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コラム
「学校へ行かせない」と決めることが、支援の始まりになることもある
記事
コラム
育児・不登校・海外子女相談専門 奥村直之
2026/07/03 15:51
不登校の子どもに対して、親はどうしても迷います。
今日は学校に行かせた方がいいのか。
休ませた方がいいのか。
少しだけでも行かせるべきなのか。
保健室登校ならできるのか。
欠席が増えたらどうなるのか。
勉強は遅れないのか。
この迷いは、親として当然です。
学校は大切な場所です。
行けるなら行ってほしい。
友だちと会ってほしい。
勉強してほしい。
普通の生活に戻ってほしい。
そう願うのは自然なことです。
けれど、不登校の子どもが明らかに限界を迎えているとき、親が「無理に学校へ行かせない」と覚悟を決めることが、結果的に支援をしやすくすることがあります。
なぜなら、毎朝の「行くか、行かないか」の判断そのものが、子どもにも親にも大きな負担になるからです。
朝になる。
子どもの顔色を見る。
体調を聞く。
行けそうか探る。
子どもは不安になる。
親も焦る。
学校の時間が迫る。
空気が張りつめる。
そして、結局行けない。
この繰り返しは、親子の心をすり減らします。
子どもにとっては、毎朝「自分は今日もできなかった」と確認する時間になります。
親にとっては、毎朝「今日も仕事に行けないかもしれない」と追い詰められる時間になります。
こうした日々が続くと、子どもの体調はさらに悪化し、親の心も壊れていきます。
だから、ある段階では「今は学校へ行かせることを目標にしない」と決めることが必要です。
これは、学校を否定することではありません。
一生行かせないと決めることでもありません。
今は回復を優先する、という判断です。
この覚悟が決まると、家庭の空気が変わることがあります。
朝の緊張が少し減る。
子どもが「今日も行けなかった」と自分を責める時間が減る。
親も、毎朝の判断に振り回されなくなる。
その分、生活リズム、食事、睡眠、安心できる会話、家庭内の安定に目を向けられるようになります。
もちろん、小学校低学年の場合は、親が仕事をどうするかという大きな問題があります。
家で一人にできない。
祖父母の協力が必要になる。
介護休暇や看護休暇、テレワークを検討する必要がある。
フリースクールや居場所を探す必要がある。
現実的な調整は簡単ではありません。
けれど、親がいつまでも「明日こそ行けるかもしれない」と毎朝揺れ続けると、支援の体制も整えにくくなります。
逆に、「今は無理に通わせない」と決めることで、祖父母に頼む、職場に相談する、外部支援を探す、学校と今後の方針を話し合うなど、具体的な動きが取りやすくなります。
中学年以降であれば、フリースクールや教育支援センター、自宅学習、オンライン学習などの選択肢も少しずつ現実的になります。
大切なのは、「行かせない」と決めることが、放置ではないということです。
むしろ、無理に通わせることをやめることで、子どもへの支援が安定することがあります。
親の覚悟が決まると、子どもは少し安心します。
「今日は行くの?」
「なんで行けないの?」
「明日は行ける?」
そう聞かれ続ける生活から解放されるからです。
安心が生まれると、子どもの体調が少しずつ戻ることがあります。
食欲が戻る。
眠れるようになる。
表情がやわらぐ。
家族との会話が増える。
その土台ができてから、次の居場所や学び方を考えればいいのです。
私は、不登校対応で大切なのは、学校へ戻すことを急ぐことではなく、まず子どもの心身を守ることだと思っています。
学校は大切です。
でも、子どもの命と心の方がもっと大切です。
「今は行かせない」と決めることは、あきらめではありません。
子どもを守るための、積極的な選択です。
そこから初めて、本当の支援が始まることもあるのです。
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