物語シナリオ講座 第四回 主人公の作り込み1 だからあなたは詰まる

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さて。
主人公の彫り込みです。

アマチュアの作品を読むと一番出来ていないのが、主人公の造形です。

これは重要ですね。
魅力的な主人公じゃないとお客さん(読者)がついて来ません。

この、魅力とは何か?なんですが、
綺麗とかカッコいいという事ではありません。
むしろ、ダメな部分があって人間臭い方が、魅力的です。
その方が、読者にもう一人の自分として受け入れられるのです

また、逆境にいた方が観客(読者)にこの後のドラマを予感させます。
ひどい逆境ならひどい逆境なほど良いと思います。
それだけ問題を抱えているという事になりますから。
四面楚歌の状態でどう脱出するか。
それだけで、もうサスペンスが発生します。(恋愛ものなどでも同じです)

もう一つ。物語の格言に「全ての物語は階級闘争だ」という言い方があります。
これはどういう事かと言いますと、
逆境にいる低地位の者が、より上位に上がって行くのが物語の基本的な型だという事です。サクセス物などは、もちろん、この形式ですし「千倍返し」などと言ってる物語ももちろんそうでしょう。復讐物も皆、そうですね。
多くのラブストリーも、ちょっと自分はダメだと思っている主人公の「あこがれ」からはじまります。

また、はじめから上位にいる物が、一度どん底に落とされてからまた這い上がるというのも惹き込まれる物語です。
世界中の神話にある「貴種流離譚」がそうです。日本の神話ではスサノオの物語、源義経の物語、忠臣蔵、かぐや姫などもその一種です。                          また、ヒーロー物に多い形式で、バットマンや、アイアンマン。      ヒーロー物ではないですが、トム・クルーズがやった「バニラ・スカイ」同じく、トム・クルーズの「ザ・エージェント」などが代表的ですね。
アニメでも「コードギアス 反逆のルルシュー」やアニメファンが大好きな
ガンダムのシャアの物語などもこの形式が採用されています。
こう見ると、物語というのは古典的な形式を延々と継承していることがわかります。
逆に、スパイダーマンなどは初めからダメダメな高校生なので共感を持たれます。

いずれにしても、逆境にいる人が上を目指して行く物語は魅力的なのですが、その主人公は何をエネルギーにして上を目指して行くか。

これは主人公のモチベーションという事になります。
また「上」と言ってますがこれは「目的」と言い変える事が出来ます。

主人公のモチベーション目的

これは旅の出発点ゴールの関係にあります。

これを物語の冒頭近くで観客(読者)に示す事で、その主人公のバスツアーは、どこが目的地なのかお客さんに示せるわけです。


スクリーンショット 2023-05-28 11.39.13.png

物語を動かす原動力のイメージを可視化にしてみました。
横軸が物語内の時間です。
縦軸が物語の「ヒートアップ度≒読者(観客)の興奮度」となります。

物語が後半にゆくに連れて、内容も、観客も興奮を高めるおもしろ物語になっていくことを想定しています。

この青いラインで書いた物語のベクトル上にさまざまな駅【事件・出来ごと】が設定されます(というか、作者であるあなたが設定します)

ここでは出発点に主人公のモチベーションがあって、それが物語を動かすエネルギーになって、物語のテンションは上がって行き、目的(エンディング)に到達する、ということです。

普通、目的の場所がわからないツアーに参加する人はあまりいませんよね。
これからバスに乗り込んでくれるお客さんに、目的地を示す事は重要です。

また、主人公は、この目的地が設定されたら、何があってもその目的を達成するために邁進しなければなりません。
途中で行き先が変わるバスに乗りたい人はいないでしょう?
(ちょっとしたホラーとしては面白いですが)
お客(読者)に目的地を示すことは、主人公(作者)とお客さんの契約のようなものです。
こういう理由でここにいくと約束しますから、乗ってくださいますか?という。

これは主人公の「貫通行動」と言って、芝居の世界などでも重要視されます。
主人公はどんな困難があっても、最初の目的地を目指さなくてはいけません。(主にエンタメの話をしています)
どんなに欠点があって未熟でも、意志が強い主人公というのはそれだけで魅力的だし、信頼に足りる人物なのです。
物語の最後には心地良い場所に連れて行ってくれる、と読者は信頼するのです。
これは、最初に書いた「主人公の魅力」という問題に直結します。
意志のない主人公など、ぜんぜん魅力的には思えないでしょう。

しかし、物語の真ん中あたりで、またはクライマックスで、最初に設定された主人公の目的が間違いだったと主人公が気付く、という展開もあります。
これは、そこに大きな失望や絶望、ドラマと成長があり、別な魅力が出てきますが、その話はまたあとでいたします。

逆境(低地位)にいる主人公は何を手に入れれば幸せになれるのか?
それを本当に手に入れる事が出来るのか?
主人公はその目的地にきちんと着けるのか?

お客さんはそれをハラハラしながら見守るので、物語は面白くなるわけです。

良く初心者が物語が詰まるといいますが、一つの大きな理由は主人公の目的地がきちんと具体的に設定されていないせいです。
目的がわからない旅は迷うのが当たり前なのです。

主人公の目的がはっきりしていれば、作者は意地悪にもそのルート上に目的の実現を邪魔するようなトラップ(障害)をあちこちに仕掛ければいいと言う事になります。
読者はハラハラしながら、旅がうまく行くように見守ります。

スクリーンショット 2023-05-28 12.31.05.png


上の図をよく見てください。
主人公が目的地へ到達するベクトル上に、さまざまな障害を配置しました。

これは、主人公の目的を阻害する障害で、アクション物や、スポーツものの場合は、単純な敵(ライバル)の時もあるし、
恋愛ものなら、これも恋のライバル、あるいは家族の反対、距離など物理的な障害。
または、心理的な障害で、一度別れた人とよりを戻すのはつらい、とか、友達の彼氏とは付き合えない、とかそういった目に見えないものもあるでしょう。

主人公の目的のベクトルの上にこれがいくつも現れるわけです。
ピンクで示したのは最大の障害です。
これがクライマックスに来るように設定しましょう。魔物のラスボスを倒す話なら、当然、これがここに来ますし、

私の大好きな「チョコレート」という異人種間の恋愛の映画では、「好きな人が自分の前の夫を処刑にした人物だ」と分かるという心理的な障害でした。
またこの障害が、主人公とは別な価値観のこともあります。
その前の青い障害は、中ボスということになりますね。

これをベクトル上にいくつも配置しましょう。こういうことが物語を構成する、ということです。物語の長さによって障害の数は変わってきます。

前に書いたように、主人公を苦しめれば苦しめるほど、物語は面白くなります。
これは、最近の人気作では、商業的な研究が進みさらに徹底されていますね。
「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」の絶望感を思い出してください。
どうするの、これ。敵が強すぎて絶対勝てないだろう?というような壁を作ったほうが観客(読者)は惹き込まれ、物語は面白くなります。
強い敵を作りすぎると、超えることがほんとに困難で、詰まってしまうこともありますが、作者や、その担当者は読者を楽しませるため、必死にまさに命を削って乗り越える方法を考えていると思います。
ほんとうは、強い敵を作る段階で、それを破る抜け道も同時に考えることが合理的なんですがね。だいたいそうしていると思います。

(余談ですが、時々、敵が強すぎて解決法が見つからず、物語が終わってしまうことがあります。石ノ森章太郎先生の名作・サイボーグ009などがそれです。敵を神さまに設定したばかりに…物語は作者の生存期間にラストを迎えることはありませんでした。ですから、強い敵もほどほどに、という漫画界の教訓になりました。また鬼滅なども…。この先は自粛します)

主人公は、この障害を乗り越えようと、苦しみ、悪戦苦闘します。
乗り越えるイメージを上の図で矢印で示しましたが、これを乗り越えることで、主人公は背伸びし、成長し、さらに物語のテンションは上がります
しかし、そこにまた新たな障害が待っていますので、物語は途切れることはありません。つまり、構成をしっかりしておけば、詰まらない、ということになります。

この時、主人公がこの障害を乗り越える事が出来る、そして読者(観客)が、主人公を応援出来る理由は、モチベーションの「共感性」です。
上の図でもモチベーションを補佐するように黄色の四角で隣に配置してみました。

モチベーションがたいして観客にとって共感性のないものだと、主人公の苦労もどうでもいいことになります。勝手にやってろ、という感じですね。
そこで最初に戻って、主人公の魅力ということも大事な要素になります。

モチベーション共感性は主人公の、ひいては物語全体のエンジンのようなものですから、物語の初期段階で、じっくり描く必要があります。
それによって、読者や観客は、主人公と一体になって困難な旅を超えて行くのです。

主人公の目的
主人公のモチベーション
モチベーションの共感性
主人公の貫通行動
主人公の上昇志向
逆境、敵、壁の存在

書き出す前にこのあたりをもう一度、見直しましょう。


この項目、けっこう深いので次回に続けます。
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