今日が本当の誕生日だった。
愛の意味をわかってなかったくせに
初めて
「愛してる」
と言った相手の誕生日。本当の。
小学4年生の頃
私は彼女に一目惚れした。
中島美嘉を素朴で
優しい感じにしたような
そんな顔立ちの少女だった。
どこか憂いを帯びた表情。
優しい雰囲気。
私は手紙を書いた。ラブレターだ。
書きまくった。
返事は来なかった。
7通まで。
8通目、ついに返事が来た。
「友達としてなら、付き合っても」
もっと、柔らかい表現だったが、要約すればそんな感じだった。
それでも、嬉しかった。
何度も読み返した。
その度に、全身に
電流が走るようだった。
小学5年の終わり頃だったと思う。
それから、文通が始まり
共通の友達、男女3名ずつで
誕生日会とか遊んだりした。
いつか友人が私たちの仲をからかった事があって、私は彼を殴った。
初めて人を殴った。
殴りながら、なぜか泣いていた。
後に彼は親友となり、中学時代は、彼女と3人で遊ぶこともよくあった。
彼も彼女の事が好きだったそうだ。
だから、からかってしまったと言っていた。
初めてのデート
初めての… 初めての…
すべてが初々しい経験だった。
しかし、私と彼女は
中学も高校も別になってしまう。
新しいことや辛いことが波のように押し寄せて、すれ違いが増えていった。
今思えば、格好つけずに、彼女に甘えていれば、違った道があったのかもしれない。
高校2年まで付き合って、別れた。
ある日、映画館で、彼女が
私の同級生と居たところを目撃した。
その同級生は彼女の従兄弟だ。
彼女が、その従兄弟とキスをした…という告白をしたことが決定打となった。
その映画は確かヒットした有名な映画だったと思うが、途中で出たせいもあるが、なぜか思い出せない。
30年以上、時は流れて…
母が亡くなり、実家を引き払うことになった。
私は荷物を整理していた。
見覚えのある紙袋から、彼女からの手紙がごっそり出てきた。
最初は微笑ましく読んでいた。
中学あたりから、彼女の寂しさや悲しみが伝わってくる内容に変わってきた。
最後の方は、所々字が滲んでいた。
そこに私の涙が落ちるようになる。
彼女にどれだけ寂しい想いをさせてきたのか。
読み進めるほどに、伝わってくる。
胸が張り裂けそうだった。
嗚咽しながら、読み終えた手紙を一つずつ、別の袋に入れた。
気がつけば朝になっていた。
手紙を読んで、わかったが
彼女の、あの告白は「嘘」だった。
そう書いては
いなかったが
順を追って読むとわかる。
彼女はどんな想いで、あの嘘の告白をし、手紙を書いたのか…
今でも、この日
4月1日になると、胸が苦しくなる。
私は、苦しまねばならない。
もう一度、人を殴るなら
あの頃の自分だ。
中島美嘉の
「一番綺麗な私を」
帰りの車で、カーラジオから
流れてきた。
前が見えなくなって、停車して
慟哭した。
30年以上前の、あの日。
4月1日。
「誕生日、本当は…今日なの」
彼女は…照れながら…
「4月バカって…からかわれるの、イヤだったから」
そういって、恥ずかしそうに
目を伏せた…