司法試験不合格の原因として、多くの人は、下記のような要因を挙げるのではないでしょうか。
・知識不足
・論点に気が付かなかった
・あてはめが薄くなってしまった、事実の抜き出しが少なかった
不合格となる場合、上記は原因ではないことが大半です。
私自身、司法試験を3回受験しています。私も、上記のような原因を疑って勉強を積み重ね、知識も理解力も文章力も付けました。模試でも1回目の受験の時から論文の成績でもAやBが付いていました。しかし、結果は2回とも2,000番台で、箸にも棒にもかからない状態でした。
転機は3回目でした。この年の私の答案は、それ以前と比べて内容は薄く、あてはめも最小限でした。ところが結果は、2,000番以上も順位を上げて合格することができました。
理由は、それまでの勉強法をごっそりやめて、戦略と方法論を見直したからです。具体的には、以下のようなことをやめました。
・論証の作成や覚えることに時間を割くこと
・「論点に気が付けるように」と意識して勉強すること
・試験中に「自分の知っている知識・論点か」、「解いたことのある問題か」と、頭の中で検索すること
代わりにやったことは、「2時間・3,000字という枠組みの中で、問いに答えるためにはどうすればよいか」にこだわっただけです。
「骨と皮だけ」の答案が、なぜ7位なのか
3回目の受験の際には、合格答案の分析に時間をかけるようになりました。その中に1通、強烈に印象に残った答案がありました。
刑事系で7位で合格した受験生の答案です。その合格者の答案の字数は、刑法が約2,350字、刑訴が約2,300字でした。
まず前提として、論文式試験において、2時間で受験生が書ける平均的な字数は、およそ3,000字程度(CBT方式の答案用紙で5枚前後) と言われています。
📌 今年度より試験方式が手書きからCBT(PC入力)に変わりました。入力速度によっては字数が増える可能性もありますが、基本的な枠組みは同じと考えて差し支えありません。
ご存じのように、刑訴は全科目の中でも字数が最も多くなりやすい科目の一つです。また、近年は傾向の変化と共に字数も少なくて済むようになりましたが、刑法も以前は刑訴と並んで字数を要する科目でした。「刑訴や刑法は6~7枚は最低でも書かないといけない」と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、刑事系7位の合格者の答案は、刑法も刑訴もおよそ2,300字。答案用紙にすると4枚です。答案内容は「骨と皮だけ」と言っていいくらいシンプルでした。
それで、7位です。
当時の私は、字数が少なくとも超上位合格出来ることに驚きました。
つまり、司法試験に合格するうえで、あてはめを充実させることは必要条件ではないのです。
では、刑事系7位の合格答案には何が書かれているのかというと、「問われていることにそのまま答えている」だけでした。
つまり、司法試験に合格するための必要条件とは、「問いに答えているかどうか」だけだったのです。
それまでの私の答案は、「書きたいこと」を書いており、「書くべきこと」を書いていないことに気が付きました。これこそが、合格者と不合格者を分けている大きな差だったのです。
それから私は合格答案の分析を重ね、「問いに答える」とは何かを追求した結果、冒頭にもお話した通り、2,000番以上順位を上げて合格することが出来ました。
合格後、ある国立大学の法科大学院で5年間、複数回受験生を中心にゼミ講師を担当しましたが、複数回受験生の全員が、「問いに答えていない」という点で共通していました。
そして、受験生が気にしていることは、毎年同じでした。
・「知識が足りているか」
・「論点に触れられているか」
・「あてはめが充実しているか」
これは、冒頭で話した、不合格の原因として思い浮かぶ例と同じです。しかし、これらは合格のための必要条件ではありませんし、不合格の原因でもありません。
そして、「問いに答えていない」とは、下記のような意味でもありません。
・✗「論点を書かなかったor書けなかった」こと
・✗「規範・論証を用意できていなかった」こと
・✗「あてはめが薄かった」、「事実の抜き出しが不十分だった」こと
「問いに答える」とは、「問題文で聞かれていることに、素直にそのまま答えられているかどうか。」 それだけです。
例えば、幼稚園生に、「好きな食べ物は?なぜ好きなの?」と聞いたとします。その幼稚園生は、「ハンバーグ!だって美味しいんだもん!」と答えました。
これが「問いに答えている」答案のイメージです。ところが、司法試験の答案では、これができていないケースが驚くほど多いです。
あなたの答案は、問われていることに「そのまま」答えられていますか。
よくある失敗パターン(4つの類型)
合格答案の分析と指導経験を踏まえると、「問いに答えられていない」答案として、主に4つのパターンがあると考えています。
・パターンA:「論点に触れた」ことで「問いに答えた」と認識している
・パターンB:「知っている話」「用意している論証」に引き寄せて書く
・パターンC:「あてはめの充実」にこだわる
・パターンD:「事実を沢山抜き出すことが出来たか」を気にする
受験生の平均的な字数は3,000字と言いましたが、一度3,000字以内で答案を書いてみてください。そうすると、3,000字という制約の中で、あてはめを充実させたり、事実を沢山抜き出すことは物理的に困難なことに気が付くはずです。つまり、パターンCとDの答案は、合格のために必要ではないことにこだわった答案なのです。 しかし、多くの受験生は、パターンCとDを前提に答案を書いています。
一方で、「自分は3,000字以上書けるから関係ない」と思っている人ほど、実は上記のパターンにはまっていることがものすごく多いという実情もあります。
パターンA・Bについても様々な例がありますが、いずれのパターンについても、書いた本人は「問いに答えられた」と勘違いしていることがものすごく多いです。それゆえ、自分の認識と実際の点数が大きく剥離していることがあるのです。
模試や答練の解説を見て、「なるほど、この論点を書ければよかったんだ」、「〇〇の事実を抜き出せばよかったのか」となり、ノートや論証集にまとめたり、あてはめに使える事実を一生懸命整理したりしていませんか?
何度も言いますが、必要なのは「問いに答えること」です。
したがって、自分が知っている知識・論点か、過去に解いたことがあるか否かは一切関係ありませんし、長々と答案を書く必要もありません。ゆえに、答案を書く際には、過去の記憶を思い出す必要は一切ありませんし、「事実を抜き出さなきゃ!」という強迫観念にとらわれる必要もありません。
ここまでの話を聞いて、あなたにも思い当たることはあったでしょうか。
もし「自分のことだ」と感じたなら
紹介した4つのパターンのうち、どれか1つでも答案を書く前提としているのであれば、すでに沼にはまっている可能性が非常に高いです。
「沼」とは、合格の方向を向いていないまま勉強し続けている状態です。問題をいくら解いて知識を増やしても、どんなに完璧な論証集を作成して覚えたとしても、残念ながら合格は出来ません。合格の方向を向いていない努力は報われません。しかも本人は気づきにくい。そこが最も厄介です。
以上の話を踏まえて、「自分にもあてはまるかも?」という方には、個別の相談を受け付けています。個別相談は、例えば、こんな方に向いています。
・知識不足や、「論点を押さえられているか」に不安を感じている人
・「答案の出来は悪くないはずなのに、なぜか点数が伸びない」と感じている人
・「論点はわかったのだが,〇〇のあてはめが上手くいっていなかった」,「〇〇の事実を抜き出すことが出来なかった」というようなことを気にしている人
・「〇〇の事実は抜き出すことが出来たから、最低でも部分点はもらえるだろう」というような考え方をしている人
・解説を読めば「なるほど」と思えるが、本番で再現できない人
・勉強法は色々試したが、どれもしっくりこなかった人
個別相談では、事前にアンケートにお答えいただき、各人の学習状況や特徴、答案の傾向などを分析して整理したうえで、合格のための戦略や方法論をどう立てるべきかを一緒に考えることを行います。
答案をお持ちの方は、分析の参考資料として見ることもできますが必須ではありません。30分からご利用いただけます。
受験回数や現在の成績は一切関係ありません。実際に法科大学院でゼミを担当していた際には、3年連続短答式試験で不合格となり「沼」にはまっていた方がいましたが、次の年には見事に合格されました。一方で、数点差で不合格となってしまったものの、上記のような考え方を変えることが出来ず、次の年も同じように数点差で不合格となってしまった方もいました。
今、あなたが行っている勉強法や戦略は、あなたに合っておらず、思い切ってガラッと変えたほうが良いかもしれません。
勉強方法で悩んでいたり、勉強しているのに点数がなかなか伸びない方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
今後も、司法試験合格のための戦略・方法論について発信していきます。
以上の話を踏まえて、「自分にもあてはまるかも?」という方には、個別相談を受け付けています。
現在の学習状況や悩みをお聞きして、何を優先すべきかを一緒に整理します。司法試験まで残り60日を切りましたが、方法論や考え方を変えれば、ここからでも合格ラインは超えられます。
👉 個別相談はこちら