「システムを開発したけど、どう会計処理すればいい?」「売上がまだないのに減価償却が必要なの?」——ソフトウェアの会計処理は、用途によって方法が大きく異なります。基本的な考え方を整理します。
ソフトウェアは「無形固定資産」として扱う
パソコンや機械と同じように、ソフトウェアも固定資産として計上し、減価償却を行います。ただし形のない資産(無形固定資産)であるため、償却方法や耐用年数がパソコン等とは異なります。
まず最初に判断すべきことは、そのソフトウェアが「使用を開始しているか」どうかです。
使用開始済みの場合
「ソフトウェア」として計上し、使用開始日から月割りで減価償却を行います。
まだ開発中の場合
「ソフトウェア仮勘定」として計上します。完成するまで償却は不要で、完成・使用開始後に「ソフトウェア」へ振替処理を行います。
よくある間違いとして、開発中のソフトウェアを「ソフトウェア」として計上したまま決算を組んでしまうケースがあります。完成前は「ソフトウェア仮勘定」を使い、完成・使用開始後に振り替えるのが正しい処理です。
使用目的によって、償却方法が変わる
使用を開始したソフトウェアについては、次に「自社利用か、販売目的か」を確認します。この区分によって、耐用年数や償却方法がまったく異なります。
自社利用ソフトウェア
耐用年数:5年
償却方法:定額法
計算式:取得価額 ÷ 60ヶ月 × 使用月数
販売目的ソフトウェア
最長償却期間:3年(自社利用より短い点に注意)
償却方法:見込販売収益等に基づく方法、または均等配分
計算式:取得価額 ÷ 販売見込期間(月数)× 使用月数
販売計画・事業計画等の根拠資料が必要
自社利用ソフトウェアの計算例
自社の業務管理システムを500万円で取得し、2025年10月から使用開始した場合(3月決算)を例に計算します。
5,000,000円 ÷ 60ヶ月 × 6ヶ月(10月〜3月)= 500,000円
これが当期の減価償却費です。決算整理仕訳は以下の通りです。
借方:減価償却費 500,000円
貸方:ソフトウェア 500,000円
販売目的ソフトウェアの注意点
販売・提供を目的として開発したソフトウェアの場合、自社利用とは異なるルールが適用されます。
・最長3年以内に全額償却が必要(自社利用の5年より短い)
・販売見込期間の根拠となる事業計画・販売計画を用意しておくことが重要
・見込販売収益に基づく方法と均等配分を比較し、いずれか大きい方を採用
・売上がゼロであっても、使用開始後は償却が必要
販売目的ソフトウェアは自社利用より早く償却しなければならないため、取得価額が大きい場合は利益への影響も大きくなります。取得時から計画的に処理方針を決めておくことが重要です。
売上がゼロでも減価償却は必要か?
「まだ売上が立っていないのに減価償却が必要なの?」という疑問をよく受けます。答えは**「使用開始後であれば必要」**です。
減価償却は売上の有無に関わらず、資産を使用可能な状態に置いている期間中は計上する必要があります。スタートアップや創業初期の法人でも、ソフトウェアを使い始めた時点から償却を開始してください。
少額のソフトウェアはどう扱う?
取得価額によって処理方法が異なります。
・10万円未満:消耗品費として全額費用処理が可能
・10万円以上30万円未満:青色申告の中小企業者であれば少額減価償却資産の特例として全額費用処理できる場合あり(年間300万円限度)
・30万円以上:原則として固定資産として計上し減価償却が必要
実務上の確認フロー
ソフトウェアの会計処理を行う際は、以下の順番で確認を進めると整理しやすいです。
1.使用を開始しているか確認 → 開発中であればソフトウェア仮勘定のまま
2.自社利用か販売目的かを確認 → 用途によって耐用年数・償却方法が異なる
3.取得価額・使用開始日を確認 → 使用開始日が不明な場合は合理的な日付を設定
4.減価償却費を計算・計上 → 使用開始月から期末までの月数で月割り計算
クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード等)の固定資産台帳を活用すると自動計算できるため、計算ミスを防ぐことができます。
まとめ
ソフトウェアの会計処理のポイントをまとめると以下の通りです。
・使用開始前は「ソフトウェア仮勘定」、使用開始後は「ソフトウェア」として計上
・自社利用は耐用年数5年、販売目的は最長3年と処理方法が異なる
・売上がゼロでも、使用開始後は減価償却が必要
・販売目的の場合は販売見込期間の根拠資料を準備しておく
ソフトウェアの処理方法に迷った場合や、自社の状況に合った処理を確認したい場合は、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年6月時点の情報に基づいています。税法の改正等により内容が変わる場合があります。個別のご状況については必ずご相談ください。