安心って、静かなものなんだ

記事
コラム
横断歩道を渡り終えると、
夕方のざわめきが、少し遠のいた。

信号の音。
車の走り去る気配。
全部が、二人の後ろに流れていく。

凪は、歩きながら思う。
——安心って、静かなものなんだ。

何かが起きたわけじゃない。
約束をしたわけでもない。

でも、心の中にあった小さな棘が、
いつの間にか抜けていた。

「今日さ」

悠真が、前を向いたまま言う。

「無理しなくていいから」

それだけ。
説明も、理由もない。

でも凪にはわかった。
さっきの「怖かった」が、
ちゃんと届いていたこと。

「……うん」

その返事は、
少しだけ柔らかかった。

並んだ足取り。
同じ速さ。
同じ影。

触れなくても、
迷子じゃない。

凪は気づく。

この関係は、
大きな言葉で守られているわけじゃない。

小さな気遣いと、
黙って隣にいる選択で、
静かに続いている。

夕方の光は、
二人の影を、さらに長く伸ばした。

それは、
離れていく影じゃない。

これから先も、
同じ方向に進む影だった。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら