自叙伝:「とある眼つきのわるい少年」下巻

記事
コラム
――はじめに――
この投稿は、2025年11月22日・23日・24日の3日間にわたって連載する、
小説風の自叙伝です。
もし興味を持っていただけた方は、ぜひ第1部(11/22分)から
お読みください。
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→下巻(ここ)

「とある眼つきのわるい少年の手記」(3/3部)筆者:にか

 12月31日、午後22時18分。

実はあれから4日経過していた。

さて、僕は。年末を迎える為にいつも通り
片付けをしていた。

色々あの後も探したのだけど。しかし、全く見つからない。
歳を重ねる事で直感も衰えてしまい、
"欠片"集めの目星がつけられずにいた。

そもそも、破かれた紙という存在に"価値"はない。
いつどのタイミングで捨ててもおかしくない。
割と早い段階でそう思えてしまった自分が居た。

それに、もともと片付けていた途中で見つけた品物なので
範囲も狭く、調べ尽くしてしまったのだった。

少年の僕は、一体何を伝えたかったのだろうか。
痛々しい過去を思い出しただけで、ぽっかりと
心に穴が開いてしまい、半分呆然として整理整頓をする。

「お...これは...。」

整頓中、ひんやり冷たい感覚が手に伝わってきた。
またも懐かしい物がクローゼットから出てきた。

箱売りしてるお菓子の箱の様な、
それより一回り大きな、情けない金庫である。

鍵は無いが、そもそも鍵などかけていない。
父が自己破産をした上で、母が「お金を大事に」と
教育するために"財布"よりも先に買い与えられたモノである。

こんなモノを先に渡されても、
これを持ち歩くわけでもあるまい。
子どもながら呆れた覚えのある、
そんな情けない金庫だった。

古すぎて金具もすり減っているのだろうか、
持ち上げただけでフタが開いてしまう。
これではただのビックリ箱である。


ただ、文字通り僕はこの金庫にビックリさせられる。

「こんな所に、紛れているとはねぇ...。」
そこには、手記の欠片と"種"が入っていたのだ。


 僕は急いで金庫を持って机に置き、
欠片を重ね合わせてみた。

どうやらこれが最後の手記の欠片みたいだ。
これで、少年からの言葉が"完成"する。

興味津々で、頭のアドレナリンが出ているのが
分かりつつも、深呼吸して文面を目で追った。

―、改めて文面を大事な部分だけ読み直す。

· · • • • ✤ • • • · ·· · • • • ✤ • • • · ·· · • • • ✤ • • • · ·

『ボクは名前をおぼえてもらえません。そのかわり、こう呼ばれます。
"眼つきのわるい少年"と呼ばれています。

ボクは他人(ヒト)と話すことができません。

なぜかは知らない、見るだけで他人の気持ちを
"のぞけてしまう"そうです。

眼は、意図せず鋭くなってました。

「人が嫌だと思う事はやめなさい」、
なので、他人と"話す"ことを言葉通りやめました。

ボクは今日から「我慢」することをケツイしました。

ボクは、いつも1人です。
今日も、明日も、おそらく"未来"も。

だからどうか言葉をきいてください。
あなたに迷惑をかけてしまいます。

ボクは「我慢」をする事を決めましたが、
もう分かります。身体に変化はすでに起こっているのです。

ボクの事を分かってもらうように、他人に伝える方法が
わかりません。血の繋がった"親"にも。

遠い未来、気持ちは、ダムの"決壊"のように
大きなチカラになるでしょう。

悲しい事だけど、これを"避ける事"はできそうもありません。

ずっと考えました。そして決めました。

ボクはあなたに"お願い"がある。』


―さて、ここからが最後の文面だ。

『笑ってください。これがボクのお願いなんです。』

「え...」

僕の"時"が、一瞬止まったように思えた。
壁時計の秒針が奏でるメトロノームも聞こえない。

思考の深く、より奥深くに誘われてしまった。

"この"状況で、この言葉をお願いされたら、
他の人はどういう反応を示すだろうか。

こんな無茶苦茶な人生を送ってきて、
安らぎどころか時間すら感じる感覚が狂ってしまった。

とはいえ、笑った事が無いかと言われれば
そんな事は決してない。

「なんだ?また何か企んでいるのか?。」
ただ、ただ、笑っているだけなのに。

その慣れない引き攣った笑いについて、
他人からの印象は悪い。残念ながら。

そんな人間に。

「笑う」という事はできない。

なので、僕は思考停止してしまった。


「...それで、笑ってください...の後、と。」

少し間を置き、改めて文面を読んでいった。

『こうしましょう。ボクは、あなたを信頼します、
だからあなたもボクを信頼してください。

読んだ時点で成立です。やりましたね!

これで1つ"成功"できたのです。
物事が思った通りにできる、それって嬉しいですよね。

その"気持ち"が大事だとボクは思います!

お願いです..それを素直に受け止めて..。
笑えるはずなんです、ボクは笑ったりもできる、
そんな人物でもあるはずです!

きっと、できます。気持ちを積み重ねていった、あなたなら。

そんな未来であって欲しい、そう"信じる"。

その信じる心で"我慢"の日々をボクは続けます。

このバトンを。あなたへ。届いて…。』

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本当にこれを僕が幼い頃に書いたのだろうか。
そういう部分は特段、興味は持たなかった。

それよりも僕の直感は"心配"であった。過去と分かりつつも、
この少年こそ、大丈夫だったのだろうか。
こんなに心細くて、とても心憂い気持ちになっていて..。


そう、そういう気持ちになれている自分を
ここで、"再認識"した。


少し時間が経ち、落ち着いた気持ちに戻る事が
できたので、お得意の情報整頓をしていく。

修復された手記からまず分かる事は、
これは少年時代から、大人になった僕へ宛てた物である事。
戸惑い彷徨う僕宛ての、助言であったに違いない。

それ程までに洗練して、落ち着き払い、
僕の頭で処理・理解はできた。できたものの、浮かんだ言葉は、


「ごめん...。」


としか出てこなかった。

語った通りの散々な人生だった。
その負い目から逃げ切る人生。

気づけば"壮年"というに相応しい
歳まで時間は無惨にも過ぎてしまった。

そもそも何故こんな破かれてしまったのか。

金庫の中に入っている以上、少年時代では
成し遂げる事ができないのは、時系列で明白だった。

「もう、しっかり読むには、遅すぎた…。」

少年に向かって、見てくれと言わんばかりに立ち鏡の前に立つ。

すこし前傾姿勢となった背筋、腕も少し細くなった気がする。
髪にもコシがなくなってるような、顔も少し、相応たるんだ。

この姿で、少年に合わせる"顔"も無い。

少しの間、まじまじと鏡を見る。
自分の顔など、あまり意識していなかったが..。

このキッカケがあったからこそ、思う事が1つあった。

「...いや僕も、もう40歳近くを迎えてさぁ、

...心なしか、"眼モト"が丸くはなってるぞ。」

僕のその人生経験は、他人の振る舞いにより
人読みの能力も合わせて、心身ともに削られていた。

しかし、人読みの能力は失われたのでなく、
"優しさ"への昇華を果たしていたのだ。

周囲を慄かせるその"眼つきのわるさ"は失われ、
遅咲きの"花"とはなったが、笑う"準備"ができている。

そう本心から、今回の一件で思う事ができたのだ。

僕はセロハンテープで丁寧に手記を繋ぎとめる。
そのビリリという剥がれる音、
ストンストンと貼っていく決まりきった工程作業、
その静かに奏でる作業音の中、静かに呟く。

「我慢のケツイ、それは"自制"のケツイに変わっているよ。」

修復された手記を通して、深淵の底にいる
少年へ手を伸ばすような、優しい声でそう呟いた。

壮年となるまで年を重ねた事で、ようやく返答できたワケだ。
我慢を自制へと置き換える事が、やっと、できている。

少年の想いは、数十年経って今、ようやく"実った"のだ。

この手記の裏面には、大きく、そして
幼さの残る字体で「きぼうのタネ」と書いてあった。

その希望が育つための土を耕すのに十数年経った。
しかしその豊富な養分を取り込んだ土は、
きっと鮮やかな花を咲かせる土台となるでしょう。

ふとした瞬間、昔のある記憶が蘇った。

この手記を破り散らかした人物。


他でもない、"僕"自身である事を思い出した。

双極性障害に散々振り回されていた頃の僕では、
この手紙の意味、そして受け入れる忍耐も無かった...。

あるいは躁状態で「知らん」の一言で破ったのか。
もう流石に正確な理由は分からない。

それでも"僕"であったからこそ、捨てる事までは
どうやら躊躇ってできなかったようだ。

時として謎とは、不可解なほど迷宮であったり、
こういった在り来たりな理由で解決してしまうものである。
大概は、明白なものなのだ。

故に、奥ゆかしくて面白いと、僕は思う。


ひとまず自信を持って言える事が1つある。

「この少年に手を差し伸べるべき人物は、
他の誰でもない僕であって良かったんだな。」

この手記に対しての時効がいつまでの約束であったのか、
そんなものは、もはや分からないが少年が縋るように
想った一件は、今の"僕"となり、ようやく事件が"解決"したと、
そう思えるように成長した事を改めて感じた。

「残してくれて、ありがとう。
着実ではあるが、"笑う"というお願い、手に届きそうだよ。」

誰も確認はできないが、その呟く姿は
きっと誰から見ても、明るく見えたのであろう。

丁寧に張り合わせた手記を、特に考えも無しに
あの情けない金庫に畳んで片付けた。
きちんと整理ができた事を、この金庫にまた"守って"もらう。

そして同時に"種"を取り出し、虫メガネで見る。
それほど花に詳しくないので正体は結局分からなかった。

確かめる手段は簡単。育ててみればいいという事。
単にアサガオかもしれない、漫画・犬夜叉の影響で
桔梗を育てていたから、その種かもしれない。

現時点で花の種類は、正直な所どうでも良かった。

この「希望の"種"」を育てるという楽しみを、
少年は与えてくれたのだから。

さて、この種はどんな花を"実"らせるのかな?

寒い冬の夜更けというのに、何を考えているのか、
この男性は鉢植えをいじる。

時間は1月1日、0時37分になろうとしている。

いつの間にかもう年を越えて、新たな年が始まっている。

壮年の男性は、この希望の"種"と共に、新たなスタートを迎える。

どんな理由があろうとも、朝日は昇り、月は出て、
この様に年が明けるのだ。
(3/3部:にか)

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あとがき:
格好よく"あとがき"を書いてみたいものですが、もう燃料切れです。
...なので伝えたい事だけ。

今回の物語は僕と言う物の紹介を小説風にアレンジしました。
そのまま伝えるには、あまりにも悲愴であるため、どういう形で
お伝えすれば「面白い」かを考えて、感情や共感されるように
お見せする事を意識しました。

その答えが、今回の様な伏線を追っていく小説という表現でした。
いかがだったかどうかは胸のうちにしまってくださって結構です。

僕は少しでも、この読み物をエンタメのように楽しんでくださる人が
居てくれたら、本望かなと思います。
拝読いただきありがとう御座いました。...うーん、疲れた。
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