『やさしさ迷惑41/100』
第41話言葉は、隠すためにあるんじゃない前話:新しい資料の中にあった「理解度が低い層」という言葉を、優作は「初めて聞く人にも伝わるように」と言い換えた。前の自分なら、角を取るために言葉を丸めていた。今の自分は、誰かの位置を下げないために言葉を選ぼうとしていた。変わった人は、今度は見られる。優作はその視線の中で、少しだけ言葉を選び直した。「中村、この前の言い換え、営業側でも評判よかったぞ」朝の共有が終わったあと、真壁が資料を閉じながら言った。優作は顔を上げる。「言い換え?」「若手向け説明会のやつ。“初めて聞く人にも伝わるように”ってやつ」「ああ」桐谷が椅子を回した。「中村、言葉の整体師じゃん」黒川が画面から目を離さずに言う。「整体ではなく修正です」桐谷が笑う。「黒川さん、そこは乗ってくださいよ」「必要性を感じません」「ですよね」軽い会話だった。優作も少し笑った。前より、笑うタイミングは戻ってきていた。ただ、自分の言葉が誰かに拾われることには、まだ少し慣れなかった。言い換えが評価された。それは悪いことではない。でも、少しだけ胸の奥に引っかかった。評価されたものは、次に使われる。使われるものは、時々、便利になる。午前十一時前、営業部の大槻からチャットが入った。中村さん、少し相談です。先日の説明会の件で、対象者の表現を整えたいです。今から十数分だけお時間いただけますか?優作は返信した。大丈夫です。十一時十五分でお願いします。送ってから、少しだけ手が止まった。大丈夫です。自分が自然に打ったその言葉が、画面の中で妙に浮いて見えた。消すほどではない。でも、軽くもない。十一時十五分。オンライン
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