『正しさの檻』第十三章 変わりゆく世界の中で
春の気配が、まだ硬い空気の中にかすかに漂っていた。大学生活の終わりを目前に控え、MARIはふと、自分の生活の乱れに気づいた。夜更かし、酒、無意味なSNSのやりとり。気づけば何もかもが、虚しかった。周囲の天才たちは次のステージへと進み始めていた。そして、あの人——彼の周りには、いつの間にか新たな“信者”たちが集まり、まるで軍隊のようにひとつの方向へと進んでいた。焦燥。劣等感。置いて行かれる感覚。「このままじゃダメだ」そう心に決め、MARIは入社前の研修に全てを懸けた。禁酒、規則正しい生活、必死のノート作成。自分を変えたい。認められたい。その一心だった。だが、研修初日、会場に並ぶ三百人の同期を見て、彼女の決意は揺らいだ。優秀な学生ばかり。中には、AYUMIを思わせる気品と慈愛を備えた女性たちもいた。「あの人が、彼女たちを選んだんだ」声をかけると、その印象は間違っていなかった。けれど、MARIが惹かれていったのは、どこか自分に似た、背伸びしてイキってる連中だった。特に男性たちは、彼女に近づこうとした。彼女自身も、それを拒みきれなかった。またしても、勘違いが始まっていた。相談という名の再会「会いたい…」そんな衝動に駆られたMARIは、「相談」という建前で、あの人に連絡を取った。 ——どうした?素っ気ない返事に、どこか安心した。その後のメッセージには、かすかな優しさがあった。 ——研修、頑張っているようだね。君はコツコツやればいいんだよ。「褒められた」ただ、それだけで、MARIの胸はいっぱいになった。「今なら、少しは近づけるかもしれない」そう錯覚しながら、カフェでの再会を約束した。当日、
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