腰痛と眠れない夜にさようなら? スマホアプリ「MySleepSolutions」が目指すこと|論文紹介⑤

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②論文を要約した内容(もっと詳しく論文の内容を知りたい方向け)・・・5分

「腰が痛くてよく眠れない…」「眠れないから余計に腰が痛く感じる…」もしあなたがそんな悩みを抱えているなら、ぜひ知ってほしい情報があります。

世界中で多くの人が悩んでいる腰痛。そして、慢性的な体の不調には、しばしば眠りの問題(睡眠障害)が伴います。

特に腰痛と睡眠障害は深い関係があり、実は眠りの質を改善することが、腰痛のつらさを和らげるカギになることもあるのです。

しかし、これまでの健康管理アプリは、運動や食事に焦点を当てたものが多く、睡眠に特化したものはあまりありませんでした。

そこで、腰痛を持つ人たちのために開発されたのが、スマホアプリ「My Back Exercise」に組み込まれた睡眠改善プログラム「MySleepSolutions」です。

このプログラムは、不眠に対する効果が科学的に証明されている「認知行動療法(CBT-I)」という考え方に基づいています。

単なる情報提供ではなく、睡眠に関する正しい知識を学び、良い眠りのための具体的な習慣(睡眠衛生)を身につけたり、リラックスする方法や、眠れないときにどうすれば良いか(刺激制御)といったテクニックを実践できるように作られています。

開発にあたっては、専門家チームが、腰痛を持つ人たちの意見を丁寧に聞きながら進められました。

ユーザーのニーズや使いやすさを最優先にした「ユーザー中心設計」という方法が取られています。MySleepSolutionsは、4週間で構成されるプログラムです。

特徴的なのは、ユーザーが毎週自分の睡眠タイプ(「表現型」と呼ばれます)を選ぶことで、アプリがその人に合ったアドバイスや目標を提案してくれることです。

第1週目にユーザーに提示された表現型の例

たとえば、「腰痛はあるけど、眠りは大丈夫な方」「寝つきは良いけど、夜中に目が覚めてしまう」といった選択肢があり、選んだタイプに応じて最適なヒントが得られます。

さらに、その週に取り組む「目標」を自分で選べるため、無理なく続けやすく、毎日の進捗を記録する機能や、目標達成をサポートするリマインダー通知も用意されています。瞑想や呼吸法を試したい人向けに、音声ガイダンス機能もあります。

プログラムの最初と最後には、睡眠の状態(睡眠効率や不眠の重症度)をチェックする機能もあり、もし改善が見られない場合や、専門的なケアが必要なサインがある場合には、医師や専門家への相談を促すアドバイスも行われます。

このMySleepSolutionsを含むMy Back Exerciseアプリは、すでにアプリストアで公開されています。現在、実際に使ってみての使いやすさや、腰痛や睡眠に対する効果について、詳細な評価(研究試験)が進められている段階です。

腰痛と睡眠の悪循環を断ち切り、 both を改善する可能性を秘めたこの新しいアプリ。今後の研究結果に期待が高まります。


論文タイトル:The design process add development of MySleepSolutions  A sleep module for a lifestyle self-management app for low back pain.


研究目的


世界中で多くの人々が悩んでいる腰痛(LBP)は、高齢化などによりその患者数が増加傾向にあります。

腰痛は身体的、心理的、社会的要因が複雑に絡み合っており、その管理には個々の自己管理能力を高めることが重要だとされています。

また、慢性の体の不調には睡眠の問題(睡眠障害)が伴うことが多く、特に腰痛と睡眠障害の間には深い関係があり、睡眠障害が腰痛のつらさや痛みの感じ方に強く影響することが研究で示唆されています。

しかし、これまでのモバイルヘルス(mHealth:スマートフォンなどのモバイル端末を使った健康管理)アプリは、運動や食事に焦点を当てたものが多く、腰痛を抱える人々のための睡眠に特化したプログラムが不足している状況でした。

この論文の目的は、この不足を解消するために開発された、腰痛を持つ人々のためのmHealth睡眠改善プログラム「MySleepSolutions」の設計プロセスと開発について、詳細かつ透明性を持って記述することです。

これにより、このプログラムがどのような理論に基づき、どのような根拠を持って作られたのかを明確にし、今後の研究開発に役立てることを目指しています。

方法


MySleepSolutionsモジュールは、腰痛患者向けの運動・ライフスタイル自己管理アプリ「My Back Exercise」の一部として開発されました。

開発プロセスでは、mHealthアプリ開発のための特定のフレームワーク(Aji et al.が提唱したフレームワークなど)を採用し、以下の4つの段階を経て進められました。

コンセプト開発

・治療アプローチ、設計アプローチ、アプリの機能・性能の検討

・実装に関する評価指標、セキュリティ、規制の検討

・エンドユーザーにおける臨床的な成果の評価

特に、開発チームは「ユーザー中心設計」という手法を重視しました。これは、アプリを利用する人々の意見やニーズ、価値観を最優先する設計方法で、腰痛を持つ人々と臨床家の両方の意見を開発の初期段階から取り入れました。

また、文献レビューを行い、腰痛患者や睡眠障害を持つ人々がmHealthアプリに求める機能やコンテンツ(例:音声機能、進捗表示、教育コンテンツ、個別化など)を洗い出しました。

開発チームは、経験豊富な臨床医や研究者、睡眠専門家、アプリ開発者を含む学際的なメンバーで構成され、約1年半にわたり、コンテンツや機能を継続的に見直し、改良する「イテレーション(反復)」プロセスを通じて開発が進められました。

MySleepSolutionsのコンテンツは、不眠に対する効果が科学的に証明されている「認知行動療法(CBT-I)」の考え方に基づいており、特に以下の要素が組み込まれています。

・睡眠教育(睡眠に関する正しい知識を学ぶ)

・睡眠衛生(良い眠りのための生活習慣を身につける)

・リラクゼーション訓練(リラックスする方法を学ぶ)

・刺激制御(眠れないときにベッドや寝室と覚醒を結びつけないための技法)

・睡眠制限(ベッドにいる時間を調整する技法、ただしこれはオプションとして提供)

プログラムは4週間で構成されています。特徴的なのは、ユーザーが毎週、自身の睡眠パターンや状態に最も近いもの(「フェノタイプ」と呼ばれます)を選択することで、その選択に基づいてアプリが個別化されたアドバイスや目標を提案する点です。

ユーザーは提示された複数のヒントの中から、その週に最も取り組みやすいものを選び、それが毎日の目標となります。目標達成をサポートするために、毎日の進捗記録機能やリマインダー通知も用意されています。

リラクゼーションなどの音声ガイダンス機能もあります。また、プログラムの開始前と終了時には、ユーザーの睡眠の状態を評価するために、睡眠効率(ベッドにいる時間のうち、実際に眠れている時間の割合)と不眠重症度(不眠の程度を測る指標)を測定する機能が組み込まれています。

ユーザーの負担を考慮し、これらの評価は必要最低限に抑えられています。倫理的な配慮として、開発前に倫理委員会の承認を得ており、先行研究や進行中の研究の参加者からは同意を得ています。

My Back Exerciseアプリ(MySleepSolutionsを含む)は既に公開されており、現在、アプリの使いやすさ(ユーザビリティ)、受け入れやすさ(アクセプタビリティ)、継続性(アドヒアランス)、利用への積極性(エンゲージメント)についての詳細な評価、および実際の腰痛や睡眠に対する効果を検証するためのランダム化比較試験(RCT)が進行中です。

これらの結果はこの論文では報告されていません。

結果


MySleepSolutionsは、mHealthアプリ開発のためのフレームワークに沿って設計・開発されました。開発プロセスは、腰痛患者のニーズや既存の研究に基づき、以下の点を重視しました。

ユーザーエクスペリエンス(使いやすさ): 分かりやすく関連性の高いコンテンツを提供すること、複雑さと単純さのバランスをとること。

個別化: ユーザーの特定の状態(フェノタイプ)に合わせてコンテンツを調整すること。

評価に基づく管理: ユーザーの睡眠状態を評価し、その結果に基づいてアドバイスを提供すること。

アプリのコンテンツは、CBT-Iの主要な要素(睡眠教育、睡眠衛生、リラクゼーション、刺激制御)を4週間に分けて学ぶ形式で提供されます。

ユーザーは毎週提示される複数のフェノタイプから自分に最も近いものを選択し、それに応じた睡眠に関する教育的なヒントを受け取ります。

さらに、複数の具体的な睡眠改善のヒントの中から、その週に取り組むものを自分で選択します。これにより、プログラムがよりユーザーの状況に合い、継続しやすくなるように設計されています。

コンテンツには、行動変容を促すための様々なテクニックが組み込まれています。

例えば、腰痛と睡眠の関係について学ぶことで知識を増やしたり、フェノタイプ選択を通じて自分の状態を認識したり、毎日の目標設定や進捗記録によって習慣形成を促したり、アバターや進捗バーによってアプリ利用への積極性を高めたりする機能があります。

また、睡眠効率が低いユーザーに対しては、希望に応じて睡眠制限に関する具体的なヒントと目標が提示される仕組みも含まれています。

ただし、睡眠制限が運動に与える影響を考慮し、比較的穏やかな基準(睡眠効率80%未満)で推奨されるように設定されています。

ユーザーは、プログラムの最初と最後に睡眠効率と不眠重症度(ISI)を測定することで、自身の睡眠状態の変化を確認できます。

評価結果に基づき、専門家への相談が必要なサインが見られる場合には、アプリが相談を促すアドバイスを提供します。

アプリには、ユーザー体験を向上させるための機能も多数盛り込まれています。アバターがプログラムを案内し、リラクゼーションなどの音声ガイドが提供されます。

ヒントや目標は短く読みやすいように設計されており、リマインダー通知は適切なタイミングで送られるように設定されています。プライバシー保護のため、プライバシーポリシーも公開されています。

この論文では、これらの設計と開発のプロセスについて詳細に記述することで、アプリの理論的根拠と証拠に基づくコンテンツ開発を明確に示しています。

結論


この研究は、慢性の腰痛を持つ人々のための、ライフスタイル自己管理アプリに組み込まれた4週間の睡眠モジュール「MySleepSolutions」の設計と開発プロセスについて、詳細で透明性のある記述を提供しました。

MySleepSolutionsは、腰痛と関連する睡眠障害という、これまでmHealthアプリではあまり焦点が当てられてこなかった分野に対処しようとするものです。

不眠に対する第一選択治療である認知行動療法(CBT-I)に基づき、ユーザー中心設計や学際的なチームによる開発プロセスを経て作成されました。

ユーザーの多様な睡眠パターンに対応するためのフェノタイプ選択、個別化された目標設定、具体的な行動変容技法、そして定期的な自己評価機能など、ユーザーが無理なく継続的に睡眠を改善するための工夫が盛り込まれています。

現在進行中の、アプリの使いやすさや、実際の腰痛や睡眠への効果を検証する評価試験(ユーザビリティ試験やRCT)の結果が待たれる段階ですが、もし効果が確認されれば、このアプリは腰痛と睡眠障害の悪循環に悩む患者さんの新しい管理方法として非常に有効になる可能性を秘めています。

この論文で示された詳細な開発プロセスは、将来、同様のmHealthアプリを開発しようとする研究者や開発者にとって、重要な参考情報となるでしょう。

特に、複数の健康行動を同時に管理する多要素介入としてのmHealthアプリの研究において、このモジュールは注目すべき事例であると考えられます。

引用論文

The design process and development of MySleepSolutions - A sleep module for a lifestyle self-management app for low back pain. Roberts K, Beckenkamp P, Comachio J, Castrillon CM, Silveira AMC, Ho E, Comis J, Jensen C, Gordon C, Ferreira P. Health Informatics J. 2025 Apr-Jun;31(2):14604582251340548. doi: 10.1177/14604582251340548. Epub 2025 May 17. PMID: 40380945
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