皆さん、こんにちは。
このペイシェントハラスメントシリーズ連載ですが、第3章に入り、B氏の動きが活発になってきました。
(その1)では、スタッフの電話マナー、(その2)では、私の一連の対応に対する不満、(その3)では、医師の病名説明不足と指摘の矛先を次々に変えて、病院の対応を振り回してきます。
今回は(その4)になりますが、B氏の行為はエスカレートしてきます。
当院もこれまでは、Aさんの治療と転院を最優先し、硬軟の対応を織り交ぜながら着地点を模索していましたが、この頃から厳正な対応を検討するようになります。
今回はその契機となったエピソードになります。
【病院の方針】
B氏は、転院先の医療機関での面接で、「これまで聞いていなかった病名があった」という理由で、主治医の甲先生に対して即時の説明を強要してきましたが、結果として病院は主治医が不在であるため代替案を提示し、B氏の要求に応じる姿勢を示しましたが、B氏がこれを拒否したため、B氏の要求に応じませんでした。
翌日、甲先生に経過を説明するとともに、院内の関係者で再度今後の方針について意見交換を行いました。
まず、B氏が「聞いていなかった」としている病名ですが、これまでの診療経過を確認しても、当院に転院する以前の系列病院での入院中にも説明しており、当院転院後は甲先生からも何度も丁寧に説明しており、カルテにも記載されていることを確認しました。
また、B氏が強い不満を抱いている私の一連の対応については、B氏のハラスメント行為が理由であり、当院からB氏に対する懐柔の必要はないと判断しました。
そして、今後はB氏の言動に対して所要の対応を行い、B氏が転院に応じない場合は、最終的に書面による退院勧告と医師法第19条を根拠とした診療継続困難とする「正当な事由」による診療拒否を検討すべきとの結論に至りました。
この対応方針が決まり、私はこの事例の経過を病院長に報告するとともに、病院の顧問弁護士にも「相談」という形で情報共有を行いました。
【B氏からの交換条件】
それでも、B氏もこの状況はよろしくないと感じていたのかもしれませんが、転院の予定を数日後に控え、退院前のICには応じる姿勢を見せました。
そのICには、主治医の甲先生、病棟師長、担当MSWが対応し、私は部屋の外で待機をすることになりました。
また、前回のIC同様にボイスレコーダーを設置しました。
カンファレンスの直前、B氏から担当MSWに電話が入りました。
B氏は、「今回の転院については、再度の日程調整をすることになれば、先方の医療機関にも迷惑がかかる。今回のトラブルに転院先の医療機関は無関係なので、予定されている転院日であれば自分も対応できる」と話しました。
一方、B氏はこう続けました。
「入院から前月までの治療費は支払う。しかし、今月の支払いはTKとの話が解決してからであり、それが解決されれば今月の治療費も支払うし、転院にも応じる」
これもB氏がよく使う手段ですが、この電話ではこの後のICの成否が重要ということもあり、担当MSWはB氏の話を傾聴するだけの対応としました。
【ICの中止】
B氏は約束の時間に少し遅れて現れました。
甲先生がB氏に対してAさんの病状説明を行おうとしたところ、B氏は甲先生の説明をいきなり遮り、転院先医療機関への診療情報提供書の内容について、声を荒げて詰問を始めました。
甲先生は、冷静さを保ちながらB氏に説明を続けようと試みましたが、B氏は甲先生の説明を途中で遮り、先生に向かって指を差し、顔を近づける、机をバンバンと叩くなどの威威圧的な行為を繰り返し、ICの継続が困難な状況となりました。
甲先生は、B氏に対して「病名の説明はしていたが、それを理解されていなかったのはこちらの説明不足にある」などと限定的な謝罪と丁寧な説明を繰り返しましたが、B氏は甲先生の言葉を何度も遮り、「俺は何回もTKに電話を切られた。だから同じことをしてやる」と発言して退室し、ICは中止となりました。
【IC中止の分析】
この一方的なIC中止の際、私は出ていくB氏を引き留めることができる場所で待機をしていましたが、あえてそうはしませんでした。
ここで私が出ると、ICに私が関与していたことがB氏にわかってしまいますし、そうなるとその前の穏やかに終了したICも同じように私が関与していたということにB氏は気づき、B氏の行為はさらにエスカレートしたと思います。
また、私はこのB氏の行動は、初めから決めていた行動だと考えていました。
これも当時の私の対応記録からですが、私はB氏がこのように考えていたと推察しています。
①転院を病院の責任にして業務を停滞させる(妨害)
②ICの中止、転院の中止の原因は私にあると病院に認識させる(分断と孤立)
③ここまでの破壊行動で、病院がどのような反応をするかを見る
特に③については、この一件で病院側が折れて、私をこの件から外し、B氏の要求に応じるようになれば、何かと理由をつけて入院を続けるつもりだったと思います。
しかし、この事例では甲先生が以前の勤務病院で医療安全に携わっておられたこともあり、B氏のこの行動に対して、これ以上看過することはできないとし、近日中に必ず転院をさせる方針を固めました。
私の当時の記録には、このB氏の行動について、
医療提供者に対する威迫的言動、説明機会の妨害、医師への人格攻撃を含むものであり、医師法第19条における応召義務の「正当な事由(診療継続困難)」に該当し、診療契約の信頼関係を著しく損なうものと判断するとあり、診療拒否を前提とした手続きを進めていくことを確認した旨を記載しています。
(その5へ続く)