水素水がアスリートのパフォーマンスを向上させる?|論文紹介④

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水素水がアスリートのパフォーマンスを向上させる?

トップアスリートは、日々の厳しいトレーニングによって体を極限まで追い込んでいます。その中で避けて通れないのが、体への大きな負担です。

運動をすると、体の中では「活性酸素」という物質がたくさん作られます。この活性酸素が増えすぎると、細胞を傷つけたり、体の回復を遅らせたりすることが知られています。

そこで、アスリートの体調管理やパフォーマンス向上を助けるものとして、「水素が豊富に含まれる水(水素水)」が注目されています。

「水素水」とは、水の中に分子状の水素(H₂)が溶け込んでいるものです。

水素は、特に体に悪い影響を与える可能性のある活性酸素を選んで打ち消す働きがあると考えられています。

しかも、体の良い働きに必要な活性酸素には影響しないのが特徴です。手軽に飲めることから、アスリートの間でも関心が高まっています。

しかし、これまで水素水に関する研究の多くは、一般的なスポーツ愛好家やアマチュアアスリートを対象にしたものでした。

そこで今回の研究では、さらに高いレベルで競技を行う女性エリートアスリートに焦点を当て、水素水を28日間摂取してもらい、その効果を詳しく調べました。対象となったのは、ハンドボールとスケルトンの国際レベルの女性選手22名です。

研究の結果、いくつかの興味深い点が明らかになりました。まず、水素水は選手たちにとって安全で、特に気になる副作用はなかったとのことです。体の状態については、水素リッチ水を飲んだグループでは、飲まなかったグループと比べて、体脂肪率が減り、筋肉量率が増えるという変化が見られました。これは、アスリートにとって重要な身体組成の改善につながる可能性を示唆しています。また、筋力に関するテストでは、特に運動後の最大トルク(筋肉が発揮できる最大の力)が有意に向上しました。

さらに、激しい運動による筋肉のダメージを示す値(クレアチンキナーゼ、CK)が減少していることも分かりました。

これらの結果は、水素水が筋肉の疲労を和らげ、回復を助ける可能性があることを示しています。一方、体のストレスや回復レベルを評価するアンケートでは、水素水による明確な変化は見られませんでした。研究者たちは、これは対象となったアスリートのもともとのストレスレベルが比較的低かったためかもしれないと考えています。なぜ水素水がこのような効果をもたらすのか、その詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていません。

しかし、体に良い影響を与える特定の活性酸素はそのままにしつつ、過剰な活性酸素を抑えることや、体の抗酸化システムや炎症反応を良い方向に調整している可能性、あるいは体の代謝を助けるホルモンの働きを促している可能性などが考えられています。今回の研究は小規模であり、特定の競技の女性アスリートを対象としているため、全ての選手に同じ効果があるとは限りません。最適な摂取量や期間など、さらに詳しく調べるべき点は多く残っています。それでも、今回の結果は、水素水がエリート女性アスリートの身体組成を改善し、筋力を高め、筋肉のダメージを軽減するなど、パフォーマンス向上や回復をサポートする可能性を秘めていることを示唆しています。

副作用もなく安全に使用できることから、今後のアスリートのコンディショニングに役立つ新しい方法として、さらなる研究の進展が期待されます。

論文タイトル:Hydrogen-Rich Water Decreases Muscle Damage and Improves Power Endurance in Elite Athletes: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial


研究目的


激しい運動は、体内で「活性酸素種」と呼ばれる物質の生産を増やします。活性酸素種は、細胞のエネルギー産生などの重要なプロセスで自然に生成されますが、増えすぎると細胞にダメージを与えたり(これを「酸化ストレス」といいます)、体の回復を遅らせたりする可能性があります。「分子状水素(H₂)」は、この過剰な活性酸素種のうち、体に悪い影響を与える可能性のある特定の種類のものを選び出して無力化すると考えられています。しかも、体の正常な機能に必要な他の活性酸素種には影響を与えないという特徴があります。

「水素リッチ水(HRW)」は、この分子状水素が水に溶け込んだもので、手軽に摂取できる方法として、特にスポーツ界で注目されています。

これまでの研究では、HRWがスポーツ愛好家やアマチュアアスリートに与える影響が調べられてきましたが、世界レベルで競い合う「エリートアスリート」を対象とした研究はまだ少ない状況でした。エリートアスリートは独自の高い要求に直面しているため、この特別な集団でのHRWの効果と安全性を調べることは重要です。この研究では、ハンドボールやスケルトンのような、体に大きな負担がかかる競技を行う女性エリートアスリートに焦点を当て、HRWの摂取が彼女たちの体の状態、パフォーマンス、回復にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としています。

具体的には、体組成(体脂肪や筋肉の割合)、ストレスや回復の度合い、筋力、そして酸化ストレスや炎症、体の抗酸化状態を示す血液中のさまざまな物質の変化などを詳しく調べました。

この研究結果が、エリートアスリートが最高の状態で競技に臨むための新しいサポート方法の開発につながることが期待されています。

方法


この研究は、医学研究において公平性を保つための信頼できる方法である「ランダム化二重盲検プラセボ対照試験」という形式で行われました。

これは、参加者を無作為(ランダム)に2つのグループに分け、どちらのグループに割り当てられたか(本物のHRWを摂るか、見た目や味がそっくりな偽物(プラセボ)を摂るか)を、参加者本人も研究者も知らない状態で行う方法です。研究に参加したのは、国際レベルの女性エリートアスリート22名です。内訳はハンドボール選手16名、スケルトン選手6名で、年齢の中央値は24.5歳でした。研究が始まった時点で、全員がスピードや筋力向上を主目的とした特別なトレーニング期間中にありました。

参加者は以下の2つのグループに分けられました。

HRWグループ(10名):HRWを生成するタブレット(マグネシウムと有機酸が水に反応して水素を発生させるもの)を摂取しました。タブレット1錠を500mLの室温水に溶かし、1日2回飲むように指示され、これにより1日あたり約8mgの水素を摂取しました。

プラセボグループ(12名):HRWタブレットと見た目や味が似ている、効果のある成分を含まないプラセボタブレットを摂取しました。こちらは酸化マグネシウムを含み、同様の発泡を起こすために炭酸水素ナトリウムなどが使用されました。

摂取期間はどちらのグループも28日間でした。

研究期間中には、様々な測定が行われました。

体組成:研究の開始時と終了時に、体脂肪率や筋肉量率などの人体計測指標を測定しました。

ストレスと回復:「回復-ストレス質問票(RESTQ-Sport)」というアンケートを用いて、トレーニングによるストレスや回復の度合いを評価しました。

筋力(バイオメカニカルテスト):特に太ももの後ろ側の筋肉(ハムストリングス)について、運動後の最大トルク(筋肉が発揮できる最大の力)と平均トルクを測定しました。これは、ウォームアップの前後で測定されました.

血液検査:研究開始時、28日間の摂取終了直後、そして摂取終了から1週間後の3つのタイミングで採血を行い、筋肉ダメージを示す「CK(クレアチンキナーゼ)」、炎症に関連する物質(サイトカイン)、体の抗酸化状態を示す物質(ビタミンC, E, β-カロテンなど)など、様々な生化学的マーカーのレベルを分析しました.

得られたデータは、統計学的な手法を用いて、HRWグループとプラセボグループの間、および各グループ内での変化を比較することで分析されました.

結果


この研究を通じて、HRW生成タブレットを摂取したアスリートは、特に副作用を報告することなく、安全に利用できることが確認されました。運動能力が低下するようなケースもありませんでした。

具体的な体の変化については、以下の点が明らかになりました。

体組成:28日間のHRW摂取後、プラセボ群と比較して、HRW群では体脂肪率が統計的に有意に減少しました。また、筋肉量率も統計的に有意に増加しました。これは、アスリートにとって理想的な身体組成への改善を示唆しています.

ストレスと回復:質問票によるストレスや回復レベルの評価では、HRW摂取による統計的に有意な変化は見られませんでした。研究者たちは、これは参加したアスリートのベースラインのストレスレベルが比較的低かったためかもしれないと考えています.

筋力:HRW摂取群では、特に運動によるウォームアップを行った後の最大トルク(筋肉が出せる最大の力)が、摂取前と比較して統計的に有意に(約12.6%)向上しました。これは、筋肉の疲労が軽減されたことを示唆する可能性があります。一方、プラセボ群では筋力に有意な変化は見られませんでした.

生化学的マーカー:HRW摂取群では、筋肉ダメージの指標であるCK(クレアチンキナーゼ)の値が統計的に有意に減少しました。これは、激しい運動による筋肉の損傷が抑えられた可能性を示しています. また、HRW摂取によりビタミンEのレベルが増加し、ビタミンCとβ-カロテンのレベルが減少しました。炎症を抑える働きを持つ「IL-10」という物質も、HRW群で有意に増加しました.

他の多くの酸化ストレスや抗酸化に関わる血液中の物質(グルタチオン、SOD、GPx、GR、MDAなど)には、統計的に有意な変化は観察されませんでした。

これは、対象となったエリートアスリートが通常時から高い抗酸化能力を持っているため、HRWがさらに大きな変化をもたらさなかった可能性があると考察されています.

結論


本研究の結果から、水素リッチ水(HRW)を生成するタブレットは、女性エリートアスリートにとって安全で、特に問題なく使用できることが確認されました。そして、28日間のHRW摂取は、アスリートの身体にいくつかの良い影響(エルゴジェニック効果)をもたらす可能性が示されました。

具体的には、体脂肪率の減少、筋肉量率の増加といった体組成の改善が見られ、運動後の最大トルクの向上という形で筋力パフォーマンスの改善が示唆されました。

さらに、筋肉ダメージの指標であるCKレベルの減少が見られたことから、HRWが筋肉の疲労や損傷を和らげ、回復をサポートする可能性も考えられます。

また、体の抗酸化システムや炎症反応を良い方向に調整している可能性を示唆する生化学的マーカーの変化も観察されました(ビタミンEとIL-10の増加、ビタミンCとβ-カロテン、CKの減少)。HRWがこれらの効果をどのように引き起こすかの詳しい仕組み(作用機序)は、まだ完全には解明されていません。

しかし、体に有害な活性酸素を選んで減らす働きや、体の代謝を助けるホルモン(FGF21など)の働きを促す可能性、体の抗酸化防御システムを活性化させる可能性 などが考えられています。今回の研究は、参加者数や対象となった競技の種類に限りがあるため、全てのアスリートに同じ効果があるとは断定できませんし、最適な摂取量や期間など、さらに調べるべき点は多く残っています。それでも、この研究は、HRWがエリート女性アスリートのパフォーマンス向上や回復をサポートする潜在的な可能性を持っていることを示唆する重要な結果です。安全に使用できる点を考慮すると、今後のアスリートのコンディショニングやメディカルサポートにおいて、HRWが役立つ新しい手段となることが期待され、さらなる大規模な研究の進展が望まれます。

引用論文


Hydrogen-Rich Water Decreases Muscle Damage and Improves Power Endurance in Elite Athletes: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial.Ogannisyan M, Slivin A, LeBaron TW, Tarnava A, Karmazin V, Bazanovich S, Dolgachev V, Vychik A, Strizhkov A, Parastaev S.J Lifestyle Med. 2025 Feb 28;15(1):8-17. doi: 10.15280/jlm.2025.15.1.8.PMID: 40376695
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