――はじめに――
この投稿は、2025年11月22日・23日・24日の3日間にわたって
連載する、小説風の自叙伝です。
もし興味を持っていただけた方は、ぜひ上巻(11/22分)から
お読みください。
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→下巻
「とある眼つきのわるい少年の手記」(1/3部)
筆者:にか
12月27日、午後22時18分。壮年の男性は相変わらず部屋の
整理をしていた。
この部屋にはうんざりする程、情報が書かれた書類があり、
男性はその中で"決着"がついた書類を「時効処理」するのである。
事件の時効が成立した証拠品を処分するように。
この男性だが、「双極性障害」という精神の病を患っている。
自身の波長と実際の行動の比較しながら、適切な薬を
飲まなければならない。
その為、このように日々の出来事を書類化してグラフに落とし込み、
"未来予知"を常にしている。
そして、"ミス"をする極めて人間らしさのある完璧主義者であった。
この正確には今も悩みをかかえていた。
対策するために行動をすればするほどミスや失敗を気にしてしまう、
そんなジレンマを抱えており、自身の評価をややこしい人間だと
感じている。
12月27日、もうすぐ大晦日。
恐らく暖かな家庭は大晦日に備えてドタバタと大掃除をするだろう。
しかし、この壮年の男性には関係ない。
精神の障害により季節も、あるいは"時"の流れすらまともに
感じさせてもらえないのだ。
「この件か。...もういいだろう、連絡先を途絶えさせて
しまったのだ、掘り返す事はあるまい」
しみったれた様子で書類のキチンと処理していく。
―、その時。
かなり年季の入った1つの..."おそらく"紙だった物がひらりと落ちる。
おそらくと思ったのは、最近のコピー機で出す用紙より厚く、
例えるならばスケッチブックの様などっしりとした厚みを
感じられたからだ。
一部分で破れている、普段このような紙に記録はしなかったため、
壮年の男性にとって見慣れない代物だった。
その紙には、このように始まっていた。
『あなたはいつかこれを見つけるはずです。どうか言葉を
きいてください。
ボクは名前をおぼえてもらえません。そのかわり、こう呼ばれます。
"眼つきのわるい少年"と呼ばれています。』
壮年の男性は手を止め、この文面をじっくり読んでいく―。
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『ボクは他人(ヒト)と話すことができません。
喋ることはできます。話そうとすると、気持ちわるがられます。
気味がわるい、と。
なぜかは知らないけど、見るだけで他人の気持ちや
少しの考えが分かってしまい、それを話すと
"のぞかれてる"気分になるのだそうです。
その時の眼は、意図せず"鋭く"なってしまっていました。
...いえ、もともとそういう顔なのだとボクは思いますけど。
趣味や、興味、関心が無い結果、
「眼つきの悪い男」とよばれてます。
「人が嫌だと思う事はやめなさい」、とお母さんが言っていました。
なので、他人と"話す"ことを言葉通りやめました。
今日も教室の隅で、スケッチブックに絵を描いています。
先生が「みんなと遊びましょう」と声をかけていたようですが、
1つの事にしか集中できないので、ボクには聞こえません。
ボクは今日から「我慢」することをケツイしました。
ボクは、いつも1人です。今日も、明日も、おそらく"未来"も。
幼いながらもボクには、あなたがわかります。
だからどうか言葉をき...』
恐らくスケッチブックだったものはここで破れている。
壮年の男性は椅子に座り、考える。
「誰かの相談をメモした物だろうか。古すぎて何とも..。
...、それにしても"これは誰のモノで、誰に当てたモノ"だろうか?」
壮年の男性は静まり返り、"時効処理"したはずの、
心の中の、深淵のアーカイブにそっと手を伸ばしていく。
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―、その瞬間。
壮年の男性は頭が真っ白になってしまった。
苦手な食べ物を意図せず口にしてしまった、
"拒絶反応"の様に。
言語化が難しいが、その触れようとした"アーカイブ"は
壮年の男性にとって、とても”都合の悪い"ものだった。
何も情報は分からない、ただ頭が「その事に触れるな」と
信号を神経を通じて、危険だとサインする。
壮年の男性は、何か似て通じる気配を手記から感じていた。
言い換えるのなら、それはまるで自分自身の"影"を
見つめているようなものだったのだ。
少し前の自分だったら裁判で異議を追求するかのように
ガンッと机を叩き、放心して、
「馬鹿馬鹿しいことだ」と一層していただろう。
この男性はあまり愉快と言える経験については、乏しかった。
だかこの男性、今は"壮年"と場数と知識に富んでいた。
深く深呼吸をする。改めて、この破片、"序章"についての
アーカイブに触れて、自分自身の呼吸と落ち着きに
歩調を合わせながら、じっくりとその証拠と照合する。
男性は、真相は何となしに予測する事はできた。
だがこの男性、そのこれまでの経験豊富さにて、今は結論は急がない。
「"どうして"僕のことが、こう書かれてるんだ…?」
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信頼のおける親近感が文面から伝わる。
そして、この紙の触り心地を身体は覚えている。
同時に、懐かしさすらこみ上げる気持ちに包まれている。
しかしまだ謎はある。
何故なら、この紙が"破れている"からだ。
この事から、スケッチブックには続きがあることが明白だ。
物事を判断するには全体を俯瞰的にみて、捉える事が肝心。
今のままでは「不安」しか残らない。
しかしこの"目つきのわるい少年"は不安を煽ろうとして
誰かにあてたものなのだろうか?
結論は急いではいけない。
ただの悪ふざけという考えも、もちろん頭に浮かんだ。
しかし同時に、男性は壮年になるにつれて、
"優しさ"という概念が積み重なっていた。
「今、この少年に手を差し伸べられるのは"自分"しか居ない」
壮年の男性は自分の作業を止めて、
あたりをつけてこの"手記"の捜索を始めるのであった。
(1/3部:つづく:にか)