【短編小説】花金の駅で感じた小さな物語
ご覧いただき、ありがとうございます。フリーライターの天泣(てんきゅう)です。本記事では物語調の文章として、短編小説を掲載いたします。金曜日の夜=花金。仕事帰りの人々が駅を行き交う風景を描いた短編です。金曜日の夜。駅構内の連絡通路のベンチに腰掛け、友人を待つ。目の前では人々が往来して、様々な表情を見せている。街の雑踏は、いつもと違う音に聞こえた。昨日までの、暗く鈍重で、呑まれてしまいそうな足音と打って変わって、軽やかで跳ねるような足音がこだましている。まるで、浮き足立つ人々の心を代弁するかのようだ。目の前の人波には普段の無機質さを感じなかった。波は無数の光の筋のようで、ひとつずつに色があって、温度を感じる。どこかよそよそしくて独特の距離を感じる男女、テイクアウトの袋とバックを抱えて足早に改札に向かうスーツの女性、電話しながらスーツケースを引き歩く男性、駅にあるオブジェ前で写真を撮っている家族……。彼らはこれから、どんな時間を過ごすのだろう。初めてのデート?家で待つ人がいるのか、はたまた、ひとり贅沢?ホテルに着いて、休む間もなく仕事をするのだろうか?明日はどこに行く予定なんだろう?━━私はいつしか、妄想に耽っていた。普段、気にも留めない人たちが、たまらなく愛おしく思えた。胸の奥がぽっと温かくなった気がした。「ごめ〜ん、お待たせ!」何気ない友人の声。その温度を、いつも以上に繊細に感じる。「ううん。私も今来たとこ」自然と笑みが溢れた。名前も知らない尊い感情。今夜だけのものかもしれない。忘れたくない思いを噛み締めるように、私は歩き出した。また何度でも、この思いを思い出せるように。ご一読い
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