【連載 第3話】雨の日の来訪者
こんばんは。丸山修平です。あの日は、
朝から静かに雨が降っていました。
祖母の家の庭に落ちる雨音は、
どこか心を落ち着かせるような、
不思議なリズムを刻んでいました。
私はいつものように、
祖母の部屋でぼんやりと過ごしていました。
すると、
玄関のほうで、かすかな物音がしたのです。
「誰か来たのかな」
そう思って廊下に出たとき、
なぜか胸の奥がざわついたのを覚えています。
玄関には、
一人の女性が立っていました。
傘を持ったまま、
しばらく動かずにいるその姿は、
どこか現実から少しだけずれているように感じられました。
祖母は、
その女性を見ると、
すぐに家の中へと招き入れました。
何気ないやり取りのように見えたのですが、
私には、その場の空気が少し違って感じられました。
言葉にはならない、
重たいものが流れているような感覚。
女性は、
ぽつりぽつりと話し始めました。
その声は静かで、
どこか遠くから届いているようにも感じられました。
内容ははっきりとは覚えていません。
けれど、
その人が抱えている想いだけは、
なぜか強く伝わってきたのです。
悲しみや、
後悔や、
どうにもできなかった気持ち。
それらが、
言葉以上に、はっきりと。
私はただ、
その場に立ち尽くしていました。
何もわからないのに、
何かを感じてしまう。
それが怖いのか、
それとも不思議なのか、
当時の私には判断がつきませんでした。
話が終わり、
女性が帰ったあと。
祖母は静かに、
湯呑みにお茶を注ぎながら言いました。
「人はね、言葉にできない想いを抱えて生きているんだよ」
その一言が、
なぜか深く心に残りました。
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