あかつきは激怒した。②
あかつきは税務署長の元を離れ、会計ソフトのもとへと急ぎ足で走り出した。
署長は彼の背中を見送りながら、嘲笑した。「あのあかつきに確定申告などできるはずがない」と。
あかつきは開業届を提出し、独立を決意したばかりだった。
しかし、確定申告の手続きの煩雑さにすでに疲れを感じていた。
会計ソフトを購入し、青色申告の手続きも済ませたものの、専門用語が、まるで山賊のように次々と襲いかかる。
用語について調べ、記入すべき箇所を見つける作業は、まるで絶え間ない戦いのようだった。
特に難解なのは経費の計算で、何が認められるのか、どう分類すべきか、頭を悩ませた。
彼は知識不足を痛感しながら、それでも一つ一つの困難を乗り越えていった。
確定申告の期限は刻一刻と迫っていた。あかつきは、遅くまで明かりをつけて作業に没頭し、ついに期日直前に手続きを完了させた。
ほっと一息ついた彼は、王の元へ戻る準備を始めた。
心の中では、王のあの嘲笑がずっと響いていた。
しかし、自分が証明したかったのは他でもない、自分自身のためだった。確定申告の困難を乗り越え、彼は新たな自信を胸に秘めていた。
路行く人を押しのけ、跳はねとばし、あかつきは黒い風のように走った。少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。
風態なんかは、どうでもいい。あかつきは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。
見える。はるか向うに小さく、神戸の街並みの光が見える。
夕陽を受けてきらきら光っている。
言うにや及ぶ。まだ確定申告会場は営業している。最後の死力を尽して、あかつきは走った。
あかつきの頭は、からっぽ
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