遺言書の作成は、大切な財産を確実に引き継ぐための重要な手段です。
近年、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が導入され、注目を集めています。
しかし、この制度にも一長一短があり、公正証書遺言との違いを理解することが大切です。
今回は、自筆証書遺言の法務局保管制度のデメリットと、公正証書遺言との比較について詳しく見ていきましょう。
【自筆証書遺言保管制度のデメリット】
自筆証書遺言を法務局で保管する制度には、いくつかのデメリットがあります。
まず、遺言者本人が法務局に出向く必要があります。
高齢者や体調の優れない方にとっては、これが大きな負担となる可能性があります。
また、自筆証書遺言には厳格な様式ルールがあり、これを守らないと無効になる可能性があります。
例えば、全文を自筆で書く必要があり、パソコンで作成したものは認められません。
さらに、日付や氏名、押印などの記載に不備があると、せっかく作成した遺言書が無効になってしまうリスクがあります。
加えて、法務局での保管は遺言書の存在と形式的な要件を満たしていることを証明するだけで、内容の法的有効性までは保証しません。
つまり、遺言の内容自体に問題がある場合、法務局で保管されていても無効となる可能性があるのです。
自筆証書遺言保管制度についてはこちら↓↓↓
【公正証書遺言との比較】
公正証書遺言と自筆証書遺言には、いくつかの重要な違いがあります。
公正証書遺言は公証人の関与のもとで作成されるため、法的な専門知識に基づいた適切な内容になりやすいという利点があります。
一方、自筆証書遺言は個人で作成するため、法的な問題を含んでしまう可能性が高くなります。証人の必要性も大きな違いです。
公正証書遺言では証人が必要ですが、自筆証書遺言では不要です。
このため、遺言の内容を他人に知られたくない場合は、自筆証書遺言のほうが秘密を保持しやすいと言えます。
専門家の関与度も異なります。公正証書遺言では公証人が全過程に関わるため、法的な問題を事前に回避できる可能性が高くなります。
自筆証書遺言の場合、弁護士などに相談することはできますが、最終的な作成は個人で行うため、専門的なサポートが限られます。
費用面では、一般的に自筆証書遺言のほうが安く済みます。公正証書遺言は公証人への報酬が必要となるため、比較的高額になる傾向があります。
ただし、自筆証書遺言で内容に不備があった場合、後々の訴訟などで多額の費用がかかる可能性もあるため、一概に安いとは言えません。
【自筆証書遺言を選ぶ際の注意点】
自筆証書遺言を選択する場合、いくつか注意すべき点があります。例えば、訂正方法が複雑です。
間違いを修正する場合、修正液などは使用できず、二重線を引いて訂正印を押す必要があります。
これを誤ると、遺言書全体が無効になる可能性があります。また、病気やけがなどで字を書けない状況になった場合、自筆証書遺言の作成が困難になります。
公正証書遺言であれば、このような状況でも対応が可能です。
当事務所では、静岡市浜松市エリアを中心に自筆証書遺言の作成相談、相続に関するお悩み事についての相談を承っております。※全国を対象としています。
遺言書の内容に関するご質問や、相続手続き全般についてお気軽にご相談ください。
【まとめ】
自筆証書遺言の法務局保管制度は、遺言書の紛失や改ざんを防ぐ点で有効ですが、いくつかのデメリットも存在します。
一方、公正証書遺言は専門家のサポートを受けられる反面、費用が高くなる傾向があります。
遺言書の作成方法を選ぶ際は、自身の状況や希望をよく考慮することが大切です。
財産の規模や家族関係の複雑さ、秘密保持の必要性など、個々の事情に応じて最適な方法を選択しましょう。
必要に応じて弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談し、自分に合った遺言書の作成方法を見つけることをおすすめします。