教養としての近代日本思想⑥:近代文学
写実主義:社会の実情や人間心理をありのままに写そうとする文学的立場・方法。坪内逍遥の評論『小説神髄』や実験小説『当世書生気質』、ロシア文学のリアリズム理論に基づいた二葉亭四迷の『小説総論』や「だ」体の口語文による言文一致体の小説『浮雲』、翻訳『あひゞき』(ツルゲーネフ)などがあります。逍遥は雑誌『早稲田文学』を舞台にして森鷗外と「没理想論争」(文学における現実主義と理想主義の対立)を交わしたり、島村抱月と文芸協会を設立して、新劇運動を展開しています。
擬古典主義:開国以来の欧化主義への反動としての復古的思潮。尾崎紅葉・山田美妙らは文学結社「硯友社」を作り、我が国最初の純文芸雑誌『我楽多(がらくた)文庫』を創刊して、紅葉は写実主義の最高傑作と呼ばれる『多情多恨』を発表して、言文一致体の到達点である「である」体を案出し、大作『金色夜叉』を連載して大評判を博します。幸田露伴は漢学・仏教・儒教の精神を基底に理想的・男性的・意志的な世界を中心に『五重塔』を著わし、紅葉の写実派に対して、理想派と称され、「紅露時代」を築きます。
浪漫主義:前近代的な因習や倫理を否定し、内面の真実を重んじて、理想や恋愛に自我を解放しようとしました。森鷗外はドイツのロマン主義をふまえた文芸・評論雑誌『しがらみ草紙』を主宰し、小説『舞姫』や翻訳『即興詩人』(アンデルセン)などを発表しました。キリスト教的な精神文化を取り入れた初期ロマン主義の文芸雑誌『文学界』には、北村透谷の評論『内部生命論』や樋口一葉の小説『たけくらべ』、島崎藤村の詩などが発表されました。和歌でも与謝野鉄幹が東京新詩社を結成し、雑誌『明星』を創刊
0