絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

1 件中 1 - 1 件表示
カバー画像

【普通のエッセイ】夜汽車が魔法を失った日

 かつて誰もが日常の延長線上で楽しめた、夜汽車の旅。 ふと気がつくと、あの頃に感じていた胸の高鳴りは、どこへいてしまったのでしょうか? その背景を紐解いていくと、時代の移り変わりと、自分自身の変化が見えてきます。 まず大きな理由は、寝台列車という存在そのものの変化です。 かつて一般の人が気軽に旅情を味わえたブルートレインは、新幹線や高速バスとの競争、車両の老朽化によって、今や姿を消してしまいました。 現在のトレンドである「ななつ星 in 九州」などのクルーズトレインは、数十万から百万円以上もする、手の届かない超高級ツアーです。 日常の延長から遠く離れてしまったことで、身近な高揚感を得ることが難しくなりました。 現在、手軽に乗れる定期運行の寝台列車が「サンライズ瀬戸・出雲」だけになってしまったことも、選択肢の狭まりを感じさせます。 また、スマートフォンの普及も、私たちの「夜の孤独と冒険」を静かに奪っていきました。 かつては、ただ暗闇の中を流れる街の明かりをじっと眺めるしかありませんでした。しかし今は、手元の画面を開けばいつでも動画やSNSと繋がることができます。 ネットを開けば車内の様子や過ごし方のコツが事前にすべて分かってしまうため、ドアを開ける瞬間の「どんな部屋だろう」という未知へのワクワク感も薄れてしまいました。 外の世界から完全に遮断された「夜の隔離空間」という、寂しさと表裏一体のスリルは、24時間繋がれる安心感によって日常の中に溶けてしまったのです。 さらに、自分自身の年齢や経験による慣れも、無視することはできません。若い頃は「どこでも寝られる」という勢いだけで楽しめま
0
1 件中 1 - 1