自分で創る自分の車 No.34

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ブレーキを知ろう 1

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■ブレーキとは、どこにありますか?

自動車の4つの車輪にはブレーキ(制動装置)が取り付けられています。
ブレーキのローターやドラムが車輪と一緒に回転し、摩擦の力で止めているのです。
自動車を減速・停止させる力を "制動力 "といいます。

ドライバーがブレーキペダルを踏むと、その力はブレーキブースター/マスターバック(サーボシステム)で増幅され、マスターシリンダーで油圧(オイルプレッシャー)に変えられます。

その圧力は、ブレーキオイル(ブレーキ液)の入ったチューブを通って、車輪のブレーキに届きます。
増幅され送り出される圧力は、ドライバーの踏み込む力の約30倍。
つまり、ブレーキペダルを踏むドライバーの足の力(約15kg)が、約450kgの制動力に増幅されるのです。


■ブレーキの性能とは?

自動車の基本的な運動要素は、"進む、止まる、曲がる "の3つです。
このうち、安全性に関わる最も重要なものが「止まる」ことです。
この "止まる "という機能を担っているのが「ブレーキ」です。
ブレーキは、走行中の自動車を「減速・停止」させます。
また、駐車している自動車が動かないようにする機能(パーキングブレーキ)もあります。

このように、「ブレーキ」は自動車の安全に関わる最も重要な部品のひとつであり、安全・安心を実現するために欠かせないものなのです。


■摩擦の力で自動車を止める

ブレーキは、自動車の運動エネルギーを熱エネルギーに変えて大気中に放出することで、走行中の自動車を減速・停止させます。

運動エネルギーを熱エネルギーに変えるのは、摩擦の力です。

摩擦とは、動いている2つの物体が接触するときに発生する抵抗力のことです。

時速100kmでブレーキを踏むと、2リットルの氷水(0℃)が、3秒で熱湯(100℃)になるほどの熱量が発生します。


■ディスクブレーキとドラムブレーキ

自動車には、運転が楽しいスポーツカー、機動性に優れたコンパクトカー、大型のSUV(Sports Utility Vehicle)、大型のトラックなど、さまざまな種類があります。
これらの自動車には、それぞれの性格や用途に応じて、ディスクブレーキとドラムブレーキが装備されています。

ディスクブレーキは、ブレーキローターをブレーキパッドと呼ばれる摩擦材で挟み込んで自動車を止めます。

ドラムブレーキは、車輪と一緒に回転するブレーキドラムを備えています。
それぞれのドラムにはブレーキライニングがあり、内側からドラムに押し付けて車輪を止めます。

ディスクブレーキとドラムブレーキには、それぞれ長所と特徴があります。

自動車に使用されているブレーキの種類には、さまざまな組み合わせがあります。
四輪すべてにディスクブレーキを採用しているものもあれば、一輪ずつドラムブレーキを採用しているものもあります。
また、前輪がディスク、後輪がドラムというように、両方のタイプを使用している自動車も珍しくありません。


■ブレーキに求められる性能

ブレーキに求められる基本的な性能は、どんな状況下でも十分な制動力が得られることと、安定した制動力が得られることの2点です。

基本的な要求に加えて、繰り返しの使用に耐える耐久性、十分な強度、使用環境に適した最適な性能など、信頼性の高い面が求められます。
そして、ブレーキには制動性能だけでなく、質的な魅力も高い水準で求められます。
安心感のあるペダルフィール、低騒音・低振動、美しいデザインなどへの要求はますます強くなっています。
さらに、低コストであることも重要な要件です。

そのためには、燃費に影響を与えるブレーキ部品の抵抗※1や、重量を最小限に抑える必要があります。
その際、長寿命の摩擦材を使用することもコスト削減には重要です。
また、各メーカーの立場からは、生産性、サービス性、生産コストの低さも重要です。

同時に、ブレーキダスト※2の低減など、環境への影響も非常に重要です。
各メーカーでは、これらの要求を満たすために、様々なテストや開発を常に繰り返しています。


※1 抵抗:ディスクブレーキは構造上、ブレーキをかけていない状態でもパッドとローターがわずかに接触しています。
この擦れが車輪の回転時に抵抗となり、燃費に影響を与えます。
この現象を「引きずり」と呼びます。

※2 ブレーキダスト:ブレーキローターとブレーキパッド、またはブレーキドラムとブレーキライニングが擦れることで発生する粉塵のこと。
摩擦材であるパッドやライニングが削られ、粉状のダストが発生する。


■ブレーキの重さ - 重いブレーキ?

乗用車をはじめ、貨物車両、鉄道車両、フォークリフトやクレーンなどの産業機械用のブレーキなどがあります。

ブレーキに求められる性能は、その用途によって多岐にわたります。
要求される性能やコストに応じて、素材やサイズ、重量も変わってきます。

一般的な乗用車の前輪に使われているディスクブレーキは鋳鉄製で、重さは6〜7キログラム程度です。
一方、より速い車や重い車を止めるためには、より大きく、より重いブレーキが必要になります。

最も重いブレーキは、建設現場で使用される大型のダンプトラック用です。
車輪の直径が3メートルを超える大型のダンプトラックには、1個120㎏以上のブレーキが使われています。

二輪車のブレーキは、平均的な二輪車で1個約600gと比較的軽量です。
つまり、重量のあるダンプトラックのブレーキは、二輪車のブレーキの約200倍の重さがあるのです。
このダンプトラックのような重量級の車両を、安全かつ安定して停止させるだけの制動力を実現するためには、このような重いブレーキが必要なのです。

しかし、単にブレーキを重くして制動力を上げればいいというものではありません。

燃費向上や環境負荷低減のためには、軽量化が重要な課題となっています。
ブレーキの開発・製造においては、必要な剛性を確保しながら軽量化を図る技術が欠かせません。

特にモータースポーツ用の車両では、その傾向が顕著です。
驚異的なスピードにさらされるブレーキですが、同時に部品の軽量化・コンパクト化も求められます。


■快適な乗り心地を実現する、ブレーキ音と振動を抑える技術

自動車の快適な乗り心地を損なう要因に「音」と「振動」があります。
それは、ドライバーがブレーキを踏んだときに時折聞こえたり、感じたりする「鳴き」や「振動」です。

解りやすい事例として、水の入ったグラスの縁を、濡れた指でなぞったとします。
グラスが共振(共鳴)して音(鳴き声)が発生します。
グラスを指でなぞることによる摩擦で振動が発生し、それが水の入ったグラスと共鳴することで、音が発生する原理と同じです。

パッドとローターの摩擦で発生した振動がブレーキキャリパーに伝わり、ブレーキシステム全体が共振して鳴き音が発生するのです。

鳴き音や振動を抑制するためには、共振する部品の材質や形状、走行環境、走行速度、ブレーキ温度など、さまざまな要素を考慮する必要があります。


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