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安心って、静かなものなんだ

横断歩道を渡り終えると、夕方のざわめきが、少し遠のいた。信号の音。車の走り去る気配。全部が、二人の後ろに流れていく。凪は、歩きながら思う。——安心って、静かなものなんだ。何かが起きたわけじゃない。約束をしたわけでもない。でも、心の中にあった小さな棘が、いつの間にか抜けていた。「今日さ」悠真が、前を向いたまま言う。「無理しなくていいから」それだけ。説明も、理由もない。でも凪にはわかった。さっきの「怖かった」が、ちゃんと届いていたこと。「……うん」その返事は、少しだけ柔らかかった。並んだ足取り。同じ速さ。同じ影。触れなくても、迷子じゃない。凪は気づく。この関係は、大きな言葉で守られているわけじゃない。小さな気遣いと、黙って隣にいる選択で、静かに続いている。夕方の光は、二人の影を、さらに長く伸ばした。それは、離れていく影じゃない。これから先も、同じ方向に進む影だった。
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昨日と同じはずなのに、少しだけ、目の奥が違う

街灯の下を通り過ぎるたび、影が少し伸びて、また元に戻る。凪は歩きながら、スマートフォンを握った指先に、まだ残っている温度を感じていた。——見なかった。——返さなかった。それは、逃げじゃない。今は、そう言い切れる。立ち止まって、小さく息を吐く。静かな住宅街。誰かの家の窓に、明かりが灯っている。当たり前の夜が、当たり前に続いている。凪は、もう一度だけ空を見上げる。雲の切れ間に、星がひとつ。——明日、会う。それだけで、胸の奥が、少しだけ引き締まった。今日の夜に、無理に言葉を足さなくてよかった。そう思える自分が、ほんの少し、頼もしい。スマートフォンをバッグにしまい、歩き出す。“待ってる”と言ったのは、相手を縛るためじゃない。自分が、次の時間を選ぶためだった。玄関の前で立ち止まり、凪は深呼吸をひとつ。夜は、ここで終わる。でも、物語は終わらない。静かに、でも確かに、次の朝へとつながっている。凪はドアを開けて、いつもより少しだけ、やわらかな気持ちで、家に入った。布団に入って、電気を消しても、すぐには眠れなかった。凪は天井を見つめながら、呼吸のリズムを整える。スマートフォンは、バッグの中に入れたまま。取り出さない、と決めた。——今日は、ここまで。それが、自分を大事にする選択だった気がする。目を閉じると、カフェの窓際の席が浮かぶ。湯気。夕方の光。向かいに座る、悠真の横顔。言葉は少なかった。でも、足りなかったわけじゃない。凪は、「また来たい」と言えた自分を思い出す。あの一言で、時間はちゃんと前に進んだ。カーテンの隙間から、夜の街灯の光が差し込んでいる。その明かりが、少しずつ遠のいていく感覚。やがて
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