それは本当にやりたいこと?
認知症ケアの世界には、音楽療法、回想法、家事療法など、さまざまな「療法」があります。
「脳が活性化して認知症進行を遅らせる」と聞くと、なんだか魔法のように聞こえますよね。
でも、私の現場経験から言わせていただくと、ここに大きな落とし穴があります。それは、「その人が嫌いなことをさせても、全く意味がない」ということです。
音楽が嫌いな人に無理やり歌を歌わせても、辛い過去を思い出したくない人に無理に昔話をさせても、脳は活性化しません。それどころか、ストレスで認知症の症状を悪化させてしまうことさえあるのです。
認知症専門施設の落とし穴
認知症ケア専門施設の代表格である「グループホーム」。
グループホームの正式名称を知っていますか?
「認知症対応型共同生活介護」です。
この名称を聞くと「認知症の方の専門施設なんだ!」と思われるでしょう。
確かにグループホームでは入居者とスタッフが一緒に料理や洗濯、掃除をしながら共同生活を行う「家事療法」が取り入れられています。
「認知症専門の施設だから安心」とご家族は思われるかもしれません。
女性はみんな「家事が好き」ではない
でも、もし入居されるお母様が、昔から家事が大嫌いだったとしたら……?
「夫が亡くなってようやく家事から解放されたのに、またやらされるの?」
そんな思いをさせてしまうのは、果たしてその人にとっての幸せでしょうか。
介護士の中でもその先入観を持っている人は意外と多いように思います。
認知症の研修を行っていた時、グループホームのスタッフから「料理や洗濯を一緒にやろうと言ってもなかなかやってもらえない。どうしたらやってもらえますか?」という質問を何度か受けた事があります。
グループホームに努めている介護士でさえ「ここはグループホーム。家事療法を行う施設だから、家事を一緒に行って認知症の進行を遅らせなきゃ」と安易に考えている人がいるようです。
「療法」って何ですか?
本当の意味での「療法」とは、その人が好きなこと、興味のあることの延長線上にしかありません。
釣りが好きな人なら「釣り療法」、絵が好きなら「絵画療法」でいいのです。
大切なのは、世間の「正解」を押し付けることではなく、その人が今までどんな人生を歩んできのかを深く知ること。
「うちの親は何が好きだったっけ?」「どんな時に笑顔になっていたっけ?」そんな事を思い出しながら日々の生活の過ごし方や施設選びを行っていきましょう。
「この施設を選んで本当に大丈夫?」
そう迷われたら、ぜひ一度立ち止まって、その方の「好き・嫌い」を整理してみてください。
もし一人で判断するのが難しければ、いつでもお話を聞かせてくださいね。その方の人生に合った、施設やケアを一緒に考えましょう。