第15回=最終章【ペイシェントハラスメント】「転院その後」

第15回=最終章【ペイシェントハラスメント】「転院その後」

記事
法律・税務・士業全般
ChatGPT Image 2026年7月24日 11_07_54.png
皆さん、こんにちは。

2か月超にわたって紹介させていただいたペイハラシリーズですが、この回をもって最終回となります。

当初は数回で終わるつもりでしたが、原稿を書き進めていくうちに、読者の皆さんにできるだけたくさんのことをお伝えしたいと思い、個人情報以外は時系列の整理をした程度で、事実ベースで話を進めてきました。

この最終章でエピソードを完結させた後は、8月中は夏休みをいただいて、9月からこの事例に基づきながら、
・初動対応、電話対応
・記録の残し方
・窓口一本化
・警察相談
・弁護士との連携
などをお話しさせていただく予定です。

それでは最終章にお付き合いください。

【今後の当院の方針】

B氏の転院直後の電話攻勢を受け、今後もB氏からのアクションが予想されたので、院内で今後の対応方針について検討しました。

①当院及び系列すべての医療機関と介護・福祉施設における応召の拒否(医師法第19条「信頼関係の構築ができない」に該当)とし、患者とB氏の情報を記録化し共有する。
②未払いの医療費について医事課と調整を行い、早い段階であらゆる手段を行使して請求を行う。
③B氏からの要求に対しては、すべての対応を拒否する通知文書を郵送する。
④一連の経過を警察に相談し、今後のB氏の行為に対して、明らかに行き過ぎた行為を認めた場合、警察の協力を仰ぐ。
⑤顧問弁護士に継続的に相談をし、適正・適法な対応を行う。
⑥B氏との連絡は当面メールのみとし、必要な事項のみ伝達・回答し、再調査や再確認の要求には応じない。B氏との連絡専用に作成したメールアドレスを使用し、医療費の回収が完了した時点でアカウントを破棄する。

この6項目は、
・医療費の未払いは認めない。逃げ得は許容しない
・今後、病院としてB氏からの接触は一切拒否する
・不当行為に対しては、顧問弁護士、警察等、あらゆる法的手段により適法かつ適切に断固として対応する
という基本方針が根底にあります。

それだけB氏の一連の行為により病院はダメージを受けたということです。

これほどの対応となったのは、私がこれまで2,000件以上のクレーム・カスタマーハラスメント対応に携わってきた中でも、わずか3件しか経験していないレベルの事例でした。
一定の受忍が求められる医療現場にとっては、それほど大変な事例であり、稀なケースであったということなのです。

ただし、医療現場は昨今のカスハラ対応の潮流からすると「我慢しすぎ」なのかもしれません。

私自身も他の業種や自治体の取り組みをお手本にアップデートをしていく必要性を感じています。

【その後】

転院までの対応、顧問弁護士・警察への相談、文書での通知・請求、関係部門への情報共有と協力要請…考え得る様々な手段でB氏からの攻撃に備えましたが、その後、一週間ほどはB氏から業務の邪魔を意図した嫌がらせがいくつかありました。

メールが届かない
→B氏が指定したアドレスには確実に送っていたものの、B氏からは違うアドレスに送るよう要求がありましたが拒否しました。
理由は、B氏が必ずこのアドレスに送るようにと指定してきたのに、合理的な理由なくアドレス変更を申し立てたためです。

郵便もこない
→入院誓約書の保証人情報に基づき郵送していました。送付先住所についても、何度もB氏本人に確認しています。宛所不明で返送された事実もありません。

 Aさんの施設に送ってほしい
→Aさんが転院先病院に入院中に施設に郵便物を郵送することについて、施設に確認したところ、既に施設を退所していることを確認したので拒否しました。
※施設担当者に聴き取りしたところ、通常の郵便物や通販の商品も施設を受取先に指定し、施設側ではそれに応じているとのことでした。このエピソードだけでもB氏が施設や病院をコントロールするために様々な手段でハラスメントをしてきたことが伺えるのではないでしょうか?

などの連絡や要求がありましたが、これらすべて上記のとおり説明、拒否しました。

以降はB氏やB氏が雇った弁護士(実在するかは怪しいですが…)等からの接触はなく、このブログ執筆現在、1年以上が経過しましたが、接触はありません。

「あれだけ事後の準備をしておいて無駄ではなかったのか?」と思われるかもしれませんが、危機管理の基本的な考えとして「大きくとらえて小さくまとめる」という言葉があります。

初期対応は最悪を想定してリソースを注いで所要の対応を行い、事実が判明するにつれ、その事実のスケールに適した体制・対応に縮小していくという意味です。

まさにこの転院後の対応方針は、最悪を想定した上でのフルコースの方針で、今はここまでの緊張感は持っていませんが、B氏からのアクションがあれば、前回にお示しした関係部門への協力要請文書に基づく対応をすることになっていますので、決して無駄ではなく、今後の対応のための資産を残せたと考えております。

B氏への対応は一応の終結を見ましたが、病院では毎日のように「何かのトラブル」が大なり小なり発生しています。

多くは似たようなケースの繰り返しです。しかし、その一つひとつの対応の積み重ねが、危機管理の質を高めていきます。

このシリーズでは、一つの事例を通して、電話対応、記録、組織対応、弁護士との連携、警察相談など、危機管理の現場で実際に私が経験したことをお伝えしてきました。

正解が一つではない世界だからこそ、この事例が皆さまの現場で「次の一手」を考えるヒントになれば幸いです。

それでは、9月からまた新しいテーマでお会いしましょう。
(了)

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す