読むメンタルケア vol.20|「何もしていないのに疲れる」日の正しい心の休め方

読むメンタルケア vol.20|「何もしていないのに疲れる」日の正しい心の休め方

記事
コラム
「特別激しい運動をしたわけでもないし、大きなトラブルがあったわけでもない」
「それなのに、家に帰り着いた途端、ソファから立ち上がれないほど体が鉛のように重い」

そんな風に、目に見える成果を出していない自分を責めながら、ぐったりと夜を迎えてしまうことはありませんか?

今回は、カジュアル洋品店「G」でフロアマネージャーを務める利子さん(30代)の日常を通して、「何もしていないのに疲れる」という現象の正体と、その静かな整え方をお伝えします。

1. 利子さんの場合:「ただフロアに立っていただけ」なのに

利子さんは、大型カジュアル洋品店「G」でフロアマネージャーとして働いています。

その日は特に平和な一日でした。セール期間のような怒涛の混雑はなく、クレーム処理に追われたわけでもありません。重い在庫の段ボールを一日中運び続けたわけでもありませんでした。

ただ、フロア全体を見渡しながら売り場を巡回し、スタッフの動きに目を配り、お客様の案内をする。夕方、無事にシフトを終えてタイムカードを押した利子さんは、胸の奥にズッシリとした重みを感じていました。

「今日、私って何か成果を出したのかな……」

帰りの電車で吊り革につかまりながら、利子さんはため息をつきます。自分の手で何かを成し遂げた実感が湧かないのに、首も肩もガチガチに凝り固まり、頭の中はボヤッと曇っている。

「一日中立ち歩いていただけなのに、どうしてこんなに疲れているんだろう。私、体力が落ちたのかな。それともただの怠けなのかな」

2. 脳内で「起動しっぱなしのアプリ」

利子さんの疲労の理由は、体力の低下でも怠けでもありません。彼女の脳内で起きていたのは「スマホのアプリが何十個もバックグラウンドで同時起動している状態」でした。

フロアマネージャーとしての利子さんの脳は、目立たない場所でフル稼働しています。

「あそこの折りたたみが乱れているな(タスク1)」

「新人スタッフのAさん、少し迷っているかな(タスク2)」

「試着室の列が3人を超えたらフォローに入ろう(タスク3)」

「BGMの音量は小さすぎないか(タスク4)」

「夕方のピークに向けて、レジ開けの準備は……(タスク5)」

目に見える作業をしていなくても、利子さんの脳のセンサーは常に全方位へ張り巡らされていました。

脳科学では、このように意識的な作業をしていない間も脳がバックグラウンドで働き続けるネットワークをDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)と呼びます。脳の消費エネルギーの約60〜80%は、このバックグラウンド処理で使われていると言われています。

利子さんは「何もしていなかった」のではなく、「脳の中で無数のアプリを動かし続け、フルマラソンを走り切っていた」のです。

3. パートナー犬・ハルが教えてくれる「バックグラウンドアプリの閉じ方」

わたしのパートナー犬であるハルを見ていると、彼らはアプリを閉じる天才だなと感じます。

散歩中、周囲の音や匂いに耳目を研ぎ澄ませていても、家に入ると「ブルブルッ!」と全身を震わせ、その瞬間にすべてのセンサーをオフにします。そのままストーブの前で無防備に横たわり、スヤスヤと眠りにつきます。

「明日の散歩のコースはどうしよう」とか「さっきすれ違った犬にどう思われたか」なんて、バックグラウンドのアプリを動かし続けることはありません。

人間だけが、終わった過去やまだ来ない未来のタスクを頭の中で立ち上げっぱなしにし、電池を消耗させてしまうのです。

4. 脳のバッテリーを守る1分間の「アプリ終了ワーク」

利子さんのように、目に見えない気遣いや思考で疲弊してしまったときは、立ち上げっぱなしの脳内アプリをそっと閉じるワークが効果的です。

両肩をギュッと耳に寄せて、3秒間キープする

(身体に一度、意図的な緊張を作ります)

「ハァーッ」と息を吐き出しながら、肩をストンと落とす

(身体の力を抜くことで、脳に「安全・終了」の信号を送ります)

手のひらを温めて、自分の後頭部や胸元にそっと当てる

(物理的な温もりを感じることで、意識を頭の中の思考から「体の感覚」へ戻します)

「今日は目に見えないところで、脳が本当にたくさん働いてくれたんだな」

そうやって自分を労う言葉をかけることが、アプリを正常に終了させるスイッチになります。

結び:一人で脳のノイズを消せないときは

利子さんのように、真面目で周囲によく気がつく人ほど、脳のアプリは無意識のうちに増えていってしまいます。

「何もしていないのに疲れる」と感じる日は、あなたが今日一日、目に見えない場所で周囲や仕事に誠実に向き合ってきた証拠です。どうか「何もできなかった」と自分を責めないでくださいね。

それでも頭の中のぐるぐるが止まらず、思考のアプリが閉じられない夜は、いつでもお声がけください。

言葉がまとまっていなくても大丈夫です。10分からの対話で、あなたの絡まった神経と頭の中のノイズを、そっと一緒に解きほぐしていきましょう。




記事が少しでも心に温かく届きましたら、画面下の「ハート(お気に入り)」を押していただけると励みになります。今日もあなたの心が、優しく守られますように。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す