夕方5時に起きる子を、母は「怠け」と呼ぶのをやめた

夕方5時に起きる子を、母は「怠け」と呼ぶのをやめた

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コラム

―昼夜逆転の部屋で、子どもは何をしていたのか―

午後5時。

外では小学生たちが下校している。

ランドセルの音。

友だち同士の笑い声。

夕飯の支度をする家々の匂い。

その頃、彼はようやく起きる。

高校1年の冬から、彼の生活は昼夜逆転した。

寝るのは朝方。

起きるのは夕方。

食事は一日一回か二回。

風呂に入るのも不定期。

部屋にはペットボトルが並び、カーテンは閉まったままだった。

母親は、最初それがどうしても許せなかった。

「昼まで寝るならまだしも、夕方まで寝るなんて」

「このまま社会に出られなくなる」

「生活リズムだけでも戻さなきゃ」

そう思い、何度も声をかけた。

「朝だよ」

「起きなさい」

「夜はスマホをやめなさい」

しかし、声をかけるほど、彼は不機嫌になった。

ドアを閉める音が強くなった。

返事がなくなった。

そして母親は、ある日、支援者に言われた。

「今は、寝ていることで何とか自分を保っているのかもしれません」

その言葉が、母親の中に残った。

怠けているのではなく、保っている。

逃げているのではなく、崩れないようにしている。

母親は、その日から朝に起こすのをやめた。

代わりに、夕方起きてきた息子に聞くようにした。

「何か食べる?」

「味噌汁あるよ」

「お風呂、入りたくなったら沸かすね」

最初、息子はほとんど答えなかった。

でも、数週間たったある日、冷蔵庫を開けながら言った。

「昨日の味噌汁、まだある?」

母親は、できるだけ普通に答えた。

「あるよ」

それから少しずつ、息子は夕方にリビングへ来るようになった。

テレビを見ながら、ぽつりと学校の話をした。

「別に嫌いなやつがいたわけじゃない」

「でも、教室にいると息が詰まった」

「朝になると、体が鉛みたいだった」

母親は、その言葉を聞いて初めて分かった。

息子は、朝が嫌いだったのではない。

学校へ向かう朝が怖かったのだ。

夜更かしが好きだったのではない。

朝を迎えるのが怖くて、夜に逃げていたのだ。

もちろん、昼夜逆転をずっと放っておけばいいわけではない。

体調を崩すこともある。

孤立が深まることもある。

必要なら専門家の支えも必要になる。

けれど、いきなり正しい生活に戻そうとすると、子どもはさらに追い詰められることがある。

私は、不登校の子の生活リズムを見るとき、「何時に起きたか」だけでなく、「何を守るためにその生活になっているのか」を見たいと思う。

夕方5時に起きる子にも、その子なりの理由がある。

まずは責める前に、見ること。

そして、起きてきたその一瞬を、つながり直す入口にすること。

回復は、朝7時に起きることから始まるとは限らない。

夕方の味噌汁から始まることもある。
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