凪が立つ場所を、俺が奪うなら、それは、守ってるって言わない

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コラム
放課後の廊下は、妙に長く感じた。

悠真は、先生の後ろを歩きながら、
自分の足音だけが響いている気がしていた。

——やりすぎたのか?

教室で立ち上がった瞬間のことを、
頭の中で何度もなぞる。

凪を守った。
ただ、それだけのつもりだった。

でも。

「正義」も「正論」も、
学校という場所では、
必ずしも歓迎されるものじゃない。

職員室の前で、立ち止まる。

「三條くんからも話は聞いた」

先生の声は、淡々としている。

「君が強く出たことで、
 クラスの空気が一気に固まった」
「結果的に、
 凪さんを孤立させる形になった可能性もある」

悠真は、言葉を失う。

——そんなつもりは、なかった。

「守ることと、前に出ることは違う」
「それを、覚えておいてほしい」

説教ではない。
注意でもない。

ただ、
責任を置いていく言い方。

「今日は、これでいい」
「戻りなさい」

廊下に出た瞬間、
悠真は大きく息を吐いた。

胸の奥が、重い。

(俺は……)

凪を見たとき、
考える前に体が動いた。

でも。

その行動が、
凪の立つ場所を、
さらに狭くしたのだとしたら。

——守ったつもりで、奪っていた?

教室に戻ると、
すでに人影はまばらだった。

窓際の席に、凪がいる。

悠真は、少し迷ってから近づく。

「……大丈夫か」

凪は、顔を上げる。

昨日より、
ほんの少しだけ、目が違った。

「うん」

即答じゃない。
でも、逃げていない。

「今日、話してたね」

凪は、小さく笑う。

「怖かった」
「でも……黙るよりは、よかった」

悠真は、胸が詰まる。

「俺さ」

言葉を選ぶ。

「守ったつもりだった」
「でも……それで、
 余計なことになったかもしれない」

凪は、少し驚いたように目を瞬かせる。

「悠真が、悪いわけじゃない」

「でも」

悠真は続ける。

「凪が立つ場所を、俺が奪うなら」
「それは、守ってるって言わない」

沈黙。

夕方の光が、二人の間に落ちる。

凪は、ゆっくりと口を開く。

「……昨日までの私なら」
「たぶん、全部任せてた」

悠真は、息を止める。

「でもね」

凪は、真っ直ぐ見る。

「今日は、違う」

その一言で、
悠真の胸の奥が、ほどける。

「一人で立つのは、まだ怖い」
「でも……一人にさせないでほしい」

それは、
依存でも、拒絶でもなかった。

並んで立つ、という選択。

悠真は、静かにうなずく。

「……それなら」
「俺も、ちゃんと後ろに立つ」

前に出すぎない。
引きすぎない。

その距離を、
二人で探していくしかない。

教室の外、
誰かの笑い声が聞こえる。

三條輝が、
どこかでこの空気を見ている気がして、
悠真は無意識に拳を握った。

——これは、まだ終わらない。

でも。

凪は、もう一人じゃない。

そして悠真も、
“守るだけの役”を降り始めていた。

物語は、
次の静かな衝突へ向かっていく。
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