明るい売り場の裏で、時間が止まっていた話
以前、パートとして働いていた頃の記憶です。
年末が近づくと、
応援で別の店舗へ行くことがありました。
その日、私は
あるスーパーマーケットの事務所にある
職員の休憩室にいました。
「休憩室」と聞くと、
少し肩の力を抜く場所を想像します。
けれどそこは、
人が行き交い、
在庫の商品や段ボールが積まれ、
そこで、みんなが食事をとる場所でもありました。「落ち着く」という言葉からは、
少し離れた空間。
事務所へ向かうとき、
従業員が出入りしていたのは
商品の搬入口。
シャッターのある裏口でした。
従業員の駐車場から、
みんなそのまま、
荷物と同じ動線を歩いていく。
そこから、
それぞれの持ち場へ向かう。
そんな流れでした。
休憩室で、
ふと顔を上げると、
壁に時計が掛かっていました。
針は、
”3時半 ”を指したまま。
時間は、止まっていました。
表面のガラスは割れていて、
穴が開いていました。
でも、誰も触れないまま、
そこにありました。
「直されない」というより、
「もう、見られていない」
そんな気配。
その時計を見たとき、
胸の奥が、静かに沈みました。
ここで働く人たちは、
きっと最初は気づいていたはずです。
時計が止まっていることも、
割れていることも ―― 。けれど、
変わらないまま時間が過ぎると、
人は、それに慣れていく。
そして いつの間にか ――
壊れた時計、
忘れられた時計の存在が、
「 自分は大切に扱われていない 」
そんな感覚へと、
変わっていくのかもしれない。無意識に、
言葉にならないまま、
心の奥に残っていくのかもしれない ―― 。売り場は、明るいのです。
音
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