もう連絡しない、前を向くんだって決めて、思い切ってスマホから彼の連絡先を「削除」した。
それなのに、私の脳はあの人の電話番号やLINEのIDを、まるで昨日のことのように完全に記憶している。
スマホの画面から文字を消せば、心の中からも消えてくれると思ったのに、物理的に削除したことなんて全く意味をなさなくて、一人で部屋にいると胸がギュッと苦しくなりますよね。
気がつくと指が勝手に動いて、ダイヤル画面であの数字をなぞってしまったり、検索窓にあのIDを打ち込みそうになったりする。
そんな瞬間、どうして私の脳はこんなに記憶力が良いんだろうって、自分の頭の良さを呪いたくなってしまうこともあるかもしれません。
忘れさせてくれない自分の体を責めたくなって、どうしようもない自己嫌悪に陥ってしまうそのお気持ち、本当に痛いほどよく分かります。
心理カウンセラーとして、僕はこう考えています。あなたが今、彼の連絡先をこれほどまでに鮮明に覚えているのは、あなたの脳がバグっているわけでも、あなたが執着心が強くてダメな人間だからでもありません。
繊細な気質を持つ方は、日々の出来事やそのときに入ってきた情報を、人一倍深く、そして丁寧に処理する心の仕組みを持っています。
大好きな人と過ごした時間、一生懸命に紡いできた言葉、何度も何度も繰り返したやり取りの一つひとつが、あなたの心にとても深い足跡として残っているんですよね。
あなたにとってあの人は、それだけ自分の全エネルギーを注いで、心から大切に想った存在だったということです。
彼の連絡先を記憶しているその「記憶力の良さ」は、あなたがそれだけ誰かを深く、真剣に愛することができる、とっても温かくて素敵な心の持ち主である証拠なんですよ。
だから、覚えてしまっている自分を、どうかこれ以上責めないであげてくださいね。
連絡先を消したのに覚えていて、また連絡したくなってしまう自分を「意志が弱い」なんて思う必要は一切ありません。
無理に忘れようとすればするほど、脳は「忘れてはいけない大切な情報なんだ」と勘違いして、ますますその記憶を強く握りしめてしまうことがあります。
指が勝手にダイヤルをなぞりそうになったときは、「あぁ、私はそれだけあの人のことが大好きだったんだな」「それだけ一生懸命に恋をしていたんだな」って、まずは自分の健気な心を受け止めてあげてください。
今はまだ、スマホの画面は真っ白になっても、心の中の引き出しが整理しきれていないだけなんです。
時間がかかるのは当然ですし、その記憶力が少しずつ優しさに変わっていく日が、ゆっくりと、でも確実にやってきます。
あなたのその深い愛と優しさが、いつかあなた自身の心を優しく包み込んでくれることを、僕は心から願っています。