1.赤字事業は撤退すべきか
企業ではよく、次のような議論が行われます。
「この事業は赤字だから撤退すべきではないか。」
一見すると合理的に聞こえます。
しかし実務では、赤字という理由だけで撤退を決めることはできません。
なぜなら企業は通常、
複数の事業を組み合わせて利益を生み出しているからです。
ここでは、A事業とB事業の2つを持つ会社を例に考えてみましょう。
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2.A事業とB事業
この会社の損益は次のようになっています。
会社全体の固定費は900万円とします。
すると会社全体の限界利益1,000万円 – 固定費900万円 = 営業利益100万円
会社全体では黒字です。
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3.B事業は赤字
ここでB事業の個別損益を見てみます。
B事業に配賦されている固定費が400万円だとすると次のようになります。
つまりB事業は赤字です。
このとき社内では
「B事業は赤字だから撤退すべきだ」
という意見が出てくるかもしれません。
しかしここで重要なのは、
B事業は400万円の限界利益を生んでいるという事実です。
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4.撤退するとどうなるか
もしB事業から撤退するとどうなるでしょうか。
B事業の売上と変動費はなくなります。
しかし固定費の多くはすぐには消えません。
例えば
• 本社人件費
• 工場設備
• 管理部門費用
などです。
つまり撤退すると300万円の限界利益が消えることになります。
結果として会社全体の利益は400万円悪化し、営業赤字に転落します。
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5.新規事業Cという選択肢
ここで会社が、新しい事業Cを検討しているとします。
C事業は
• 新しい設備投資が必要
• しかし限界利益はB事業より大きい
という特徴があります。
例えば次のような構造です。
C事業はB事業よりも400万円多い限界利益を生み出します。
ここだけを見ると
「B事業をやめてC事業にすればよい」という結論になりそうです。
しかし話はそれほど単純ではありません。
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設備投資が必要
C事業を始めるには設備投資1,000万円が必要だとします。
この設備の減価償却期間を10年とすると、
年間の減価償却費は100万円です(償却方法が定額の場合)。
さらに本社費などの固定費配賦が400万円ありますので、
B事業とC事業の損益比較は次のようになります。
この場合、B事業をC事業に置き換えると
会社全体の利益は400万円改善します。
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しかしもう一つ考えることがある
ここで忘れてはいけないのが投資回収です。
C事業の設備投資は1,000万円です。
B事業からC事業へ切り替えることで
増える利益は400万円です。
この場合、投資回収期間は約2.5年になります。
もし会社の投資基準が「5年以内に回収」であれば、この投資は合理的です。
しかし「3年以内」であれば、判断は微妙になります。
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6.撤退の本当の条件
ここまでを整理すると、
B事業から撤退する条件は
単に赤字であることではありません。
重要なのは次の3つです。
• B事業の限界利益を上回る事業があるか
• 新規事業の投資回収が合理的か
• 会社全体の利益構造が改善するか
この条件がそろって初めて撤退という選択が合理的になるのです。
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7.最後に
赤字事業という言葉は強いインパクトがあります。
しかし経営判断では赤字かどうかよりも
資源をどこに配分するかが重要です。
事業撤退とは単なるコスト削減ではありません。
資源をより収益性の高い事業へ移すという戦略判断なのです。
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