初めての転職活動は、まるで濃霧の中を手探りで歩くようなものです。目の前にあるはずの「次の扉」を開けたいのに、体が動かない。情報収集や準備はしているのに、なぜか応募のボタンが押せない。私は過去、人材育成や採用の現場にいたにもかかわらず、自身の初めての転職では、まさにこの「立ち尽くす」ループにハマりました。
今回は、私が5年近く在籍した組織から、SaaSスタートアップでの事業や組織を作っていく経験へ移行するまでの、心の葛藤と、その重い腰を上げた「出口戦略」のディテールを、深く掘り下げていきます。
1.組織への「責任感」が足枷になるとき
私の最初のキャリアチェンジは、技術的な困難よりも、「感情的な重さ」が圧倒的でした。
学生時代のサッカー部から始まり、5年近く在籍した人材系ベンチャーへ。これまで私は、自分の意思で組織を「辞める」という経験がありませんでした。そのため、慣れ親しんだ組織を離れること自体が、人生で初めての大きな決断であり、腰が重くなる最大の原因でした。
さらに、私を動けなくさせていたのは、会社への「責任感」からくる「申し訳なさ」です。札幌拠点の立ち上げなど、多くの経験をさせてもらった組織を自分の都合で離れることへの罪悪感が、無意識のうちに次のアクションへのブレーキになっていました。「新しい挑戦をしたい」という意欲と、「今の組織への感謝と申し訳なさ」が激しくせめぎ合い、「動けない」という状態を作り出していたのです。
2.「動けない自分」を動かしたのは、手段の多様化
この深い罪悪感と心のブレーキを外すため、私が試みたのは、「一つの道に賭ける」というプレッシャーを分散させることでした。
まずは、自分の市場価値を客観視するために、転職エージェントを利用しました。彼らからのフィードバックは、不安で膨らみがちだった自己評価を冷静な位置に戻してくれました。
次に、視野を広げるために、スカウト媒体にプロフィールを登録しました。これにより、自分では思いつかなかったような企業からのアプローチがあり、次のキャリアに対するワクワク感を刺激してくれました。
そして、最も重要な出口戦略は、企業への積極的な自己応募です。能動的にアクションを起こすことで、「転職活動をしている」という実感を持ち、後戻りしにくい状況を作りました。
これらの転職エージェント、スカウト媒体、そして自己応募といった幅広い選択肢があることで、「もしこの一つがうまくいかなくても、まだ他の可能性が残っている」という心の底からの安心感を覚えることができました。この安心感こそが、私の重い腰を動かす、確かなきっかけとなりました。
3.立ち止まった時間は、決意を固める「礎」
人材系ベンチャーからSaaSスタートアップへ。業界も職種も大きく変える決断は、簡単な道のりではありませんでした。しかし、この一連の「動けない」と悩んだ時間があったからこそ、新しい環境で事業や組織を作っていくという経験に、全力で飛び込むことができたのだと感じています。
組織を離れる決断は、大きな勇気を伴います。もし今、初めての転職で現職を抜け出せずにいる方がいらしたら、それは決して「逃げ」ではなく、次のキャリアを真剣に、慎重に選ぼうとしている証拠です。どうかご自身を責めず、「安心」を生むために、まずは様々な手段で次の道筋を探ってみてはいかがでしょうか。