♪【20000文字小説】 生きる・アタシじゃない私を
<あらすじ>
かつては町内屈指の御殿と周知されるも、今では不美観地区の元凶と囁かれるほどに荒れ放題。
そんな廃墟寸前のお屋敷で独り暮らしの中尾裕子は、完全に人生諦めモード。
いつしか居ついていた2匹の野良猫と、ただ生きているだけの年月を数えていた。
良家のお嬢さまとしてキラキラ輝いていた少女時代は遙か遠く、それでもこの町以外に居場所がない現実。
変わり果てたその容姿ゆえ、彼女だと気づかぬ地元の知人たちの視線を避けるように、黙々と出張清掃作業に勤しむ日々。
「これで食べて生きているんだ!何が悪い!?」
声高に叫ぶ気力すら失う寸前の裕子がある日、思わぬ形で数十年振りの再会を果たすことになったのが・・・・・・
(※3/25/2025 Update) - - - - - - - - - -
1・アタシライフ
「ヤバいな……最後の千円札になっちゃった。この調子だとまた携帯止められて、下手すりゃお約束のローソク生活かな」
裕子にとって大切なダブルパートナーの2匹の猫たちは、そんな独り言が理解できるのか、心配そうな素振り。
「大丈夫だって。これまでアンタたちにひもじい思いはさせなかったでしょ?そりゃ万年粗食は申し訳ないけどさ」
仕事疲れプラス空腹で空気の抜けたような口調から、もしや神様からの贈り物でも届いてはいないかと、望みを託して開いた冷蔵庫。
されど現実は庫内よろしく冷ややかで、やはりのスッカラカン手前状態。
かつては近隣随一の豪華屋敷で知られていたこの家も、流石に経年劣化が隠し切れず。
今では不美観地区の元凶などと囁かれる、残念な佇まいへと変貌していた。
広い1階には父親が経営していた
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