セラー業務支援室です。
私は医薬品メーカーで30年間、営業事務として働いてきました。
営業事務は、一人で複数の営業担当をサポートし、他部署とも連携し、さらに取引先とも向き合う仕事です。
そのため、日々多くの人から頼られる場面が多く、ある意味で“ある欲”が満たされてしまう人がいます。実際、私はこれまでに何人もそのような人を見てきました。
■ 長年の担当が“その人しかわからない仕事”をつくる
このような業務を数年続けていると、その人は自然とその業務のスペシャリストになります。
困ったことがあれば周囲は「この件は〇〇さんに聞こう」と半ば習慣的に頼るようになり、本人も「これは自分の仕事だ」「自分にしかできない」と認識し始めます。
すると担当者の経験や思考が中心となり、業務が滞りなく進んでいることから、仕事人としての“承認欲求”が満たされていくのです。
これが無自覚のうちに、属人化の土台がつくられると私は思うのです。
■なぜ属人化が進むのか
やがて周囲は「この業務は○○さんがいないと回らない」と認識し、上司も面談などで属人化を解消しようと働きかけますが、担当者は業務の最適化・効率化よりも、「いつものやり方」を主張します。
その根底には“安心感”と“承認欲求”があるので、属人化の解消は簡単ではないのです。
また会社が新しいツールや仕組みを導入しようとすると、属人化が進んでいる担当者ほど無意識に抵抗を示します。
• 今までのやり方で困っていない
• 新システムは覚えるのが面倒
• 自分の立場や必要性が脅かされる気がする
このような感情が、理屈よりも先に反応してしまうのです。
■ 特に営業事務の仕事は、属人化が起こりやすい
営業事務は、一人で相手にする関係者がとても多い職種です。
社内外とのやり取りが複雑なうえ、「細かな判断」をその場で積み重ねていく仕事でもあるため、どうしても“自分のやり方”が出来上がりやすい側面があります。
私も以前、会社で繰り返し課題として挙がっていた、ある営業事務の問題点について改善策を思いつき、周囲の理解も得たうえで、上司(営業担当の上司)に提案しようと動いたことがありました。
ところが、提案の内容を一度も聞いてもらえないまま、ミーティング自体が開かれなかったのです。
理由も説明もなく、ただ“拒否された”と感じたあのショックは今もよく覚えています。
その時痛感したのは、
「自分の担当業務に他者から提案されること」=「何かを変えさせられる」という恐怖
として反応してしまう人が、決して少なくないという現実でした。
■属人化は繊細な問題
属人化は、組織にとって明らかなリスクです。
そのため、企業はDX化や業務マニュアル整備など、解消に向けた取り組みを続けています。
しかし、属人化はスキルや仕組みの問題だけでなく、
“承認欲求”や“不安”という、人間の心理と強く結びついた、とても繊細な問題だということ。
私は30年の現場経験からそう感じています。