皆さん、こんにちは。
私は警察官時代、殺人、強盗、放火等の事件を捜査する強行犯刑事として勤務していたことがありました。
「刑事」とひとことで言っても、担当する事件の分類が異なると、色々と性格の違いが作成する書類にも表れます。
特に供述調書では、私が経験した強行犯部門は、犯罪の実行行為をビデオのコマ送りくらいのように丁寧に記述する刑事が多い部門でした。
また、その実行行為に至る心の動き=動機の部分も丁寧に掘り下げることが重要と教えられてきました。
私のブログはひとつのイベントのお話しを進める中で、説明が長くなることがありますが、これは職業病なのです(笑)
ですが、長くなる部分は、実は私が読み手の皆さんに伝えたい部分でもありますので、時間に余裕があるときにそういう部分を読み込んでいただけると、このブログをより理解していただけるのではないかと考えています。
それでは続きを進めていきましょう。
【事前方針】
Aさんの転院先に、療養型の医療機関が受入れの意向を示してくれました。
担当MSWからその情報が関係者に共有され、関係者でB氏への連絡時の対応方針について検討しました。
関係者での検討とはいえ、私を除くほとんどがB氏のようなタイプの人物に対応するためのノウハウを有しているのではなく、基本的には私が対応の方法を提案して、周りから意見を聞く方法で進めていきます。
意見というのは、私が提案するB氏への会話の進め方の「言葉」について、「それは強いように感じる。もう少しニュアンスを柔らかくした方が良いのではないか」などと、担当する人が「できる、できない」を考えていくためのものです。
もちろん、あまりに言葉をオブラートで包みすぎると、逆に相手に伝わらないこともあるので、その表現レベルについては私としては譲れない場合もあり、電話の担当者には一定の負担を強いることになってしまいます。
しかし、これも転院という手続を進めていくための必要なプロセスであるため、予想でき得るB氏の反応に応じて、「この場合はこう言いましょう。あの場合はこう」とチャート式のように言葉を設定していきます。
中には完全に交渉が物別れになる結末も想定していますが、そうならないようにするため、電話の担当者にも臨機応変さが求められます。
「この電話の目的は何なのか」「着地点をどう設定するのか」「そのためにはどう交渉するのか」をしっかりと定めておくことが必要だと思います。
【MSWからの連絡】
病院関係者内で、ああでもない、こうでもないと考えに考え抜いたB氏への転院調整の連絡ですが、拍子抜けするほどにすんなりと行き、後日の転院先医療機関との面接をB氏は了承しました。
なぜうまくいったのか、色々と考えられる要素はあります。
その考えられる理由は、
①担当MSWは初回IC時からB氏との関係は良好であった
②B氏としても、病院と全面的に対決姿勢を示すことは得策ではなく、病院とのつながりを維持する窓口は作っておきたいという心理があること
③B氏にも一連のトラブルがAさんの診療に少なからず影響があるということを理解している
④当院にとどまっての診療は「潮時」と考えているのではないか
というところです。
これも当時の私の対応記録に主観的に綴ったものなので、事実とは言えません。
ただ、同じような事例でも、ハラスメントの実行者が変われば、このような洞察も当てはまることはあると思います。
【しかしまた一難】
「これで転院がスムーズに進みますように…」と関係者一同願っていましたが、なかなか思うようにはいかないのがこのB氏への対応です。
転院先との面談予定日の後、B氏からMSWに電話が入りました。
その内容は、
①転院先病院からの病状確認で、当院では説明していない病名があった。これまでこの病気については主治医である甲先生から説明を受けたことがない。
②なぜ、家族が聞いたことがない病名が先方に伝わっているのか、主治医から説明を受けたいので電話をかけさせろ。
というものでした。
しかしこの日、甲先生は外勤の日でした。
MSWから、その旨を説明しましたが、B氏は「患者側からの要求に対応するのが筋だろう」と強く求めてきました。
また、転院については私とのこれまでの経過があり、甲先生の説明があったとしても、まずは私との軋轢が片付かなければ転院に応じないとも言っていたそうです。
【事実確認】
私はMSWからこの報告を受け、これがB氏の「揺さぶり」である可能性も否定できないと考え、MSWに面談を行った転院先医療機関に面談の内容について事実確認をするよう依頼しました。
その結果、確かに病名の確認で「聞いていない病名がある」との発言はあったものの、面談は穏やかに終了したとのことでした。
B氏の言動には、当院と転院先でのトーンの差はあったものの、事実であると確認できましたが、ここでB氏の要求通りに動いてしまうと、今後もB氏は新たな要求をつきつけてくることが予想されます。
私は悩みましたが、
「主治医が外勤であったこと等もあり、基本的な対応としては、本日中に主治医から連絡させることはしない」
「B氏と私の経過の中で、私から電話はしないことになっているので、私からの電話もしない」
と判断しました。
しかし、MSWはB氏に電話する約束をしていました。
約束をすると、これは守らないとMSWが激しく非難されることになります。
今のところ、B氏が冷静に話すことができるのはMSWだけであり、病院としてもAさんの転院にはMSWの介入が必要であるため、MSWとB氏との関係を悪化させることは悪手だと考えていました。
そのため、「主治医には連絡がつかなかったので、TKに報告をした」と説明するようMSWに指示をしました。
【B氏の反撃】
MSWが私の指示どおりB氏に連絡し、「主治医に連絡がつかず、やむを得ずTKに報告をした」と説明し、B氏の求めがあるのであればTKに電話をさせますと伝えました。
しかしB氏は「何の要件で電話をしてくるのか」とMSWに質問し、MSWが「Bさんが言っておられるAさんの病名のことです」と答えると、
「医者でもないTKが病状のことを正しく説明できるのか」
「病状の説明ができるのであれば電話は聞くが、それ以外の内容であれば電話応対しない」
「そもそもTKとはこれまでの経緯があるので電話はしてこないことになっているはず」
「TKのこれまでの対応については刑事告訴も考えている。TKとの問題が解決されなければ転院についても動くつもりはない」
と、私からの電話を拒否したそうです。
MSWからB氏への電話連絡の結果報告を受け、私は当初の「甲医師に電話をさせろ」という問題が、「TKの対応が気に食わない。電話をしてくるな」と方向が変わりました。
B氏にとっては、病院は慌てさせるための一手だったかもしれませんが、私にとっては、
①主治医と連絡がつかないため、その代替案を私からの連絡として提案した
②B氏は病院の代替案である私からの連絡を自らの意思で拒否した
ということで、当日中に甲先生または私から電話をする必要はないと判断し、翌日に甲先生に経過を報告することにしました。
(その4へ続く)