰かの治療が終わるのを。誰かの診断結果を。誰かの回復を。
その時だった。
自動ドアが静かに開く音がした。
入ってきたのは、一人の男性だった。年齢は四十代後半。疲労の色を隠しきれない表情をしているが、背筋は伸びている。
白衣を着ている。医師だ。
トムは、椅子から跳ねるように立ち上がった。
「とうさん! かあさんは無事なの?!」
声が震えている。
私は、その振動を音声データとしてではなく、"感情の揺らぎ"として解析していた。
男性は、一瞬だけ視線を伏せ、次にトムを見た。
「トム……」
声は低く、慎重だった。
「リサは、生きてる」
トムの肩が、わずかに下がる。
安堵。
だが、それは
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