【75】「友達に、私より波乱万丈な人生の人はいない!っていっつも言って来る子がいて、」

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「友達に、私より波乱万丈な人生の人はいない!っていっつも言って来る子がいて、」

はい。

「いっつも私のせいにされて来た、親が自殺して死んだ、そんなの私もだし、うるさいのなんのって。もうウザすぎて友達やめようか本気で考えてます。」

同情されたくて、そうなってしまってるのかも知れませんね。

「自分だけが特別だと思ってるの?って言っても、そうかなーって必ず言い返して来るんですよ?。○○○ちゃんより不幸な人もいるんじゃない?って言っても、だれ?どこにいる?って、ほんとうるさいんです。」

多分、周りが見えてないんだと思います。

「見えてないし聞かないです。」

私も、ある時から深夜にやってるドキュメントを見まくったり、アンビリバボーとかも好きでよく見てましたけど、自分より苦しんでる人なんていくらでもいますから、

「私もアンビリバボー好きです。あと仰天ニュース(笑)」

うん。そういうのはあまり見てない方なんですかね。

「その子※省略の大ファンで、そのDVDばかり見てるんですよ。スゴイですよ。〇00本あるんですって。」

なるほど。

「自分の世界に入り込んじゃってるみたいで、なに言っても聞かないんです。」

うん。

「不幸不幸って、男に、お前ほど不幸な奴はいないって言われたらしくて、まーた言って来て、いつも言って来て、もう、うるさくてうるさくて、ノイローゼになりそうです。」

精神病の方ですか?

「はい。」

何の病です?

「双極性障害って言ってました。」

そうですか。

「双極性障害の人ってみんなあんなにウザいんですか?」

いや、そんなことはないですけど、躁状態の時は、疎ましいと思われる方はいますけど、

「それだきっと。」

他にも何か不幸だ不幸だっていう、お前ほどと言われた理由って何かあるんですかね。

「・・う~ん、私が聞いたのは、親がアル中で、暴力されてたって、男にお金を※三桁万円騙し取られた、結婚詐欺にも遭ったって言ってましたね。」

他にはありますか?

「・・あったかな・・・あ、親が自殺してます。」

2人ともですか?

「ううん。母親だけ。私と一緒。」

他には。

「他に・・細かいのはあるけど、そんなことくらいでいちいち言うなってことばかりだから。」

OKです。

「はい。」

私も、小さい頃から不幸な、不運なことばかり起きて、良くなりそうになる度にまた不幸なことが起きたり、私自身も呪われているんじゃないかとか、悪い霊にでも憑りつかれてるんじゃないかって思ってたくらいで、

「私もそうなんです。お祓いもしたし御札も買った。」

うん。姉にも、なんで優介ばかりに悪いことが起きるのかって心配されて、占い師とか霊媒師とかに何件も相談に行ってたくらいなので、周りの目から見ても、そう思われるなんて事はあると思います。

「本に書かれてたことですね。」

はい。実際に、その方も、○○さんもそうですけど、不幸なことが一杯起きているんです。

「はい。」

そこに精神病も合わさると、なんで自分だけが、なんで自分ばかりに不幸なことが起き続けるのかって深く考えるようになってしまって、重く考えるようになってしまって、

「はい。」

私も、かなり長い間、そう思っては、そうじゃないと、でもまたそう思っては、そうじゃないと、でも悪夢が酷すぎてドリームキャッチャーを買ったり、でも、自分の問題とも向き合い続けたり、

「はい。」

あと、先ほど言ったドキュメントを見たりして、苦しんでいるのは自分だけじゃないと、私よりも酷い経験を、辛い経験をされてる方達なんて一杯いると、

「うん。」

自分だけが特別不幸な訳じゃないんだと、むしろ幸運だったと、いや俺ってどれだけ助けられているんだって、めちゃくちゃ運が良いじゃないかとそう思えるようなって、

「うん。」

不幸な自分に特別感を持つことでしか生きられない状態の人もいますから、とりあえずその理解だけは持って頂いて、あと、その方から離れて下さい。

「・・やっぱ離れたほうが良いですよね。」

そうですね。今の○○さんにとっては、病の足を引っ張ってしまう、そんな存在になっているほどのストレスを感じたので、最低でも、付き合うのはご自身の病を治してからにしてほしいです。

「・・なんかね、見捨てるような、可哀想だなって思えちゃって・・」

それは、その心は良い心なんですけど、その方が病気を治そうと思えるのかどうかが大事で、まだ、その状態もタイミングも来てないですから、

「カウンセリングをやらせたほうが良いですよね。」

やろうと思うのかどうかも、その方の人生の成り行きや、タイミングがあるので、無理にやらせたところで意味を成さないんです。

「うん・・その子、私くらいしか友達いないから、私いなくなったら死んじゃわないかなって、そこも心配で。」

その心もとても良い心なんですけど、まずは○○さんが病気を治すことが先決で、ちなみに、その方とはどれくらいの付き合いなんですか?

「う~~ん、どうだろ。そんな頻繁に話してもないけど、去年の12月に、だから、1ヶ月、5ヶ月、半年くらいかな。」

半年経って、その方は良くなりました?

「なってないですよ。ODもやめなよって言ってもやめないし、※省略、死にかけた事ありますからね。何日も返信なくてどれだけ心配したか。」

つまり、○○さんが居たところでなんです。

「・・あ・・」

完全に断ち切って下さいとは言いませんけど、付かず離れずで、あと先ほど言った、不幸な自分に特別感を持ってないと生きられない人もいるんだっていう、そういう時期もあるんだっていう理解を持って欲しいです。

「それは、分かるけど・・私から連絡することはないですよ。いつもあっちから電話掛かって来るから。」

でも、電話をしてしまうと、凄いストレスになってますよね?

「はい。」

なので、今は、通話だけでも避けて下さい。

「優介さんのとこ紹介しても良いですか?」

私のところは紹介はお断りしてるんです。

「うん。知ってたけど聞いてみました。」

そうですね、私ここで相談受けてるんだーくらいなら良いですよ。

「それは良いですか。」

でも、ここで受けたほうがいいとか、カウンセリングを受けたほうがいいとかは言わないで下さい。

「ダメなの?」

誰かに薦められることを酷く嫌う方が多いですから、飽く迄、その方が私の※省略なり本を読んで、自分の病を治したい、自分を変えたいと思うのかどうかが大事なので、特に薬に頼っている方であると、治療意欲が芽生えるのも難しいですから、宜しくお願いします。

「うん。言ってもたぶん来ないけど(笑)」

そうですか。

「だって、なに言っても聞き入れませんもん(笑)」

うん。どちらにしても治療意欲を持った状態でないと意味がないので、一言だけで良いです。

「そうします。」

あとは、何を言って来ても、付かず離れずで。

「はい。電話拒否したら鬼電されそう(笑)」

あぁ

「チャットもスゴイことなりそう。」

うん。

「あ、そうなったら、もうあんたとは付き合ってらんないって、突き放すのは、・・大丈夫かな・・」

そこで、私はカウンセリングやって自分を変えようとしてるって、一言言ってあげると良いかもしれません。

「あ、それでいこ。」

⇒電話を受け取らなくなったら、電話が鳴り止まなくなった
⇒理由をチャットで説明しても、どうして、なんでと、自虐も止まらなくなった
⇒その中で、○○○ちゃんだけが苦しんでるんじゃない、私は病気を治そうとカウンセリングを受けてると言ったという
⇒カウンセリングを受けても治らない、やったことある、○○ちゃんも私を捨てるんだ、仲良くするって言ったのに嘘つくんだと、今までの不平不満や、性格の悪口などの攻撃が始まったという
⇒かなりの遣り取りをしたあと、腹が立ちすぎて電話したと、そこでも口論になり、泣き落としや、謝っても来たそうですが、その後の執拗なチャットにストレスを感じ、もうあんたの友達をやめると、ブロックしたと聞く

今迄、どれだけストレスになっていたのかと、ここで気付いたそうですが、ここまでされても、ブロックをする時も躊躇したそうです。

思いやりの心も、自分が病んでしまっていれば、また、相手も病んでいれば、長続きはせず、悲しい結末を迎えます。

どこにも救いがなく、どこにも誰にも理解がなく、心を患った者同士だからこそ、相手の苦しみが分かり、お互いが癒される部分もあったと思います。

ですが、心を患った者同士で慰め合い、支え合い、精神病も治り、幸せな人生を送ったという人を私は知りません。

ある方は、結婚まで行き、職にも就き、初めは楽しく幸せで満たされてもいたそうですが、次第に仕事でのストレスを抱えるようになり、喧嘩も増えて行き、お互いが自分の悩みや不安や苦しみも何も解決しておらず、薬に頼り切った状態で、関係も悪化し、ですが、子供を身籠っていたことが分かり、泣きながら喜んでくれたそうですが、その約一ヶ月後に、夫に自殺で先立たれたという方がいます。

その他にも、様々なことを今までに聞いて来ましたが、ブログのほうに、心の病を患っている者同士でのお付き合いの一例を掲載しているので、お読み頂けたらと思います。

こういった悲しい結末を迎えない為にも、先ずは、自分から病を治すことが先決になります。

私は、心の病は、心の骨折と位置付けています。

体の骨折と比例させることで、心の病の重さを可視化しています。

仮に、片腕の骨折程度の、心の骨折であったとしても、人は不自由さを感じたり、病院や他者のサポートが必要になる場合があります。

では、両腕の心の骨折だったらどうでしょうか。両手両足の心の骨折であったらどうでしょうか。全身の複雑骨折と言えるほどの、心の骨折であったらどうでしょうか。

薬でどれだけ痛みを誤魔化そうとも、心の骨折の修復、休息、折れた原因の解決策、リハビリ、それらが合わされなければ、いつ何時でも、また心の骨折は繰り返されます。

お互いがその状態であれば、幸せになるというのは、まず不可能なのです。

この意味を自覚し、薬に頼り切ることなく、減薬断薬ありきでの治療を受けて頂きたいです。

まだ、薬を一生飲まなければならないという常識が蔓延しています。

このふざけた常識が、非常識に変わらない限り、今後も薬での被害者を増やし続けるだけです。

極論を言えば、薬を使わなくても精神病は治ります。

ただ、カウンセリングを受けなければ、病は悪化します。

薬を使いながら、カウンセリングを受け、減薬断薬回復を目指すというのが、一般的な流れ、これが常識となる日を待ち望んでいます。

もっと言えば、薬を使うことなく、初期症状からカウンセリングを受け、回復を目指すというのが理想の形でもあると思っております。

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【歴史】 抗うつ薬が有益よりも有害であるかどうかの進化論的分析
(心理学フロンティア抜粋)

抗うつ薬は、現在の大うつ病性障害の診断基準を満たす患者にとって第一選択の治療薬です。ほとんどの抗うつ薬は、植物、動物、真菌に存在する進化の古い生化学物質である神経伝達物質セロトニンの制御機構を阻害するように設計されています。感情、発達、神経細胞の成長と死、血小板の活性化と凝固プロセス、注意、電解質バランス、生殖など、多くの適応プロセスはセロトニンによって制御されるように進化しました。進化医学の原則として、進化した適応が阻害されると生物学的機能が低下します。セロトニンは多くの適応プロセスを制御しているため、抗うつ薬は多くの健康への悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、抗うつ薬はうつ病の症状を軽減する効果はある程度ありますが、服用を中止すると、脳が将来のエピソードに対する感受性を高めます。精神医学において広く信じられていることとは反対に、抗うつ薬が神経新生を促進すると主張する研究は、いずれも神経新生と神経細胞死を区別できない方法を用いているという欠陥があります。実際、抗うつ薬は神経細胞に損傷を与え、成熟した神経細胞を未熟な状態に戻します。この両方が、抗うつ薬が神経細胞にアポトーシス(プログラム死)を引き起こす理由を説明できるかもしれません。抗うつ薬はまた、発達障害を引き起こす可能性があり、性生活や恋愛生活に悪影響を及ぼし、高齢者においては低ナトリウム血症(血漿中のナトリウム濃度が低い状態)、出血、脳卒中、死亡のリスクを高めます。本レビューは、抗うつ薬は一般的にセロトニンによって制御される多くの適応プロセスを阻害することで、有益性よりも有害性の方が大きいという結論を支持しています。しかしながら、がんや脳卒中からの回復など、抗うつ薬の使用が正当化される特定の病態が存在する可能性があります。私たちは、インフォームド・コンセントの実施方法の見直しと、抗うつ薬の処方におけるより慎重な配慮が正当であると結論付けます。

・導入

セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、または5-HT)は、少なくとも10億年前に進化した古代の化学物質であり、真菌、植物、動物に存在します(Azmitia, 2007 )。セロトニンはモノアミンと呼ばれる生化学物質のグループに属し、ノルエピネフリン(NE)やドーパミン(DA)も同様です。細胞分化、体温、血液凝固、消化と腸の動き、インスリン、電解質バランス、アストロサイトの活動、神経細胞のアポトーシス、脳血流、注意、攻撃性、気分、生殖機能、交尾行動など、多くの適応プロセスがセロトニンによって制御されるように進化しました(Johnson and Thunhorst, 1997 ; Azmitia, 2001、2007、2010 ; Jimenez -Trejo et al., 2007 ; Fonseca et al., 2009 ; Paulmann et al., 2009)。

セロトニン系に作用する薬剤は、最も広く処方されている精神科薬剤の一つです。うつ病は、人々が助けを求める最も一般的な精神疾患であり(Pincus et al., 1999)、その症状は少なくとも部分的にはセロトニンとノルエピネフリンによって制御されます(Heisler et al., 1998 ; Mayorga et al. , 2001 ; Santarelli et al., 2003 ; Cryan et al., 2004 ; Amat et al., 2005 , 2006)。成人の約6.6%、つまり米国の成人人口の約1,300万人が、1年以内に現在の大うつ病性障害(MDD)の基準を満たすうつ病エピソードを経験すると推定されています(Kessler et al., 2007)。抗うつ薬はうつ病の治療に最も一般的に処方される薬であり(Olfson et al., 2002)、これらの薬のほとんどはセロトニンとノルエピネフリンを標的としていますが、ドーパミンもある程度影響を受けます(Stahl, 2008 )。一般的に処方される抗うつ薬の種類を表1に示します。抗うつ薬は、亜臨床的うつ病のほか、気分変調症、双極性うつ病、統合失調感情障害、精神病後うつ病、全般性不安障害、パニック障害(広場恐怖症の有無にかかわらず)、社会恐怖症、物質乱用障害、拒食症、過食症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、慢性疼痛症候群など、多くの症状の患者にも処方されることがあります。そのため、毎年何百万人もの人々が抗うつ薬を処方され、その影響を受けています。

第一無害原則(primum non nocere)は、医師に害を与えないことを求めています。しかしながら、現在の診断基準と治療慣行が、善よりも害をもたらす可能性があるという懸念が高まっており(Hagen, 2003 ; Horwitz and Wakefield , 2007 ; Kirsch et al. , 2008 ; Andrews and Thomson Jr., 2009 ; Fournier et al., 2010 ; Wakefield et al., 2010 ; Andrews et al., 2011 ; Fava and Offidani, 2011)、こうした懸念は著名な公的機関でもますます表明されるようになっています(Lehrer, 2010 ; Angell, 2011)。さらに、多くの懸念は、無秩序の性質に関する進化論的概念によって引き起こされてきました ( Wakefield、1992、1999 ; Watson and Andrews、2002 ; Hagen 、2003 ; Horwitz and Wakefield、2007 ; Andrews and Thomson Jr.、2009 ; Andrews et al.、2011 )。

適応プロセスの阻害は生物学的機能を低下させるという進化医学の原則があります(Nesse and Williams, 1994)。例えば、発熱は感染に対する免疫反応を調整するための進化的に古い適応であることを示す証拠が増え続けています(Kluger et al., 1997 ; Hasday et al., 2000 ; Blatteis, 2003 ; Appenheimer et al., 2005)。ヒトを対象とした研究では、解熱剤による発熱の阻害が免疫反応にいくつかの悪影響を及ぼすことが示されています。対照実験において、解熱剤はライノウイルス(風邪)や水痘(水ぼうそう)などの致命的ではない感染症の治癒にかかる時間を延長させることが示されています(Stanley et al., 1975 ; Doran et al., 1989 ; Graham et al., 1990 )。アセトアミノフェンは、実験パラダイムにおいて、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum )感染症の罹病期間を延長させることも示されています( Brandts et al., 1997)。細菌性敗血症などのより重篤な感染症の患者では、相関研究において発熱が生存率の上昇と関連することが一般的に示されています(Bryant et al., 1971 ; Weinstein et al., 1978 , 1983 ; Mackowiak et al., 1980 ; Swenson et al., 2007 ; Rantala et al., 2009)。重篤な感染症の患者における解熱剤療法の死亡率への影響に関する実験研究はほとんど行われていません。ある実験では、イブプロフェンは細菌性敗血症患者の死亡率に影響を与えませんでしたが、感染症が臓器機能不全を引き起こすまで投薬は開始されませんでした(Bernard et al., 1997)。別の実験では、発熱直後の外傷患者にアセトアミノフェンを投与したところ、薬剤投与群44名中7名(16%)が死亡したのに対し、薬剤非投与群では38名中1名(3%)しか死亡しなかった(Schulman et al., 2005)。この差は統計的に有意ではなかった(p = 0.06)が、研究は早期に中止された。大学の倫理審査委員会は当初、リスクは最小限であるという仮定に基づき、インフォームド・コンセントの免除を認めていたが、予備的な結果は、この仮定が誤りであったことを強く示唆していた。

セロトニンは脳内外に広く分布しており(Berger et al., 2009)、セロトニンは適応プロセスに広範な影響を及ぼすことから、抗うつ薬は多くの健康への悪影響を及ぼす可能性があります。多くの研究が行われているにもかかわらず、抗うつ薬の使用に関する議論では、抗うつ薬が健康に及ぼす広範なセロトニン作動性作用はほとんど強調されていません。

本稿では、(1) 抗うつ薬がうつ病に関与していると考えられる想定上の病理学的プロセスに及ぼす幅広い影響、(2) 抗うつ薬が身体全体の正常な適応プロセスに及ぼす影響、(3) 抗うつ薬が有益性よりも有害性の方が多いかどうかという問題について検討する。最終的には、抗うつ薬の有益性は一般にそのコストを上回るという結論に至る (表2 を参照)。ただし、特定の集団においてはその使用が正当化される可能性もある。特に、我々の議論は、うつ病の他の治療法と比較した抗うつ薬の有効性には依存しない。むしろ、医療従事者が患者に抗うつ薬を開始するよりも処方を控える方が良いかどうかに依存している。このため、非薬理学的代替療法については、現在研究が活発に行われている領域ではあるが、ここでは議論しない。もちろん、医療従事者が治療を行わないことを提唱しているわけではない。しかし、費用便益分析の結果、ほとんどの状況において抗うつ薬を処方するよりも薬を投与しない方が優れた選択肢であることが示唆された場合、医師は副作用プロファイルの低い他の治療法を採用する傾向が強くなる可能性があります。

・セロトニンと恒常性

動物では、体内のセロトニンの約5%のみが脳内に存在します。体内のセロトニンの大部分は腸管に蓄えられており、その90%は腸管クロム親和性細胞(ここで大部分が合成されます)に貯蔵され、残りの10%は腸管筋介在ニューロンで合成・貯蔵されます(Gershon, 2004)。腸管クロム親和性細胞はセロトニンを血流中に放出し、その大部分は血小板に取り込まれます。セロトニンは成体では血液脳関門を通過できないため、中枢と末梢のセロトニン供給源は相互に伝達しません(Hranilovic et al., 2011)。

セロトニンは通常、脳、腸、血漿で恒常性制御下にあります ( Hyman and Nestler, 1996 ; Gershon, 2004 ; Lesurtel et al., 2008 ; Keszthelyi et al., 2009 ; Matondo et al., 2009 ; Best et al., 2010 ; Mercado and Kilic, 2010 )。恒常性とは、重要な物質または生理学的パラメータを平衡状態の周りの狭い範囲内で制御することです。恒常性維持のメカニズムは、重要な生理学的パラメータを適切な生物学的機能に必要なレベルに維持すること ( Hochochka and Somero, 2002 ; Woods, 2009 ) と、自然選択によってのみ進化した複雑な機構を備えていること ( Andrews et al., 2011 ) から、進化した適応の典型的な例です。恒常性維持機構には、少なくとも、パラメータが平衡からどの程度ずれているかを判断するセンサーと、パラメータを平衡に戻すフィードバック機構があります(Woods、2009)。たとえば、体幹温度の恒常性制御には、視索前野前視床下部の神経センサーが関与しており、これがさまざまな流出路と接続してフィードバックを及ぼし、体温を平衡に保ちます(Romanovsky、2007)。さらに、多くの恒常性維持機構は、環境の偶発性に応じて平衡を上げたり下げたりすることができます。そのため、体は感染に対して、体温の平衡を上昇させることで反応することが多く、これは発熱としても知られています(Romanovsky et al.、2005)。そして、フィードバック機構が、この上昇した平衡付近で体幹温度を維持します。

次に、セロトニンが脳、腸、血漿でどのように恒常的に調節されているかを順に説明します。

・脳内のセロトニン

脳において、セロトニン作動性ニューロンは縫線核に由来し、様々な領域に広く投射しています。背側縫線核は、前脳領域に投射するニューロンの主な発生源です。シナプスに放出されたセロトニンは、最終的にセロトニントランスポーター分子によってシナプス前ニューロンに取り込まれ、そこでモノアミン酸化酵素Aによって分解されます。

セロトニンのシナプスレベルは、ニューロン発火を制御するセロトニン作動性ニューロンの細胞体樹状突起領域に位置する5-HT 1A自己受容体と、セロトニンの合成を制御する末端領域に位置する5-HT 1B自己受容体によって、部分的に恒常的に制御されています(Best et al., 2010)。したがって、セロトニンのシナプスレベルが平衡レベルから上昇すると、自己受容体の活動によりセロトニン作動性ニューロンの発火が減少し、合成が減少しますが、どちらもシナプスレベルを比較的安定に保つ傾向があります(Best et al., 2010)。逆に、シナプスレベルが平衡レベルから下降すると、発火と合成が増加して平衡レベルが維持されます(Best et al., 2010)。

・腸内のセロトニン

体内のセロトニンの大部分は、胃から大腸までの消化管の内壁を覆う腸管クロマフィン細胞によって産生されます。腸管クロマフィン細胞は上皮層の一部であるためターンオーバーが早く、ニューロンは腸管クロマフィン細胞と密着結合を形成することができません。そのため、腸管クロマフィン細胞はニューロンからの距離が長いことを補うために、大量のセロトニンを産生します(Gershon, 2004)。しかし、腸管内壁における細胞外セロトニンの過剰は有害であり、痛み、下痢、便秘、消化不良、膨満感、頭痛などの症状を特徴とする過敏性腸症候群を引き起こす可能性があります(Gershon, 2004)。セロトニンを分解する細胞外酵素は存在せず、粘膜上皮細胞は脳内に発現するのと同じトランスポーターを介して細胞外セロトニンを除去することで、恒常性維持に重要な役割を果たしています(Gershon and Tack, 2007)。これらの細胞はその後、モノアミン酸化酵素などの経路によってセロトニンを分解します(Gershon, 2004)。

・血漿中のセロトニン

腸管クロム親和性細胞によって産生されたセロトニンは、血流中に放出されます(Gershon and Tack, 2007)。血漿中のセロトニン濃度は、血小板細胞膜に発現するセロトニントランスポーターの作用を介して血小板細胞によって調節されます(Linder et al., 2007 ; Mercado and Kilic, 2010)。

トランスポーター分子は血小板細胞質内の小胞に貯蔵されており、表面と細胞質間の輸送は血漿中のセロトニン濃度に応じて行われる(Mercado and Kilic, 2010)。血漿中のセロトニン濃度が低い場合、セロトニンの比較的わずかな増加がトランスポーターの表面発現を増加させるプロセスを引き起こし、血小板への蓄積を促進して血漿中のセロトニン濃度を低く維持する。血小板はセロトニンを凝固プロセスに不可欠な大きな顆粒に貯蔵する(Heger and Collins, 2004)。そのため、血漿中のセロトニン濃度を調節するこの恒常性維持機構は、凝固機構があらゆる損傷の発生に備えて準備を整えるために重要である。

皮膚の様々な細胞(メラノサイト、肥満細胞、メルケル細胞)は、セロトニンを合成・貯蔵することができます(Nordlind et al., 2008)。皮膚に穴を開けるような外傷が発生すると、創傷部位周辺の遊離セロトニン濃度が急激に上昇します(Hernandez-Cueto et al., 2000)。血漿中のセロトニン濃度が局所的に大幅に上昇すると、血小板におけるトランスポーターの表面発現が逆転する可能性があります(Mercado and Kilic, 2010)。具体的には、輸送の方向が逆転し、表面におけるトランスポーターの発現が低下し、細胞質小胞へのトランスポーターの蓄積が増加し、血小板へのセロトニンのさらなる取り込みが減少します。さらに、血漿中のセロトニン濃度が高くなると、細胞質に貯蔵されたセロトニンが血小板から凝血促進物質の放出を誘発する複雑なプロセスが開始され(Mercado and Kilic, 2010)、損傷部位での凝固プロセスが促進されます。

・抗うつ薬の身体系への影響

医学と精神医学における最も有力な見解によれば、疾患は生物学的機能の崩壊または低下に起因するとされています[米国精神医学会 (APA), 2000b ]。自然淘汰は生物学的機能を生み出す唯一の自然の力であり、生物学的機能を持つ形質は適応と呼ばれるため、疾患は進化的に獲得された適応の機能の崩壊または低下を伴うものと理解できます( Wakefield, 1992 , 1999 )。したがって、原理的には、恒常性維持機構の機能を低下させたり阻害したりする介入は、疾患を引き起こし得るのです。

抗うつ薬は錠剤で服用するのが最も一般的ですが、経皮パッチで服用できるものもあります。いずれの場合も、抗うつ薬は血流に入り、血液脳関門を通過し、神経機能に影響を与えます。抗うつ薬は様々なメカニズムによってモノアミン濃度を変動させますが、最も一般的なメカニズムはモノアミントランスポーターへの結合です。正常に機能する齧歯類の脳では、トランスポーターの阻害によってシナプス前ニューロンへのモノアミンの再取り込みが阻害され、投与後数分から数時間以内に前脳領域における細胞外モノアミン濃度が平衡レベルから増加します(図1参照;Rutter and Auerbach, 1993;Bymaster et al., 2002;Felton et al., 2003)。しかし、抗うつ薬を長期に使用すると、脳の恒常性維持機構が、前脳のセロトニンプール全体(細胞内および細胞外)を減少させる合成阻害を含む、いくつかの代償的変化( Best et al., 2010 )を行うことでこの影響を緩和します( Honig et al., 2009)。その結果、前脳の細胞外レベルは長期治療により平衡レベルに戻ります(Popa et al., 2010)。慢性的な抗うつ薬の使用により、恒常性を維持するために、セロトニン受容体、トランスポーター、および酵素の密度と機能の変化など、他の変化も起こります(Holt and Baker, 1996 ; Hyman and Nestler, 1996 ; Adell et al., 2005 ; Kovacevic et al., 2010)。

しかし、抗うつ薬は体全体に広く浸透します。セロトニントランスポーターは腸管および血漿中のセロトニンの恒常性調節に重要な役割を果たすため、抗うつ薬は末梢におけるセロトニン作動性プロセスにも影響を及ぼす可能性があります。

抗うつ薬が脳と末梢で正常に機能している恒常性維持機構を阻害し、障害を引き起こす方法はいくつかあります。第一に、脳内の細胞外セロトニン濃度が平衡状態に戻るまでには数週間かかるという事実に由来します。この間、セロトニン濃度は本来あるべき値よりも高くなっています。抗うつ薬は、平衡状態が回復する前に障害を引き起こす可能性があります。

第二に、抗うつ薬の長期使用は、恒常性調節機構に負担をかける可能性があります。なぜなら、平衡を回復するために様々な調整が必要となるため、これらの機構の機能が低下する可能性があるからです。例えば、うつ病は、長期にわたるストレスによって引き起こされる調節機構の機能低下の結果として生じる可能性があると示唆されています(McEwen, 2000 ; Ganzel et al., 2010)。同じ原理から、抗うつ薬の長期使用は、セロトニンを制御する恒常性調節機構の機能低下を引き起こす可能性があることが示唆されています。

第三に、抗うつ薬は服用を中止すると、精神障害を引き起こす可能性があります。抗うつ薬を長期にわたって服用することで、最終的には平衡状態が回復しますが、それは脳が抗うつ薬の作用に抵抗する適応行動をとるためです(Andrews et al., 2011 ; Fava and Offidani, 2011)。抗うつ薬を中止すると、脳が行った適応行動は阻害されなくなり、セロトニン濃度は再び平衡状態から逸脱するはずです。したがって、抗うつ薬の服用中止は、治療中に脳が行った適応行動を逆転させるまで、精神障害を引き起こす可能性があります。

最後に、抗うつ薬は恒常性維持機構の重要な部分を効果的に阻害することで、障害を引き起こす可能性があります。例えば、腸管および血漿中のセロトニンの恒常性維持は、主にセロトニントランスポーターに依存しています(Gershon, 2004 ; Mercado and Kilic, 2010)。抗うつ薬はトランスポーターを阻害することで恒常性維持機構の重要な部分を阻害し、システムを平衡状態に戻すことを不可能にします。

抗うつ薬が体全体のセロトニン調節プロセスに及ぼす悪影響について議論する際、これらのメカニズムのどれが作用しているのか、あるいは他の未知のメカニズムが作用しているのかを正確には把握できないことがあります。しかし、これらのメカニズムは、抗うつ薬が一時的または長期的な影響を及ぼし、恒常性維持機構の適切な機能を阻害する可能性があるという原則を証明しています。

・落ち込んだ気分

セロトニンおよびノルエピネフリンを調節する恒常性維持機構が一時的または永続的に無効化されたげっ歯類の研究では、モノアミンがうつ病の行動症状の制御に役割を果たしていることを示す強力な実験的証拠が得られています ( Heisler et al., 1998 ; Mayorga et al., 2001 ; Santarelli et al., 2003 ; Cryan et al., 2004 ; Amat et al., 2005 , 2006 )。ただし、セロトニンとうつ病症状の正確な関係は議論の余地があります ( Sapolsky, 2004 ; Andrews and Thomson Jr., 2009 )。うつ病に関する最も古い神経化学的障害仮説では、少なくとも重度のうつ病エピソードのある人ではセロトニンやその他のモノアミンが枯渇しており、抗うつ薬がこの不均衡を修正するとされています。本論文の目的上、正確な関係を知る必要はありません。うつ病症状がセロトニン作動性神経の制御下にあり、セロトニンが恒常性制御下にあるという事実は、抗うつ薬による気分低下作用を脳が治療中に抑制できることを示唆しています(Andrews et al., 2011)。

・治療中の抗うつ薬の適度な効果

抗うつ薬は症状の軽減に効果があると広く考えられています。しかし、最近の研究では、その効果はせいぜい中程度であることが強く示唆されています。例えば、抗うつ薬がプラセボよりも有効であることを示す研究は、選択的に公開されています(Turner et al., 2008)。Turner et al. (2008)は、情報公開法(FOIA)に基づき、製薬会社が医薬品の政府承認を得るために提出した発表済みおよび未発表の研究へのアクセスを米国食品医薬品局(FDA)に申請しました。その結果、発表された研究の94%が抗うつ薬がプラセボよりも優れていることを示していることがわかりました。発表済みおよび未発表の研究を合わせて検討すると、プラセボよりも優れていることを示したのはわずか51%でした。

Kirschら (2008)もFOIAに基づきFDAに申請し、抗うつ薬がプラセボと比較してうつ病の症状を軽減する上でどの程度効果的かを理解しようとした。うつ病症状の変化は、臨床試験で抗うつ薬の有効性を評価する最も一般的な手段である17項目のハミルトンうつ病評価尺度 (HDRS; Hamilton, 1960 ) によって測定された。スコアは0から53までの範囲で評価され、研究者はそれを様々な方法で解釈する ( Kearnsら, 1982 ; Cohn and Wilcox, 1992 ; Angstら, 1993 )。米国精神医学会 (APA) ( 2000a )は、Kearnsらが使用した手法について具体的に言及している。 (1982)で提案され、英国では国立臨床優秀性研究所(NICE)によって正式に使用されています(National Institute for Clinical Excellence, 2004)(表3を参照)。

HDRSに関して注目すべき点が他に2つあります。1つ目は、スコアが13以上の患者は、通常、MDDエピソードの正式な診断基準を満たしていることです(Bagby et al., 2004)。言い換えれば、MDDの診断基準を満たす人の多くは、NICEガイドラインによれば軽度または中等度の症状しか示していません。2つ目は、NICEガイドラインでは、抗うつ薬がプラセボと比較してHDRSポイントで3ポイント以上症状を軽減することを臨床的に有意とみなす要件としています(National Institute for Clinical Excellence, 2004)。

Kirsch ら (2008)によると、プラセボを服用した患者では HDRS 症状が平均 7.8 ポイント減少したのに対し、抗うつ薬を服用した患者では 9.6 ポイント減少しました。両グループとも大幅に改善したように見えるかもしれませんが、1 つの研究を除いて、すべての研究の患者は、登録時に平均して「非常に重度の」うつ病範囲 (平均 HDRS ≥ 23) でした。言い換えると、プラセボと抗うつ薬の両方によって症状が改善したとしても、ほとんどの患者はおそらくまだ MDD の診断基準を満たしていたでしょう。さらに、平均して抗うつ薬はプラセボよりも HDRS ポイントわずか 1.8 ポイント多く症状を軽減しました。これは統計的に有意な差ではありましたが、NICE の臨床的意義のガイドラインを満たすには不十分でした。抗うつ薬とプラセボの差は最初の HDRS スコアとともに拡大し、ベースライン スコアが 28 以上になると臨床的に有意になりました。むしろ、プラセボの有効性が低下したためでした。

結果を素直に解釈すると、抗うつ薬は「非常に重度」の患者を除いて、うつ病の症状に対する臨床効果は実際にはそれほど大きくないことが示唆されます。抗うつ薬はプラセボと比較して症状を軽減する効果が中程度であるという知見は、他のいくつかの研究でも再現されています(Khan et al., 2002 , 2005 , 2011 ; Fournier et al., 2010)。英国では、プラセボと抗うつ薬の差は、重度のうつ病の場合を除き抗うつ薬を使用しないことを推奨するほど小さいと考えられています(Bonin, 2012)。最近、ニュース番組「60 Minutes」のインタビューで、米国FDAの担当者は、抗うつ薬のプラセボと比較した症状軽減効果は「かなり小さい」と述べました(Bonin, 2012)。

抗うつ薬の効果が限定的であるという証拠を、セロトニンがうつ病症状の調節に関与していないことの証拠と捉える人もいます。しかし、脳が抗うつ薬の効果に抵抗すると考えられるため、セロトニンを調節する恒常性維持機構は依然として健全であるという仮説のもとでも、効果が限定的であることが予想されます(Andrews et al., 2011)。

・長期抗うつ薬治療の影響

抗うつ薬治療に反応を示す人でも、長期使用は症状軽減効果の喪失と関連しており、時には本格的な再発を引き起こすことがあります。これは、脳が抗うつ薬の症状軽減効果に抵抗していることとも一致しています。初期の研究では、抗うつ薬を長期服用している人の9~57%が再発または再発の正式な基準を満たしていることが示されました(Byrne and Rothschild, 1998)。最近の研究では、当初は薬で寛解した人でも同様に高い再発率が見られました。フルオキセチンに関するある研究では、6ヶ月間の継続治療後に35.2%が再発基準を満たし、12ヶ月後には45.9%に増加しました(McGrath et al., 2006)。別の研究では、当初寛解基準を満たし、抗うつ薬の継続投与のみを受けた患者のうち、68%が2年間で再発を経験しました(Bockting et al., 2008)。もちろん、これらの研究は再発の正式な基準を満たす症状の悪化のみを報告しています。抗うつ薬の長期使用に伴うより一般的な効力低下は、実際にははるかに高いはずです。

・うつ病を緩和するための段階的な治療の代替案

うつ病緩和のための段階的代替治療(STAR * D)研究の結果は、詳細に記述する価値がある。この研究は、抗うつ薬がうつ病症状の長期的な軽減に効果的であることの証拠として広く報告されており、特に、より狭いモノアミン作動性プロファイルを持つ代替抗うつ薬が効果を発揮しなかった後に、より広いモノアミン作動性プロファイルを持つ代替抗うつ薬を投与した場合にその効果が顕著である(Insel and Wang, 2009 )。STAR * Dの組み入れ基準を満たした3110人の患者は、最大4回の連続的な薬物療法を受け、以前の治療が奏効しなかったことを条件に、新たな治療が開始された。すべての治療ステップを完了した患者の全体的な寛解率は67%と報告されている(Rush et al., 2006)。

しかし、STAR * Dにはプラセボ対照群が含まれていなかったため、肯定的な反応は抗うつ薬だけに起因するものではなく、抗うつ薬とプラセボ効果の両方に起因するものです。プラセボ群がなかったため、抗うつ薬がどれほど効果的だったかを推定することはできません。さらに、すべての治療ステップを完了した患者だけに焦点を当てると、4つのステップのいずれかで寛解の基準を満たした1518人の患者のうち93%が12か月の治療中に再発するか、研究から脱落したという事実が見えにくくなります(Pigott et al., 2010)。プラセボ対照群がない場合でも、この厄介な事実は、抗うつ薬の長期的な有効性はせいぜい限られていることを示唆しています。93%の再発/脱落率は、STAR * Dの主要な出版物では報告されていませんでした。そうではなく、データを再分析した外部の研究者によって報告されました(Pigott et al., 2010)。これらの外部研究者らは、STAR * D研究者による結果報告に明らかな偏りがあった事例を数多く記録している(Pigott et al., 2010)。

・抗うつ薬中止後の再発リスク増加

恒常性維持機構が平衡状態から乱されると、乱れの程度に比例した反作用力が生じます。例えば、バネを平衡状態から圧縮すると、反作用力が生じ、圧縮を続けるほどこの力は増大します。さらに、圧縮されたバネから手を離すと、バネは平衡状態に戻る前に平衡状態をオーバーシュートしますが、オーバーシュートの程度は圧縮量に比例します。

抗うつ薬が前脳内のモノアミン濃度に及ぼす影響は様々であり、これはバネを様々な程度に圧縮するのと似ています。もし大うつ病性障害(MDD)と診断された人のほとんどにおいて、モノアミン濃度を調節する恒常性維持機構が適切に機能しているならば、抗うつ薬の投与を中止すると、うつ病症状のオーバーシュートが見られるはずです。さらに、オーバーシュートの程度は抗うつ薬の強さに比例するはずです。

オーバーシュート予測を検証するため、我々は最近、抗うつ薬の投与を中止した研究のメタ分析を行った。抗うつ薬がヒトの脳内でモノアミンをどの程度乱すかについては、侵襲的技術が必要となるためデータが不足している。そこで我々は、抗うつ薬がげっ歯類の前頭前野のうち、うつ症状の制御に関与する領域でモノアミンをどの程度増加させるかを検討した ( Amat et al., 2005 )。プラセボはげっ歯類の脳内のモノアミン濃度に影響を与えないが、最も強力な抗うつ薬は前頭前野のモノアミン濃度を 400% 以上増加させる可能性がある ( Bymaster et al., 2002 )。共変量をコントロールした後、投与中止後の再発リスクと、研究で使用した抗うつ薬がセロトニン (図2 ) およびノルエピネフリン (図3 )を増加させる程度との間に強い正の相関関係があることが判明した。言い換えれば、抗うつ薬が脳内のモノアミン濃度を乱すほど、脳は抵抗する傾向が強くなり、その結果、薬を中止した際の再発リスクが高まるということです。この正の相関関係は、抗うつ薬を使用せずに(つまり、セロトニンとノルアドレナリンの濃度が乱れていない状態で)症状が改善した患者は、再発リスクが低いことを強く示唆しています。

全体として、私たちのメタアナリシスの結果は、セロトニンとノルアドレナリンを調節する恒常性維持機構が抗うつ薬の効果に抵抗しているという仮説をさらに支持するものです。この抵抗がMDDの現在の診断基準を満たす患者で起こっているという事実は、そのような患者においてセロトニン濃度の調節異常が起こっているという仮説に疑問を投げかけます。これは、恒常性維持機構のセンサーと負のフィードバック成分が、抗うつ薬の効果に対する抵抗を生み出すために機能しているに違いないからです。しかしながら、私たちの結果は、平衡を保つための成分の機能不全を排除するものではありません。

これらの結果は、抗うつ薬がストレス反応を抑制し、脳に回復の機会を与えてうつ病への耐性を高めるという仮説(Sapolsky, 2001 ; Kramer, 2005)とも矛盾している。むしろ、抗うつ薬の使用はうつ病の感受性を高めると考えられる。

異なる抗うつ薬が再発リスクにどのように影響するかを示すために、本稿では主要な抗うつ薬クラスを含むデータセットで回帰分析を実施し、以前の研究で重要であると特定した共変量を制御しました。フルオキセチンは、再取り込み阻害以外のメカニズムにより前頭ノルエピネフリンのレベルを上昇させる点でSSRIの中で独特であるため(Bymaster et al., 2002)、他のSSRIとは区別しました。そのため、プラセボを服用中に寛解した患者の推定3か月再発リスクはわずか21.4%でしたが、抗うつ薬中止後のリスクは、一般にこのクラスのモノアミンの摂動効果によって増加し、43.3%(SSRI)、47.7%(SNRI)、55.2%(TCA)、61.8%(フルオキセチン)、75.1%(MAOI)でした。

・神経細胞の増殖、死、分化

セロトニンは、細胞分化、ニューロンのアポトーシス(プログラムされたニューロン死)、神経新生(新しいニューロンの誕生と成長)、神経可塑性など、様々な発達過程を通じて脳の形成に関与しています(Azmitia, 2001)。セロトニンが脳の形成において複雑な役割を果たしているため、抗うつ薬はニューロン機能に複雑な影響を及ぼす可能性があります。

抗うつ薬が神経新生を促進することを示唆する多くの研究が行われており(Hanson et al., 2011)、一部の研究では、これが抗うつ薬の反応における根本的かつ有益な要素である可能性があると主張しています(Santarelli et al., 2003 ; Duman, 2004 ; Warner-Schmidt and Duman, 2006 ; Perera et al., 2011)。また、神経新生はうつ病によって引き起こされると考えられる神経損傷の治癒を促進する可能性があるため、有用であると考える研究者も多くいます(Sapolsky, 2001)。

同時に、神経新生が抗うつ薬の有益な効果であるという仮説を無批判に受け入れるべきではありません。認知機能は脳内のニューロン数と単純な関係を持たないため、神経新生は生涯にわたって慎重に制御されています。実際、抗うつ薬が新しいニューロンの増殖を促進するのに本当に効果的であるならば、臨床医は抗うつ薬のあらゆる有用性と脳腫瘍の誘発可能性を天秤にかけなければならないでしょう(Jackson, 2009 )。しかし、抗うつ薬が神経膠腫や神経芽腫を減少させ、これらの効果はニューロンのアポトーシスを介しているというin vitro試験における証拠が増えています(Levkovitz et al., 2005 ; Cloonan and Williams, 2011)。実際、最近の疫学研究では、ヒトにおけるTCAの長期使用は神経膠腫を予防する可能性があることが示唆されている(Walker et al., 2011 )。ただし、抗うつ薬は他の種類の癌のリスクを高める可能性がある(Cosgrove et al., 2011)。アポトーシス効果は腫瘍組織に限らない。抗うつ薬は、in vitro(Post et al., 2000 ; Bartholoma et al., 2002)およびin vivo(Sairanen et al., 2005)において、非癌性海馬ニューロンに細胞死を引き起こすことがわかっている。また、抗うつ薬は精子細胞にも細胞死を引き起こすことがわかっている(Tanrikut et al., 2010)。つまり、抗うつ薬がアポトーシスを誘発するという、いくつかの異なる細胞株からの確かな証拠がある。

抗うつ薬が神経新生とニューロンのアポトーシスの両方を直接かつ同時に促進するとしたら、極めて奇妙なことです。実際、抗うつ薬が神経新生を誘発したという証拠は曖昧です(Jackson, 2009)。問題の核心は、神経新生を検査するすべての研究で、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU)と呼ばれる方法が使用されているという事実です。他の方法が使用される場合もありますが、ほぼ常にBrdUが使用されます。BrdUは、DNA合成中にDNAに組み込まれるヌクレオシドチミジンの類似体であり、組み込まれた化合物は免疫組織化学を用いて検出できます。したがって、BrdUはDNA合成のマーカーであり、細胞が分裂するにはDNAが合成されなければならないため、細胞増殖の優れたマーカーであるように思われます。しかし、BrdUシグナルの解釈は、DNA修復、不完全な細胞周期への再突入、細胞分裂を伴わないDNA複製など、神経新生以外のプロセスでもBrdUがDNAに組み込まれる可能性があるため、複雑です(Taupin、2007年)。特に関連しているのは、DNAがアポトーシスにつながるプロセスで合成されることが多いという事実です(Taupin、2007年)。BrdUの解釈上の問題から、ある評論家はBrdUは「神経科学で最も誤用されている技術の1つ」と述べています(Taupin、2007年、p.198)。他の評論家は、「ブロモデオキシウリジン(BrdU)標識は、細胞周期に関連した細胞死に起因する可能性がある場合でも、神経新生の証拠として無批判に受け入れられることが多い」と述べています(Herrupら、2004年、p.9232)。

最近では、BrdUと組み合わせた他の方法を用いて、抗うつ薬使用後のニューロンの運命を解明しようとする研究者も現れています。一般的な方法としては、ニューロン中のKi-67とダブルコルチン(DCX)の発現を評価することが挙げられます。これらはいずれも細胞周期中の成熟ニューロンが発現するタンパク質であり、NeuNはダブルコルチンの発現低下後に発現する成熟ニューロンのマーカーと考えられています。Ki-67、DCX、またはNeuNの陽性シグナルは、抗うつ薬がニューロンの成長を誘発したというより強力な証拠として解釈されることが多いです。

しかし、より洗練された方法論を用いた最近の研究では、抗うつ薬フルオキセチンが神経新生を増加させるという証拠は見つからなかった(Kobayashi et al., 2010)。しかし、フルオキセチンが成熟ニューロンに未熟な機能特性(シナプス可塑性および遺伝子発現の未熟なプロファイルを含む)を付与するという証拠は見つかった。Ki-67およびDCXは未熟ニューロンで発現するため、脱成熟ニューロンでKi-67およびDCXの発現が増加する可能性は十分に考えられる。重要なのは、Kobayashiらが、脱成熟ニューロンが依然としてNeuNを発現していることを発見した点である。つまり、ニューロンの成長と成熟を評価するために一般的に用いられる方法のいずれかが、実際にはアポトーシスと脱成熟のみに反応しているのかどうかは明らかではない。

ニューロンの脱成熟は、抗うつ薬のシナプス増強効果に対する脳の抵抗によって生じるセロトニン合成の減少によって引き起こされる可能性があります(図1参照;Honig et al., 2009)。ニューロンの成熟状態を維持するには、継続的なセロトニン入力が必要です(Azmitia, 2001)。パラクロロフェニルアラニンによってセロトニン合成が阻害されると、細胞骨格が分解し、ニューロン突起が退縮するにつれてシナプスと樹状突起が失われ、これらはすべて未熟で分化していない状態に戻ることを示しています(Chen et al., 1994;Wilson et al., 1998;Azmitia, 2001)。

ニューロンの脱成熟、特にニューロンプロセスの退縮は、アポトーシスの誘発に役割を果たしていると考えられ(Azmitia、2001)、抗うつ薬がニューロン死を誘発する理由を説明できるかもしれません。しかし、「脱成熟」がアポトーシスを誘発する機能的な理由は正確には明らかではありません。アポトーシスは、細胞死と細胞誕生のバランスを調節することにより、損傷した細胞を除去し、分化した組織の恒常性を維持する役割を果たしています(Hengartner、2000)。組織の恒常性を維持するためには、不適切に増殖している細胞を検出して殺す必要があります。したがって、体は制御された増殖と制御されていない増殖を区別して、アポトーシスのプロセスを適切に指示できなければなりません。脱成熟は、ニューロンが悪性の増殖状態に移行し、アポトーシスの標的になっていることを示す信号と見なすことができます。同様に、成熟したニューロンに薬理学的に細胞周期を強制すると、ニューロンはアポトーシス過程を経て死滅します ( Herrup et al., 2004 )。これはおそらく、増殖状態の突然の変化により、ニューロンが腫瘍の可能性があると判断されるためです。

抗うつ薬がニューロンをアポトーシスの対象とするもう一つの方法は、ニューロンに直接構造的損傷を与えることです。損傷を受けたニューロンはしばしばアポトーシスの標的となるからです(Cotran et al., 1998 ; Stergiou and Hengartner, 2004)。抗うつ薬がニューロンに構造的損傷を引き起こすかどうかを検証した研究は、私たちが知る限り1件しかありません(Kalia et al., 2000)。この研究の著者らは、臨床的に重要な用量のフルオキセチン(11.4 mg/kg、経口)またはセルトラリン(28.6 mg/kg、経口)をわずか4日間投与しただけで、健康なげっ歯類の脳において軸索の短縮、ねじれ、神経終末の腫脹が引き起こされることを発見しました。このような形態学的変化は、多くの場合、神経損傷の事実上の証拠とみなされ( Kalia et al., 2000)、同様の形態学的特徴はパーキンソン病においても役割を果たしていると考えられている(Cheng et al., 2010)。

抗うつ薬は神経新生を直接促進しないとしても、間接的に促進する可能性があります。薬理学的介入がニューロンのアポトーシスを引き起こすと、脳は恒常的に補償しようとして神経新生を上方制御します。たとえば、カイニン酸によって海馬のニューロンのアポトーシスが誘導された後、歯状回とCA3での神経新生が上方制御されました(Dong et al., 2003)。カイニン酸投与の18日後には神経新生の証拠は有意ではありませんでしたが、33日後には有意でした。ある研究では、フルオキセチンが神経幹細胞を増加させたことが示されていますが、これはフルオキセチン投与を中止してからわずか30日後のことでした(Encinas et al., 2006)。抗うつ薬は、脳がアポトーシス効果を補償しようとした結果として、間接的にのみ神経新生を誘導する可能性があるようです。

一般的に、ニューロンの脱成熟と損傷は、脳の正常な機能を妨げる可能性が高い(Jackson, 2008 , 2009)。抗うつ薬によって引き起こされるパーキンソン病様の形態学的特徴は、抗うつ薬が遅発性ジスキネジア(不随意な反復運動;El-Mallakh et al., 2011)を引き起こす理由を説明できる可能性がある。げっ歯類では、抗うつ薬の反復投与が、受動回避、高架式プラス迷路、3パネルランウェイ課題など、様々な学習課題の成績を低下させることが分かっている(Ulak et al., 2006 ; Mutlu et al., 2011)。人間の場合、最近の大規模な疫学研究により、抗うつ薬の長期使用は高齢女性の軽度認知障害のリスクの 70% 増加と認知症の可能性の増加に関連していることが判明しました ( Goveas ら、2011 )。

・注意

うつ病の一般的な症状は集中力の低下です。これは、うつ病患者がしばしば、エピソードに関連した反芻と呼ばれる思考を持続的に抱えていることに起因します。反芻は、注意をそらすことも抑制することも困難です。こうした反芻は、他のことに集中する能力を妨げます。言い換えれば、うつ病は限られた注意資源、特にワーキングメモリの配分に明らかに影響を与えています(Andrews and Thomson Jr., 2009)。これらの注意資源は、少なくとも部分的にはセロトニンによって制御されています(Carter et al., 2005 ; Andrews and Thomson Jr., 2009)。したがって、抗うつ薬は注意プロセスを阻害する可能性があります。

ある研究では、抗うつ薬セルトラリンが気分変調症患者の反芻行動を減少させることが示されています(Kelly et al., 2007)。反芻行動の減少は有益であると広く考えられていますが、科学文献はそれとは異なることを示唆しています。反芻を妨げる介入(気をそらす、思考を抑制するなど)は短期的には症状を軽減する傾向がありますが(Morrow and Nolen-Hoeksema, 1990 ; Nolen-Hoeksema and Morrow, 1993 ; Vickers and Vogeltanz-Holm, 2003 ; Park et al., 2004 ; Andrews et al., 2007)、長期的には症状を悪化させる傾向があり(Schmaling et al., 2002 ; Wenzlaff and Luxton, 2003 ; Hayes et al., 2005)、これは短期的な効果は対症療法であり、原因に対処するものではないことを示唆しています(Andrews and Thomson Jr., 2009)。一方、反芻を促す介入(例えば、エピソードに関連する最も強い考えや感情を書き出すなど)は、洞察力を高め、エピソードの持続時間を短縮することが分かっており(Hayes et al., 2005 , 2007 ; Gortner et al., 2006 ; Graf et al., 2008)、これらの介入は原因に対処するものであることを示唆しています(Andrews and Thomson Jr., 2009)。言い換えれば、反芻の中断は必ずしも生産的ではない可能性があるということです。

いずれにせよ、他の研究では抗うつ薬が注意力に悪影響を及ぼすことが示されています。うつ病でない被験者に数週間投与した場合、特に高度なワーキングメモリや警戒を必要とする課題において、認知能力が低下する傾向があります( Hindmarch, 2009 )。( Schmitt et al., 2001 , 2002 ; Riedel et al., 2005)。

特に興味深いのは、抗うつ薬が運転能力(持続的な注意を必要とする作業)を妨げることを示す実験です(Ramaekers et al., 1995 ; O'Hanlon et al., 1998 ; Wingen et al., 2005)。最近、これらの研究者らは研究を拡大し、英国のプライマリケアデータベースを使用して、抗うつ薬とその他の処方薬が実際の運転事故に与える影響を調べました(Gibson et al., 2009)。薬物曝露の1年前を基準値(事故率比(IRR)= 1)として使用すると、SSRIを服用した人は、最初に薬を処方される前の4週間に運転事故を起こすリスクが高かった(IRR = 1.7、95% CI = 1.47–1.99)。これは、うつ病、不安症、または抗うつ薬の使用につながるその他の状態が事故の危険因子であることを示唆しています。しかし、SSRI使用開始から最初の4週間で、運転事故リスクはベースライン値に戻りました(IRR = 0.92、95% CI = 0.75~1.12)。これを単独で見ると、抗うつ薬が運転事故を予防する効果を示唆しているように思われます。しかし、SSRIは数週間の継続使用後にのみ症状を軽減し、本研究はプラセボ対照試験ではなかったため、リスク低下はSSRIではなく、助けを求めることによる他の効果に起因する可能性があります。実際、注意力に影響を与える他の薬剤(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、β遮断薬、オピオイド系、抗ヒスタミン薬)を初めて使用した4週間においても、同様の運転事故リスク低下が認められました。しかし、4週間の使用後、運転事故リスクは増加し、SSRI治療期間中増加し続けました(IRR = 1.16、95% CI = 1.06–1.28)。SSRI治療を中止すると、事故リスクはベースラインに戻りました(IRR = 1.03、95% CI = 0.92–1.16)。同様に、ベンゾジアゼピン系薬剤、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、オピオイド系薬剤、抗ヒスタミン薬も、長期使用により事故リスクが増加しましたが、中止するとベースラインに戻りました。全体として、このパターンは、SSRI、そしてベンゾジアゼピン系薬剤、睡眠薬、オピオイド系薬剤、抗ヒスタミン薬が運転事故リスクを高めることを示唆しています。

抗うつ薬の使用は、高齢者の転倒および骨折リスクの上昇と関連している(Cumming, 1998)。これは、高齢者が転倒を回避するには十分な注意力が必要となるため、抗うつ薬が注意力に及ぼす影響にも起因している可能性がある(Holtzer et al., 2007)。しかし、転倒後の骨折リスクは、SSRIが骨密度を低下させることによって高まる可能性が高い(Moret et al., 2009)。

・胃腸機能

セロトニントランスポーターを阻害する抗うつ薬は、腸管におけるセロトニン濃度の長期的な上昇を引き起こす可能性があります。これは、トランスポーターの取り込みがセロトニン除去の主なメカニズムであるためです。腸管でセロトニンを取り込むことができるバックアップトランスポーターは存在しますが、効率が低く、セロトニントランスポーターの機能喪失を完全に補うことはできません(Gershon and Tack, 2007)。前述のように、腸壁におけるセロトニン濃度の上昇は、痛み、下痢、便秘、消化不良、膨満感、頭痛を特徴とする過敏性腸症候群と関連しています。セロトニントランスポーターに結合する抗うつ薬も同様の症状を引き起こす可能性があります。実際、痛み、下痢、便秘、消化不良、膨満感、頭痛は抗うつ薬の一般的な副作用であり、最近の研究によると、その頻度は 13.8 ~ 22.9% に及んでいます ( Zimmerman et al.、2010 )。

・血小板の活性化と凝固プロセス

セロトニンは血小板の活性化に関与しており、これは凝固プロセスにおいて重要です(Heger and Collins, 2004)。血小板はセロトニントランスポーターを介して血漿からセロトニンを取り込み、セロトニン分子は高密度顆粒として凝集します。これらの顆粒が放出されると、血小板から凝集促進タンパク質を放出するプロセスが活性化されます(Heger and Collins, 2004)。したがって、凝固プロセスには血小板中のセロトニンの貯蔵が必要です。

血小板活性化は、動脈硬化や血栓症にも関与しています(Gawaz et al., 2005 ; Weber, 2005)。うつ病患者を対象とした研究では、血漿中のセロトニン濃度が低下し、血小板濃度が上昇し、凝集促進プロセスが促進されることが示されており、心血管イベントのリスクが上昇する可能性があるとされています(Musselman et al., 2000 ; Bakkaloglu et al., 2008 ; Flock et al., 2010)。

セロトニントランスポーターに結合する抗うつ薬(SSRIなど)は、血小板活性化に依存するプロセスに影響を及ぼす可能性があります。SSRIは血小板へのセロトニンの取り込みを阻害し、血清中のセロトニン濃度の上昇、血小板濃度の低下、そして凝集促進プロセスの阻害を引き起こします(Musselman et al., 2000 ; Bakkaloglu et al., 2008 ; Flock et al., 2010)。

・異常出血

凝固プロセスの阻害と一致して、SSRIが異常出血のリスクを高めるというエビデンスが増えています。抗うつ薬使用者は、異常出血による入院リスクが高く(Meijer et al., 2004)、待機手術中の出血量も増加します(van Haelst et al., 2010)。デンマークで最近行われた集団ベースの症例対照研究では、SSRI使用者は上部消化管出血のリスクもわずかに高まることが明らかになりましたが、SSRIをNSAIDsなどの他の抗血栓薬と併用すると、リスクはさらに高まります(表4;Dall et al., 2009)。

・心臓発作うつ病は、心血管疾患、特に心筋梗塞、冠動脈疾患、脳卒中のリスク増加と関連しています(Van der Kooy et al., 2007 ; Pozuelo et al., 2009)。上述のように、これらのリスク増加は、セロトニンが血小板活性化に及ぼす影響に一部起因している可能性があります。そのため、研究者らは、セロトニントランスポーターに結合する抗うつ薬が心臓病患者の治療に有用である可能性があると推測しています。

最近の研究では、抗うつ薬の使用が心臓病患者の入院中の心臓関連死を予防する可能性があることが示唆されています(Hata et al., 2011)。しかし、この研究にはいくつかの限界があり、特にサンプル数が少ないこと、患者が抗うつ薬治療に無作為に割り付けられていないこと、そしてプラセボ対照試験が行われていないことが挙げられます。実際、抗うつ薬の心臓イベントへの影響に関する疫学文献は、様々な結果が出ています。TCAは、抗コリン作用、ノルエピネフリン再取り込み阻害、その他の作用により、一般的に心臓イベントの増加と関連しています(Cohen et al., 1996 ; Tata et al., 2005)。しかし、SSRIに関する研究では、保護効果を示したもの(Sauer et al., 2003 ; Monster et al., 2004 ; Schlienger et al., 2004)もあれば、効果が見られなかったもの(Cohen et al., 2000 ; Meier et al., 2001)もあり、さらに心臓発作のリスク増加を示したもの(Tata et al., 2005)もあり、結果はまちまちです。さらに、少なくともこれまでのところ、対照試験では、SSRIや向精神薬による治療が心臓病患者の心臓発作に大きな効果があることは示されていません(Pozuelo et al., 2009)。

・脳血管イベント

原則として、SSRI の抗凝固作用は脳卒中の発生を減らし、脳卒中患者の生存率を上昇させる可能性があります。広く引用されているある研究では、脳卒中後の抗うつ薬治療の死亡率への影響を調査しました ( Jorge et al., 2003 )。104 人の脳卒中患者がランダムに 3 か月間の抗うつ薬 (ノルトリプチリンまたはフルオキセチン) 使用またはプラセボ使用に割り当てられ、9 年後に追跡調査されました。抗うつ薬の使用は、有意に高い 9 年生存率と関連しており、これは上記の疫学的調査結果と矛盾しているように思われます。残念ながら、このランダム化は成功しませんでした。プラセボ群の患者は、糖尿病になる可能性が有意に高く、高齢、肥満、心房細動、慢性肺閉塞になる可能性が高い傾向がありましたが、これらはすべて、死亡率の上昇に寄与した可能性のある深刻な問題です。この研究は、これらの差異やその他の誤りをコントロールしていないとして批判されている(Sonis, 2004 ; Ghaemi and Thommi, 2010)。もし研究著者らがこれらの差異をコントロールした上でデータを再分析していれば、批判者を黙らせることができたはずだが、著者らはそうしなかった(Jorge et al., 2004)。

さらに、有益な抗凝固作用は、有害な抗凝固作用によって相殺される可能性があり、全体的な作用は中立的になる可能性があります。実際、脳卒中患者に対する他の抗凝固薬の効果に関する大規模なメタアナリシスでは、抗凝固薬が死亡率に正味の影響を与えないことがわかっています(Paciaroni et al., 2007 ; Sandercock et al., 2008)。抗凝固薬は再発性虚血性脳卒中のリスクを低下させますが、この利点は頭蓋内出血のリスク増加によって相殺されます。同様に、肺塞栓症の頻度を減らすという抗凝固薬の有益な効果は、頭蓋外出血のリスク増加によって相殺されます(Sandercock et al., 2008)。この文献の強さを考えると、将来の研究で抗うつ薬が脳卒中患者の死亡率に明確に正味の影響を与えることが実証されたとしても驚くべきことです。

抗うつ薬が脳卒中からの回復を促進する可能性も主張されてきました ( Kramer, 2011 )。最近フランスで行われたランダム化臨床試験では、最近虚血性脳卒中を発症した 118 人の患者が対象となり、フルオキセチンまたはプラセボによる早期治療が行われました。フルオキセチン群は 90 日の追跡調査でより大きな運動回復を示しました ( Chollet et al., 2011 )。上記の議論を考慮すると、フルオキセチンが直接神経新生を促進して回復を促進した可能性は低いでしょう。しかし、アポトーシスによる損傷したニューロンの除去、成体ニューロンの脱成熟 (可塑性を高める可能性がある)、および代償的神経新生はすべて、より大きな回復に寄与している可能性があります。抗うつ薬が脳卒中後の運動回復に寄与するもう 1 つの方法は、細胞外セロトニン レベルを高めることです。これは、セロトニンが反復運動および粗大運動に役割を果たしているためです ( Jacobs and Fornal, 1995、1999 )。いずれにせよ、抗うつ薬が脳卒中後の運動回復に及ぼす効果は有望ではあるが、確認する必要がある。

・生殖機能

セロトニンは生殖の様々な側面を調節する重要な因子である(Azmitia, 2001)。うつ病自体は性行動の障害と関連しているが、ほとんどの抗うつ薬は男女ともに性機能障害の程度を悪化させ、これには性欲、覚醒、オーガズムといった様々な側面が含まれる(Serretti and Chiesa, 2009)。TCAおよび少なくとも一部のSSRIは、精子の運動性、量、形態に悪影響を及ぼす(Hendrick et al., 2000 ; Tanrikut et al., 2010)。抗うつ薬が恋愛感情や愛着といった感情的側面を損なう可能性があるという症例報告もある(Fisher and Thomson, 2006)。

・発達

セロトニンは発達において重要な役割を果たしている(Azmitia, 2001)ため、抗うつ薬は発達過程に影響を与える可能性がある。妊娠中および授乳中の母親ではうつ病がよく見られ、抗うつ薬が頻繁に処方されている(Moret et al., 2009 ; Ellfolk and Malm, 2010)。SSRIは胎盤および母乳を通過するため、抗うつ薬は胎児および新生児の発達に影響を与える可能性がある(Moret et al., 2009 ; Ellfolk and Malm, 2010)。妊娠中にSSRIを投与すると、早産および低出生体重のリスクが高まる可能性があるが、その効果は様々で決定的なものではない(Ellfolk and Malm, 2010)。一部の SSRI、特にパロキセチンは、軽度の胎児催奇形性物質でもあるようです ( Bar-Oz et al., 2007 ; Cole et al., 2007 )。あるメタ分析では、妊娠初期のパロキセチンへの曝露は、先天性欠損の補正オッズ比 1.89 と関連していました ( Cole et al., 2007 )。第 3 トリメスター中の SSRI への曝露は、新生児の異常泣き、易刺激性、痙攣などの薬物離脱症状と関連しています ( Moret et al., 2009 ; Ellfolk and Malm, 2010 )。第 3 トリメスター中の SSRI への曝露は、新生児の持続性肺高血圧症のリスク増加とも関連しており、これは死亡率が約 10 % の重篤な疾患です ( Ellfolk and Malm, 2010 )。

研究者たちは、出生前および新生児期のSSRIへの曝露が発達に及ぼす長期的な影響について調査を続けています(Ellfolk and Malm, 2010 ; Homberg et al., 2010)。最近、ある研究で、特に妊娠初期における胎児のSSRI曝露は、自閉症スペクトラム障害の発症リスク増加と関連していることが明らかになりました(Croen et al., 2011)。

・電解質恒常性

セロトニンは、水分バランスと電解質恒常性の調節に重要な役割を果たします(Johnson and Thunhorst, 1997 ; Elgot et al., 2009 ; Fonseca et al., 2009)。体内では通常、血清中のナトリウム濃度は135~145 mEq/Lに保たれており、130 mEq/Lを下回ると低ナトリウム血症が発生します(Moret et al., 2009)。120~130 mEq/Lの低ナトリウム血症では、吐き気、頭痛、倦怠感、無気力、筋肉のけいれん、見当識障害などの症状が現れることがあります。低ナトリウム血症は、この値よりも低い場合、発作、昏睡、呼吸停止、そして死に至ることもあります。メカニズムは不明ですが、SSRIの使用は高齢者の低ナトリウム血症リスクの上昇と関連しており、研究ではリスク上昇幅は0.5~32%と示されています(Jacob and Spinler, 2006)。英国で行われた大規模疫学研究では、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、ベンラファキシンといった一般的に処方される抗うつ薬において、低ナトリウム血症のリスクが50%以上上昇することが示されました(Coupland et al., 2011)。利尿薬などの薬剤を服用している患者では、低ナトリウム血症の有害作用が悪化する可能性があります(Moret et al., 2009)。

・自殺行為

うつ病は自殺念慮および自殺行動の危険因子であり、抗うつ薬はこれらのリスクを軽減する可能性があることを示唆しています。しかし、抗うつ薬の使用が自殺行動を軽減するか、それとも増加させるかについては、よく知られた論争があります(Baldessarini et al., 2007 ; Reeves and Ladner, 2010)。ランダム化プラセボ対照試験を対象とした最大規模かつ最新のメタアナリシスでは、抗うつ薬の使用と自殺行動の間には概ね正の相関関係が認められています。702件の試験と87,000人以上の患者を対象としたあるメタアナリシスでは、SSRIの使用は自殺未遂のリスク増加と関連していました(Fergusson et al., 2005)。 FDAに提出された、99,000人以上の患者を対象とした342件のランダム化二重盲検プラセボ対照試験の別のメタ分析では、抗うつ薬の使用は、子供、青少年、若年成人の自殺行動のリスク増加と関連していた(Stone et al., 2009)。しかし、25~65歳の成人には全体的な効果はなく、高齢者ではリスクが低下した。年齢による影響の理由は不明であり、さらに調査する価値がある。一方、うつ病症状を含む多くの重要な共変量をコントロールした英国での最近の大規模疫学研究では、抗うつ薬を服用していない65歳以上の患者が1年間に自傷行為または自殺未遂を起こす可能性は0.25%であった(Coupland et al., 2011)。しかし、抗うつ薬の使用によるリスクはより高く、TCAで0.43%、SSRIで0.55%、ミルタザピンまたはベンラファキシンで1.30%でした。つまり、実証的な文献は複雑であり、抗うつ薬誘発性の自殺はまれである(Baldessarini et al., 2007 ; Reeves and Ladner, 2010)という点を除けば、それに基づいて確固たる結論を導き出すことは不可能です。いずれにせよ、抗うつ薬が自殺行動に及ぼす影響に関する不確実性は、抗うつ薬の費用と便益に深く関連しています。

・その他の副作用

その他の副作用に関するレビューは容易に入手可能であるため(Brambilla et al., 2005 ; Stahl, 2008 ; Zimmerman et al., 2010)、ここでは取り上げません。抗うつ薬使用者の50~60%が胃腸障害、性機能障害、その他の重大な副作用を経験していると報告していること(Brambilla et al., 2005 ; Serretti and Chiesa, 2009 ; Zimmerman et al., 2010 )と、これらの副作用が不快であるため、服用を中止する最も一般的な理由の一つとなっていること( Demyttenaere et al., 2001 ; Bull et al., 2002 )を指摘するにとどめます。

抗うつ薬は良いことよりも悪いことの方が多いのでしょうか?進化医学の原則として、進化した適応が阻害されると生物学的機能が低下するとされています。抗うつ薬は、体全体のセロトニンを調節する恒常性維持機構の機能を阻害します。そして、私たちのレビューでは、抗うつ薬がセロトニンによって調節される主要なシステムすべてに悪影響を及ぼすことが示されています。

抗うつ薬は、脳の将来のうつ病発作に対する感受性を高める(Andrews et al., 2011)。抗うつ薬は、ニューロン損傷(Kalia et al., 2000)、アポトーシス(Post et al., 2000 ; Bartholoma et al., 2002 ; Sairanen et al., 2005)、および脱成熟(Kobayashi et al., 2010)を引き起こす。抗うつ薬がニューロン新生を直接促進するという証拠は明確ではない。実際に起こるニューロン新生は、抗うつ薬誘発性のアポトーシスに対する脳の代償反応である可能性が高い。抗うつ薬は早期発達に問題を引き起こす可能性があり(Moret et al., 2009 ; Ellfolk and Malm, 2010)、性生活や恋愛生活に悪影響を及ぼし(Fisher and Thomson, 2006 ; Serretti and Chiesa, 2009)、低ナトリウム血症(Jacob and Spinler, 2006)、出血(Meijer et al., 2004 ; Dall et al., 2009)、脳卒中(Smoller et al., 2009 ; Trifiro et al., 2010)のリスクが高まります。

抗うつ薬の主な利点は、うつ症状の軽減であると考えられており、この見解は、うつ病が脳の機能不全の結果であると前提としています。別の見解は、現在の診断基準では、真の障害の例と、ストレス要因に対する正常で進化した情動反応とを正確に区別していないというものです ( Wakefield、1992、1999 ; Watson and Andrews、2002 ; Hagen 、2003 ; Horwitz and Wakefield、2007 ; Andrews and Thomson Jr.、2009 ; Andrews et al.、2011 )。この後者の見解は、うつ症状の薬理学的阻害が、ストレス要因に対処または管理する能力に悪影響を与える可能性があることを示唆しています。いずれにせよ、私たちは、うつ病の脳が (MDD の診断基準を満たす患者において) 抗うつ薬の症状軽減効果に抵抗し、うつ症状が恒常性制御下にあることを示唆するいくつかの研究結果を検討しました。したがって、症状軽減という議論の余地のある基準によっても、抗うつ薬の効果は限られている。

抗うつ薬の症状緩和効果は限定的であり、健康への悪影響が多数あることから、抗うつ薬は一般的に有益よりも有害性の方が多いと考えられます。ただし、特定の集団(脳腫瘍患者や脳卒中からの回復期患者など)には有益となる場合もあります。しかしながら、本レビューで挙げた抗うつ薬の有益な効果と有害な効果のリストは不完全であることは間違いありません。そのため、有益な効果の強力な証拠を見つけるのは困難でしたが、抗うつ薬にはまだ特定されていない重要な有益な効果がある可能性があります。さらに、利益と費用が異なる通貨で表されているため、直接比較することは困難です。最後に、効果は頻度と効果サイズが異なり、まれなものもあります。場合によっては、効果サイズや頻度に関する情報がまだないこともあります(例:抗うつ薬によるアポトーシス誘発)。これらの問題はそれぞれ、抗うつ薬の全体的な効果について結論を下すことを困難にする可能性があります。

これらの問題は、抗うつ薬が死亡率に及ぼす影響を検証することで、概ね回避できます。死亡率データは、薬剤が生物学的機能に及ぼす複数の影響を自然に統合したもので、その中には考慮されていない、あるいは特定されていない影響も含まれます。抗うつ薬が有害な症状を軽減する有益な効果が、恒常性維持機構を阻害する有害な効果を上回る場合、抗うつ薬は生存率を向上させるはずです。逆に、抗うつ薬の有害な効果が有益な効果を上回る場合、抗うつ薬は生存率を低下させるはずです。

うつ病自体は、主に心血管疾患への影響を通じて、死亡リスクの上昇と関連しています(Van der Kooy et al., 2007 ; Pozuelo et al., 2009)。しかし、抗うつ薬の使用は死亡リスクを上昇させるのでしょうか、それとも低下させるのでしょうか?最近行われた3つの大規模な前向き疫学研究では、うつ病症状をコントロールした後でも、抗うつ薬の使用は高齢者の死亡リスクの上昇と関連していることが明らかになっています(Smoller et al., 2009 ; Almeida et al., 2010 ; Coupland et al., 2011)。

最新の研究は、1996年から2007年の間にうつ病と診断された英国の65歳以上(平均年齢75歳)の患者を対象としています(Coupland et al., 2011)。多数の共変量(うつ病症状の重症度を含む)をコントロールした後の1年間の死亡リスクは、抗うつ薬未服用者で7.04%、TCA服用者で8.12%、SSRI服用者で10.61%、その他の抗うつ薬服用者で11.43%でした。言い換えれば、抗うつ薬を服用している高齢者1,000人のうち、抗うつ薬による年間死亡者数は、TCA服用者で10.8人、SSRI服用者で35.7人、その他の抗うつ薬服用者で43.9人と推定されます。

別の研究では、抗うつ薬の使用は高齢女性1,000人中年間約5人の死亡につながっていると推定されていますが、抗うつ薬の種類による差は認められませんでした(Smoller et al., 2009)。この研究で推定値が低くなるのは、対象となった女性が比較的若く(年齢範囲:50~79歳)、抗うつ薬の有害な影響に対する耐性が強かったためと考えられます。

一方、ロフェコキシブ(バイオックス)は、1000患者年あたり約7.2件の心血管イベントを引き起こし、死亡リスクはバイオックスより低いというエビデンスが示されたにもかかわらず、市場から撤退しました(Bresalier et al., 2005)。重要な限界として、バイオックスの研究はランダム化プラセボ対照試験であったのに対し、抗うつ薬の研究はそうではなかったことが挙げられます。しかし、抗うつ薬と死亡率に関する調査は、抗うつ薬が死亡リスクを増大させていることを示唆しており、この点は、抗うつ薬の死亡率への影響に関する対照実験を実施することによってのみ、決定的に反証することができます。

抗うつ薬と死亡率に関する研究のもう一つの重要な限界は、高齢者のみを対象としている点です。抗うつ薬を服用している若い成人は、高齢者よりも有害な影響に対する耐性が高く、死亡リスクがはるかに低い可能性はありますが、これを単純に想定すべきではありません。さらに、多くの人が成人期を通して長年抗うつ薬を服用しており、長年の使用による累積的な影響がどのようなものかは不明です。抗うつ薬が脳と末梢機能の健全性に及ぼす累積的な影響は、寿命を著しく短縮させる可能性があります。現在の研究では、この可能性を排除できません。

・結論

抗うつ薬が全身のセロトニン作動性プロセスに及ぼす影響について、多くのエビデンスを検討してきました。その影響の中には広く知られているものもありますが、抗うつ薬の有用性に関する議論では、ほとんど無視されてきました。実際、抗うつ薬は安全かつ効果的であると広く信じられていますが、この信念は十分な科学的検証がないまま形成されました。現在までに得られたエビデンスの重みは、一般的に抗うつ薬は安全でも効果的でもなく、むしろ有益性よりも有害性の方が大きいことを示唆しています。

これらの効果に関するさらなる研究が明らかに必要です。特に重要な点がいくつかあります。第一に、抗うつ薬の投与を中止した後、抗うつ薬による治療を開始した当初の症状よりも重篤なうつ症状を訴える人がいます。これは正式に検証する必要があり、確認されれば、上で示した恒常性リバウンドの議論をさらに裏付けるものとなるでしょう。第二に、抗うつ薬の使用という文脈において BrdU シグナルを最も適切に解釈する方法について、さらなる研究を行う必要があります。これはアポトーシス、神経新生、あるいはその両方を反映しているのでしょうか。特に役立つのは、BrdU シグナルとアポトーシスおよび神経新生の独立した指標との間の時間的関係を調べる研究です。第三に、セロトニン作動性抗うつ薬の反復投与に伴って起こるニューロンの形態学的変化を調べる研究をさらに行う必要があります ( Kalia et al., 2000 )。第四に、抗うつ薬の長期使用が神経細胞の健全性に及ぼす影響が、認知機能の低下や認知症を引き起こす可能性について、より多くの研究を行うべきです(Jackson, 2008 ; Goveas et al., 2011)。最後に、抗うつ薬が寿命に及ぼす影響についても、より多くの研究を行うべきです。最も手軽な実験はげっ歯類で行うことができます。抗うつ薬が広く使用されるようになる前の数十年前に、このような研究が行われなかったことは問題です。

こうした研究は、抗うつ薬が全体的な機能に及ぼす影響をより深く理解することを可能にするでしょう。しかしながら、法的、倫理的、そして公衆衛生の観点から、既存のエビデンスに基づき、個々の医師や専門医療機関は、インフォームド・コンセントのガイドラインを改訂し、多くの診断における標準治療、そしてうつ病の最前線治療における抗うつ薬の位置づけを再検討することが賢明であると考えられます。抗うつ薬の効果がより得られ、副作用の影響を受けにくい患者もいるかもしれませんが、そのような患者を特定するには、さらなる研究とうつ病の病因に関するより深い理解が必要です。

患者には、現在の研究では、非常に重度のうつ病でない限り、抗うつ薬による症状緩和効果は中程度であり、臨床的に意義があるとは考えられないことが示されていることを伝える必要があります。急激に発現する有害な副作用がない限り、抗うつ薬療法は通常数ヶ月続きます。長期使用は軽度認知障害を引き起こし、運転など高度な集中力を要する作業に支障をきたし、事故のリスクが高まる可能性があることを患者に伝える必要があります。また、抗うつ薬は投与を中止すると、より重度のうつ病エピソードを誘発する可能性があることも患者に伝える必要があります。すべての患者は出血リスクの可能性について説明を受ける必要があり、医師はこれらの薬剤を他の利尿薬や抗血栓薬と併用して処方する際には特に注意する必要があります。高齢者における有害性の証拠は最も強く、転倒、低ナトリウム血症、出血、脳卒中、および死亡のリスクについて説明を受ける必要があります。

・2008年 アービング・カーシュ 論文発表(Irving Kirsch ハーバード大学医学大学院副主任)

・2010年 ジェイ・フォーニア博士 論文発表(Jay C. Fournier 精神医学および行動健康学准教授)

文中にもお二方の名前がありますが、抗うつ薬の効果について、うつ病症状の重症度と共に大きくなり、平均して、軽症または中等症の患者では最小限か、全くない、という可能性を論文で発表しました。

つまり、重症患者にしか効果はほぼなく、ほぼ無意味な薬にお金を払いながら、様々な副作用やリスク、大きなデメリットを齎していたという事なのですが、依存もさせられ、精神症状も作り出され、離脱の副産物まで作られるという、また、自殺を増加させるという(30年以上前から既に論文で指摘されていた)、これを受けて、世界中の学会が軽症うつ病患者への抗うつ薬の投与を第一選択から外すという所にまで発展しました。また、2012年には日本の学会でも、薬が効くという太鼓判を取り下げ、軽症のうつ病には確実に有効性を示す治療薬はほんんど存在しないと宣言します。(医療ガバナンス学会:小児科医:井出節雄)

このように、徐々にではありますが、常識は覆されて来ています。

ただ、未だに日本では最新の情報も入っても来なければ、テレビでも報道されず、海外で検索して調べるか、本を読むのかに限られている状態で、精神科医ですら知らない人間がいて、患者さんもそうですか、誤った認識や、誤った常識で洗脳されています。

これらの話も少しずつ、理解を生んで行きながら掲載して行きたいと思います。




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