なめらかな床上に、質量Mの車が置かれている。車の天井から長さrの軽い糸で、質量mの小球をつるす。
糸が鉛直方向と角度θ0をなす状態で小球と車を静止させる。その状態から小球を静かに放すと、小球と車が運動を始めた。
小球が運動の最下点に達したときの小球の速さvと車の速さVを求めよ。
運動は、図の紙面に平行な方向にのみ行われる。重力加速度をgとする。
<解説>
内力を及ぼし合いながら運動する2物体のパターンです。
まず、運動の過程ではたらく力をすべて図にします。
はたらく力は、重力mg、Mg。車と小球にはたらく張力(大きさT)。垂直抗力N。
本当は糸にはたらく力も考えなくてはいけないところですが、糸は軽い(=質量が無視できる)、とあるので、糸は無視して、車と小球が内力Tを及ぼし合いながら運動していると考えます。
エネルギー・仕事から始めましょう。
力が仕事をするかしないか判断します。
小球の高さが変化しているのでmgは仕事をします。車は高さが変化しないのでMg、Nは仕事をしません。
車から見ると小球の運動は円運動です。車から見ると小球の速度は糸と垂直ということです。ということは、床から見ると、小球の速度と糸の向き、すなわち張力の向きは、垂直ではありません。したがって、張力は小球に対して仕事をしています。車は床上を水平に運動するので張力から仕事をされるのはあきらかです。
これで、仕事をする力は、重力mg、張力Tのペアだと分かりました。
重力mgする仕事は簡単です。張力Tのペアがする仕事は次のように考えます。
運動の方向が一定ではないので瞬間の仕事率を考えましょう。
ある瞬間の、小球の速度をベクトルv、車の速度をベクトルV、小球にはたらく張力をベクトルTとします。作用・反作用の法則から車にはたらく張力はベクトル(-T)です。
張力の小球に対する仕事率は T・v 、車に対する仕事率は (-T)・V 。張力が小球と車にする仕事率の和をPとすると
P=T・v+(-T)・V=T・(v-V)
ここで(v-V)は車から見た小球の相対速度です。車から見た小球の運動は円運動なので、相対速度と糸(したがって張力)は垂直です。つまり、Tと(v-V)は垂直です。
T⊥(v-V)
∴T・(v-V)=0
∴P=0
これで各瞬間に張力が小球と車にする仕事率の和は0だということが分かりました。したがって、張力が小球と車に対してする仕事の和は0です。
小球と車に対して仕事をするのは重力mgだけだと分かりました。重力は保存力なので力学的エネルギー保存の法則が使えます。
次は、運動量です。
はたらく力を内力と外力に区別します。
張力のペアが内力で、重力、垂直抗力は外力です。
外力はすべて鉛直方向なので、水平方向の運動量が保存されます。
はじめの水平方向の運動量の和は0なので
mv+M(-V)=0
未知数2つ、式2つになったので解けました。あとは解くだけです。