物語シナリオ講座 第一回 自分だけの冒険の旅に出よう

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こんにちは。物書堂と申します。
現役のプロのシナリオライターですが、ここでは業界の裏話なども書いていきたいので名前は伏せさせていただきます。
シナリオを本業に、映像作品の監督や、ディレクター、作詞などもやってます。おいおい、そのことも話していきますね。
結構長い間、やってますのでノウハウなど、広くお伝えできたらいいと思い、ブログをはじめました。

初心者の方にも、シナリオの書き方を知って欲しいので出来るだけわかりやすくシナリオ術を解説して行きたいと思います。

さて。シナリオとは、何か?

物語の展開や登場人物のセリフを書き出したものです。
映画やドラマ、舞台は最初にシナリオが必要です。
アニメもそうですね。

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あまり、身近じゃない、と感じる人もいると思いますが、
面白いシナリオの書き方を身につけると、ゲームや小説を面白く作ることにも応用できます。

それだけではないのです。
シナリオを書くことで、自分の想像力や表現力を高めることができます。
シナリオを書くことで別な人物になって主人公と一緒に旅をするのはとても楽しいことです。
それに視聴者を巻き込めたら最高ですよね。

まず、シナリオを書くためのステップを大まかに掴んでみましょう。

1、まず【アイデア】

   シナリオにもっとも大事なのはこの【アイデア】です。

   面白いアイデアがあれば、シナリオは面白くなります。
   出来れば、このアイデアを聞いただけで、興味を惹かれるようなら、な
   おいいです。
   このアイデアは、身の回りの出来事から発想してもいいですし、
   実際にあった歴史上の事件や、報道ニュース事件から発想してもいいで     
   す。

   面白いことが身の回りにあったら常にメモをしておく習慣をつけましょ
   う。
   アイデアノートのようなものを作ってもいいし、スマフォのアプリのメ
   モにそういうホルダーを作ってもいいでしょう。
   その時は、アイデアがまとまらなくても、時間が立って、Aというアイ  
   デアとBというアイデアが結びついて面白いアイデアになることもあり
   ます。

   具体的な発想法については次回に詳しく書いてみます。

   ただし、アイデアがないからと言って、シナリオが書けないものではあ   
   りません。
   まず、シーンのイメージと登場人物が決まったら、書き出して見る、と   
   いう方法もあります。
   書いているうちにアイデアが生まれてきます。

2、まず書きたいことをA4のワープロ用紙につらつらと書いてみましょう。

   最初は数行でも、かまいませんし、数枚になってもかまいません。
   話がストリーになってなくてもいいのです。
   とにかく文字を打っているうちに、ぼんやりと自分の書きたいことが見
   えてきます。

   そこで主人公を設定してみましょう。
   自分のよく知っていることの方が書きやすいので、自分に似た設定の主  
   人公でもいいですし、空想上の主人公でもいいでしょう。

   ただ、この主人公がどういう人物なのか。

「どういう✗✗(主人公の名前)が誰と出会って、何をして、どうなるの
    か」
   を次第に明確にしていきましょう。

   この一文↑は【物語の鉄則】ですので、よく意識しましょう。
   これが心底、理解出来れば、脚本はもうわかったようなものです。

   特に「どういう✗✗」の「どういう」という部分は重要です。

   主人公のキャラクターが背負うものになり物語の方向を決めるからで
   す。

   たとえば、「若き潜水艦の艦長である✗✗が」となれば、主人公の成長
   の物語になるでしょうし、
  「一度は現場をしりぞいた艦長である✗✗が」となれば、手痛い失敗した
   ことのある男の最後の戦いの物語になるでしょう。

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3、主人公を作る 

    アイデアとともに、最も大事なのは主人公のキャラクターです。
    お客さんが感情移入してくれるのは、生き生きとしたキャラクターで
    すから。
    主人公のキャラクターを作るときは、以下の点に注意してくださ
    い。

   【名前と年齢】
    名前は、キャラクターを代表するものなので、覚えやすくて印象的
    で、そのキャラクターの性格を表すものをよく考えましょう。
    年齢もそのキャラクターのバックボーンに関係するので大事です。
    20代の女性で未婚というのと40代の女性で未婚というのは意味が    
    違いますよね。
    その家族やバックボーンなどを設定する上でも、主人公はどういう名
    前で何歳なのかを検討しましょう。

   【目的や動機や欲求】

    最初に、どんな人物かを考える時に、その人の物語上の主要な
   【目的】を設定する必要があります。

   「海賊王に俺はなる!」

       というのは明確な目的ですね。

   お客さんは、それがどんな物語か。そしてどんな主人公か知ることが   
   出来ます。
   主人公の目的が決まれば物語の方向性も決まり、お客さんはそこに主人
   公が到達出来るのか、ときに応援しながら、ときにハラハラしながら見
   守ることが出来ます。
   その目的を支えるのが【動機】と【欲求】ですね。
   なぜ「海賊王」になりたいのかは、お客さんが感情移入するために重要
   です。
   海賊王の物語では
  「自分が誰よりも強くならないと仲間を助けられない」
   というのが、主人公の動機(モチベーション)でした。

   【動機 (モチベーション)】は物語を動かす車輪のようなものです。
   また主人公の【欲求】も物語を動かす大きな車輪です。
   この両輪が、主人公を主人公たらしめる核のようなものですね。

   主人公が「とても可愛い女の子と付き合いたいと思っている」という【  
   欲求】があれば、物語はその方向に動いていきます。
   「お金を得たい、と思っている」という場合もあるでしょう。
   主人公にとって何が大事なのか。
   これが明確に設定されていないと、物語は途中で迷走し、失速してしま  
   います。

  【性格や特徴や趣味】
  【他のキャラクターとの関係性や役割や立場】
   など、他に大事なことがありますが、これは次回以降に記します。

   登場人物を作ることで、物語に生命力や魅力を与えることができます。

4、主要な【敵(壁)】を作る。

   主人公を作るのと同時に、敵の存在がないと物語は生き生きと動いては
   くれません。
   主人公と同じように【目的】【動機】【欲求】【年齢や名前】を持った
   敵を設定してみましょう。

   この【敵】は主人公の目的の【壁】になる存在で、主人公の行動を阻害
   するものです。

   上に書いた鉄則、

 「どういう✗✗(主人公)が<誰と>出会って何をして、どうなるのか」

   この<誰と>に当たる部分です。
   これは、別に、戦う相手ではなくてもいいのです。
   嫌な上司とか、すれ違い気味の恋人、奥さんがそうなる場合もあるでし
   ょう。
   敵のいない物語は、絶対といってもいいほど面白くなりません。

   逆に、魅力的な敵が設定出来れば物語は半分は出来たようなものなの
   です。

   【敵(壁)】は何人かいてもいいのですが、もっとも主要な【敵】は
    クライマックスに主人公と対立する相手になるでしょう。



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4、物語の構成を考える 

物語の構成とは、物語の始まりから終わりまでの流れです。
これもまたシナリオの大きな要素ですね。


【物語の構成】を考えるときは、以下の点に注意してください。

物語には、【導入】【展開】【クライマックス】【結末】の4つの段階があります。

【導入】 登場人物や舞台や状況などを紹介する

【展開】 登場人物が目的に向かって行動したり、障害にぶつかったりする

【クライマックス】 登場人物が最大の危機や葛藤に直面する

【結末】 登場人物が目的を達成したり失敗したりする 

物語の構成を考えることで、物語に緊張感や感動を与えることができます。

これまでに書いたぼんやりとしたストリーをここに当てはめてみましょう。どう「展開」させて「構成」を作るか。

ここには【主人公が超えるべき壁】や【敵】の存在などが設定される必要があります。
主人公の目的と敵の目的が対立するので【ドラマ(葛藤)】が生まれるのです。
次回以降、くわしく考えていきます。


5、シナリオを書く 

さて。いよいよシナリオです。
シナリオは、撮影や、画作りのための細かい設計図と考えてください。


【シーン】

  シーンとは【場面】のことです。

  書き方としてはまず【柱】を立てます。

  ワードなどでワープロソフトで書くことが多いでしょうが、その場合、
  ○をつけて場面を指定します。
  最後に○の中に数字を入れます(シーンナンバー)が途中でシーンを差し
  込んだりして番号が変わることもあるので最初は○だけでもいいでしょ
  う。場面が通学路だったら

○通学路
  などと書くのが、【柱】です。
  ここに【ト書き】を加えていきます。
  【ト書き】とは【セリフ】以外の情景や、芝居の指定です。
  かつて日本の舞台脚本では、

  「おーい待ってぇ」
    と、ごん兵衛が、花道を慌てた形相で走って来る、

   などという書き方をしました。
   「と、…」という説明書きなので、これを「ト書き」というようになり  
   ました。
   近年の映像作品では、どちらかというと映像から入ることが多いので
   セリフの前にト書きを書くことが多いです。

○通学路

   早朝で、ひっそりとした住宅地。
   一人の女子高生が、道の向こうからやって来る。
   まじめそうなセーラー服の満ちる(16)だ。
   なにか考え事をしているようでうつむき加減で歩いている。
   その後方から走ってくる女子高生・佳奈多(16)。
佳奈多「もう!…待ってよ、もう、満ちる!」
   満ちるは振り返る。すこし着崩した制服姿の佳奈多。
満ちる「あ、おはよう」
佳奈多「さっきから声かけてるのに!」

  このように、場面の情景や、芝居を【ト書き】で指定します。
  シーンは【柱】と【セリフ】と【ト書き】で構成されます。
  【セリフ】は生き生きと、【ト書き】は情景が目に浮かぶように、
  しかもテンポよく簡潔に書くようにしましょう。
  この【シーン】のいくつもの繋がりで「ストリー」の起承転結が表現さ
  れ、【シナリオ】が形づけられることになります。


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まずは、ざっくりとシナリオ制作の過程について書いてみました。
大事なのはとにかく、まず書いてみることです。

シナリオを書くことは難しくありません。自分の好きなテーマやジャンルで、自分だけの物語を作ってみましょう。

シナリオ作りは楽しい冒険です。

第二回目【アイデアの出し方】に続きます。



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