今年の8月31日は曇り模様。午後からは雨が降るらしい。
雨に濡れるのもいいだろうから、水は用意しなかったよ。
数年前まで夏休みの宿題は、最後まで取っておいてたっけ。
お前と通話しながら、夜通し課題を埋めてさ、徹夜で新学期を迎えたよな。
うだうだ言ってはいたけど、今となっては尊いんだ。不思議といい思い出なんだ。
高校からは別々になって、それぞれ忙しくなったよな。
新しいコミュニティができて、生活リズムも変わって、いつしか連絡を取らなくなった。「便りがないのはいい便り」だなんて思ってた。
また会える、そう思ってた━━
報せは突然だった。
お前の母親から、ウチの母親に連絡が入った。
「亡くなったって」
あまりに現実味がなくて、真面目には捉えてなかった。でも、お前の亡骸を目の前にして、抗えない現実を突きつけられて、そこからは正直、しばらく記憶がない。記憶が再開された時に感じたのは、目の腫れと鼻と喉の痛み、カピカピの目の下の感触だった。親曰く、激しく泣き崩れたらしい。
8月31日。お前が逝った日だ。
お前が残した物から、俺たちは必死に手がかりを探った。見つけたところでお前が帰ってくる訳でもないし、俺たちが救われることもないけれど。
俺たちは知りたかったんだ。お前の孤独の正体を。
ただ不思議なほど、お前の弱音や苦しみの欠片は見当たらなかった。ノートにも、SNSにも、消しゴムのカバーの裏にも。
いや、それが答えなのかもしれない。きっとお前はどの世界にも気を遣い過ぎちまったんだ。吐き出せば楽になれたはずの苦しみを、誰も呪いたくないと、飲み込んだんだ。
褒めはしない。でも、責めることなんてできやしない。
だってきっと、お前はそれをやり切ったんだから。誰にも背負わせたくなかったんだろ?よく頑張ったよ。でもやっぱり、一言声かけてほしかったよ……。
あの夏以降、命日に手を合わせに来れるように、夏の課題は終わらせるようにしたよ。だからほら、今年も来てやったよ。
俺も来年には社会人だよ。最後の学生生活を、お前と一緒にはしゃぎたかったな……。
そろそろ行くよ、俺。雨も振り出しそうだし。
また来年、会いに来るよ。そしたらちゃんと、話聞いてくれよ。
お前だけが、俺をこの世に繋ぎ止めてくれるんだから。
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