――はじめに――
この投稿は、2025年11月22日・23日・24日の3日間にわたって連載する、
小説風の自叙伝です。
もし興味を持っていただけた方は、ぜひ上巻(11/22分)から
お読みください。
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→下巻(11月24日12:00公開)
「とある眼つきのわるい少年の手記」(2/3部)筆者:にか
改めて、壮年の男性は手記に目を落とす。
―『ボクは、いつも1人です。今日も、明日も、おそらく"未来"も。
幼いながらもボクには、あなたがわかります。
だからどうか言葉をき...』
ここで終わってしまった手記。
壮年の男性は続きを探し始めた。
長年のカン、もしくは直感という代物だろうか。
それが少し冴えた男性はいとも容易く
すぐに過去の"アナログイラスト"が溜めてあるボックスを机に置く。
と、同時にドッシャンガランとひっくり返す。
当然机どころか床にまで大量の紙が散らばってしまう。
この男性が行動するときは、時に周囲を驚かせるほど
大胆に振る舞う。行動力、決心のかたい男なのである。
禄に片付けずに目的の物を探す。
暫くして、学童で使う様なプラスチック製のファイルから
ようやくひと欠片、見つける事ができた。
「やれやれ...人騒がせな代物だな」
相変わらず片づけは無視して、繋ぎ合わせてみる。
どうしても1つの事しか集中できないタイプだからだ。
運が良い事に、先ほど破れた箇所の続きのようだ。
『幼いながらもボクには、あなたがわかります。
だからどうか言葉をきいてください。』
『きっと先の未来、ボクという存在と記憶は、
あなたに迷惑をかけてしまいます。
この辛い記憶が足枷となり、苦しませるのです。
ボクは「我慢」をする事を決めましたが、
もう、分かります。身体の重しになっています。
近頃、肌荒れなのか顔に"ブツブツ"ができてきました。
変化はすでに起こっているのです。
そして、他人の事は理解をしてあげられるけど、
ボクの事を分かってもらうように伝える方法が
わかりません。
それは、血の繋がったはずの"親"にもです。
遠い未来、ボクの気持ちは、
ダムの"決壊"のように大きなチカラになるでしょう。
この"チカラ"が何なのか、自信は無い...。
―。悲しい事だけど、ボクの心との対話では
これを避ける事はできそうもありません...。
なので、ずっと考えました。
そして決めました。
ボクはあなたに"お願い"があ...』
現状まで集めた欠片で読み取ることができるのは
ここまでだった。
壮年の男性は、文章を目で追って確認していく毎に、
それはそれは深いため息を吐かざるを得なかった。
何故なら、この男性の人生はまさに手記の通りであり、
掘り返さなくても良かった記憶まで、芋づる式に
出てきてしまったからだ。
間違いない。
これは幼い自分が書いた手記である。
眼つきのわるい"少年"が、"壮年"となった男性へ―。
つまり、今この手記を必死に探している
"僕"に宛てた『タイムカプセル』だったのだ。
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"顔のブツブツ"、これはニキビの事だ。
...本当に、悪夢だった。特に何かが悪いわけでなく、
思春期という時期だったから、という理由なだけ。
それだけの症状だったというのに。
その理由で顔中にニキビができて以降、
「触るとうつる、近寄るな!」「不潔だ、汚い!」
「エイリアン」「だから、みんなアイツとは関わるなよ」
グループ授業でも机という"物質"ですら寄せてもらえない。
僕はもう学校に行く意義を全く感じなかった。
もちろん"親"には相談した。正確には、母だけ。
父親は生まれてすぐに、詳細は省くが自己破産を起こした。
それにより身内から"存在"を消され、何も意思を
持たなくなってしまっていたのだ。
母はまさに"昭和の人間"といって過言ではない。
ニキビにしても「水なりツバなりつけとけば良い」と
それだけ言い放つだけ。
実際の問題はニキビではなく、「いじめ」だというのに。
仕方もありません。当時はいじめという言葉も
今ほどチカラを持っていませんでした。
昭和とはそんな時代だったのです。
ざっくばらんな世の中でした。
この時点で自分以外の「他人」という物を
頼れるものでは無いと決断。高校で家を出ました。
逃れる事で避けれていた心の"決壊"。
『社会人』という社会の"歯車"になってしまった時、
僕は逃げ場を絶たれてしまいました。
必ず早朝、終わりは0時すぎ。土日も必要があると
"近場だから"と呼ばれる。毎日、毎日、仕事、仕事。
初めは良くても、身体が疲れ果てていきます。
無理が生じて、ミスがあれば、怒鳴り散らされる様に
恐喝され、"特に理由も無い"のに暴力を振るわれる。
役職という"立場"でどうにでもなってしまう恫喝。
「...何で、言いなりに、良いように扱い過ぎだろ..!
人を何だと思ってる..僕はもう...限界だ!!!」
少年時の僕の示唆した通り、ダムは"決壊"します。
チカラは正直、当時の僕にも扱いきれませんでした。
暴力には暴力で抵抗、恐喝には叫ぶ、それは関係ない人まで
暴れ散らかし、警察沙汰になる事も、正直ありました。
これは、嫌な思い出といいましょうか...、
何と言えばいいのやら。言葉を糸を手繰り寄せても、
語彙という魚1匹釣れやしません。
1つ間違い無いのは、この人生を恨んでいます。
今現在も、です。
壮年の男性の僕は、ひとまず椅子に腰かけた。
そしてぼーっと時計の秒針を目で追った。
呆けているといっても良かった。少年の時の孤独さと、
現状も同じく孤独と向き合っている事が重なってしまったからだ。
『きっと先の未来、あなたに迷惑をかけてしまいます。』
その言葉は、"あなた"どころか他人にすら迷惑をかける様に
なってしまっていた。
年代が進めば進むほど、『区別』される事が強いられる時代になった。
その区別によって、僕は"双極性障害"と認定された。
時にはやる気に満ち溢れてお金を湯水のように使う、
あるいは鬱となり起きる事すら自分でできない。
かろうじて、それでも残っていた人間関係も
『リセット症候群』という"区別"された行動を
起こしてすっ飛ばしてしまう。
「...もう、いいよ、"自分"で連絡先を途絶えさせたんだ、
もう掘り返したくもないんだよ」
しみったれた声で嘆き言葉を吐き出していく。
また机に散らばった過去のイラストを
ドッシャンガランと突き飛ばす。
片付けてくれる"他人"も、居ないというのに。
少年が行った人読み通り、的を得ていて、
今の今まで、何も変わらなかったのだ。
...しかし。
『ずっと考えました。そして決めました。
ボクはあなたに"お願い"があ(ります:予測)...』
これは一体、どういう事なのだろうか?
今までの話の流れで、その優れた感受性を持ってして
自分に対して行った"人読み"をした事は分かった。
誰への頼り事も非常に恐れていた少年が、
未来の"僕"に頼りたかった事…。
もう何十年も前の事など分からない。なので、
この当時に何を書いたかなど、覚えてはいない。
しかし、こうして「欠片」が同じ部屋からでてきているのだから
残りの欠片が同じ場所にあると十分に考えらえる。
僕はこう考えた。
「この少年期の頼りを聞いてあげる事で、
"初めて頼ってもらえた"という自分の実績が
できるんじゃないか」、と。
まだ憶測の域にすぎないが、
眼つきのわるい少年はそこまで透視していたのではだろうか?
と、まぁ色々考えたが、僕は基本的に暇である。
またゆったりと椅子から立ち、背筋を一度おおきく伸ばした後、
欠片を探し始めるのであった。
(2/3部:にか)