経理の仕事はどの国でも似ている
私は前職の上場企業でスペインとタイの子会社経理と、現職の不動産会社でベルギーの企業と経理面について連携して数年間業務をしていました。
現地企業の経理はどのように仕事をしているのか、どんなシステムを使って日々業務を行っているのかを、実務を通じて見てきました。
今回ご紹介する世界の経理実務について、私の実体験から見てきたことを紹介します。
まず前提として簿記の知識は、海外でも通用します。
例えば基本的な会計原則について、会計の基本原則は世界的に共通している部分が多いです。
従って、借方貸方などの簿記の基本知識、取引仕訳、財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)の作成、財務分析などのスキルはどこの国でも基本的に活かせます。
そもそも海外を飛び回るようなエリートビジネスパーソンは、アカウンティングやファイナンスの知識は必須なので、経理職ではない人でも簿記の基本知識は習得しているはずです。
ただ、財務部門や経理部門、経営企画部門など専門知識が必要になる職種で働くとなると当然基本的な知識だけでは仕事ができません。
今回のテーマである『海外企業の経理』として海外で働くとなると、語学力と現地の会計基準の知識も身に付けなければなりません。
ヨーロッパの企業やEU加盟国の上場企業等で働くなら国際会計基準(IFRS)を勉強しなければなりませんし、アメリカの企業で働くなら米国会計基準(USGAAP)を勉強する必要があります。
※ちなみに、IFRSは「イファース」や「アイファレス」と読み、USGAAPは「ユーエスギャップ」と読みます。こちらは参考までに。
ただ先にも述べたように国が違っても簿記会計のルールには類似性があり、日本会計基準(J-GAAP)で簿記を勉強された人ならIFRSでもUSGAAPでも習得しやすいはずです。
そして簿記会計の知識があり、日本で経理としての実務経験がある人なら、国が変わっても経理業務ならすぐに慣れるはずです。
もちろんその国の言語で会話ができることが前提ですが。
やっぱりExcelはどの国でも共通だった
実務的な共通点は、やはりWindowsのExcelです。
スペイン、タイ、ベルギーの経理担当者と連絡やり取りした時も、Excelファイルをメールに添付し、お互いに確認しながら仕事を進めることがよくありました。
当時、ベルギーの取引先企業には特に連絡やり取りが多かった女性の経理担当がいて、その人はExcel VBAや高度な関数を使いこなしていました。
経理業務はExcelスキルが高いとかなりやり易くなりますので、国内海外問わず、経理として長く働きたいと思うならExcelスキルは習得しておいた方が絶対にいいです。
ただ、海外企業で働きたいならExcelスキル習得の優先度は低く、
第一優先は、なんと言っても「語学力」です。
第二は「簿記会計」、第三に「Excel」と考えておけばいいでしょう。
ただし勉強において注意点としては、特定の国や地域の税制度、法律、特殊な業界ルールなどについては、それぞれの国の特性によるところが大きいです。
特に税法や会社法は、国や地域により大きく異なるため、この点についても自分が働く国についてしっかり勉強しておく必要があります。
語学力は資格では証明できない
断言しますが、海外企業で働く場合、日本が主催している資格の勉強だけでは足りません。
むしろTOEICや〇〇検定とか、そういうので高得点目指すのではなく、勉強は英会話と英文読解力に特化した方がいいと思います。
外国企業で働くにしても、外資系企業など拠点は日本で働くなら語学系資格の取得は有利です。
日本拠点であれば、職場には日本人も多いでしょうし、TOEICでハイスコアでも取れば就職面接で有利になるでしょう。
ですが海外に行って現地で働くとなると、日本語を話せる外国人や日本人の仕事仲間は基本的におらず、
日本語が一切通じない職場の中では、たとえ経理実務ができても、仕事仲間とコミュニケーションが取れない以上業務は進められません。
「じゃあ英語を話せるようになるために、TOEICを取ろう」と多くの日本人は考えます。
ですが、TOEICスコア900点以上獲得した日本人でも、外国人とビジネス英会話になると全くコミュニケーションが取れないという人は多いです。
逆に、TOEICを一度も受験したことがない人でも、外国人と会話することが大好きだったり、数年間海外で生活していた人の方が、相手が外国人でも仕事をスムーズに進められていました。
ここで言えることは、外国人と働きたいなら、語学系資格の勉強ではなく、その語学でのコミュニケーションを勉強すべきだということです。
外国語でのコミュニケーションの勉強方法は、とにかく外国人と積極的に会話することに限ります。
私がベルギーの経理担当者と仕事をしていた時、英文の請求書や契約書を読んだり、現地の担当者と英語で毎日会話しなければならないので、嫌でも語学力は身に付きます。
ですが、それは相手から気に入られたらの話です。
相手に気に入られて、一緒に仕事をしたいと思ってもらえなければ、お互いに仕事は上手くいきません。
だから、資格取得より実際のコミュニケーション能力の方が大切なのです。
海外企業で働くためのキャリアプラン
私の場合、海外で働きたいとか、外資系企業の経理をやりたいとかそういう希望は特にありませんでした。
たまたま勤務していた会社が海外に子会社を設立したり、外国企業を買収したり、独占売買取引を始めたりしたことで、現地法人の経理担当者と一緒に仕事をする機会が多かっただけです。
真剣にグローバルな経理キャリアを目指すなら、積極的に行動しなければなりません。
まず、簿記会計知識と語学力は必須であることは上述しました。
簿記検定1級や米国公認会計士などの資格取得を目指すのもいいでしょう。
そして実務経験は国内外問わず、人材採用で最も求められる条件なので、経理として働きながら勉強することが大切です。
大企業の経理部社員には、公認会計士や税理士、米国公認会計士などの資格保有者も少なくないですが、資格手当が大きいため働きながら勉強して合格した人も多いようです。
次に外国語の勉強についてですが、とにかく毎日外国人と会話することです。
今ではChat GPTでどんな言語でも会話ラリーができますので、AIで勉強するのもありです。
または、外国人がよく集まるようなBARに行くこともお勧めです。
HUB(イングリッシュパブ)やゴールデン街(東京都新宿区)は、店内が混んでくると人との距離が近くなり、知らない人同士でも会話する機会がよくあります。
基本的に英語で話すことになりますが、そこで積極的に外国人と会話することで、確実にコミュニケーションスキルは向上します。
私の友人に毎晩HUBで外国人と会話することで英会話を習得した人もいますので、学習効果は確実にあります。
ただ、酒に酔ってベタベタ触ってくる変態になったり暴力的になったりする危ない外国人も少なくないので、知らない人に話しかけ過ぎるのは注意が必要です。
簿記会計の知識が十分につき、
外国人とのコミュニケーションも日常会話なら不自由なくできるようになり、経理の実務経験も4〜5年程度あれば、海外企業の経理部でも即戦力としてある程度通じるでしょう。
いきなり海外へ飛び込まず、まず日本で経験してみる
ここまで外国企業での経理について紹介しましたが、本当に外国企業の経理をしたいのか、一度日本で試してみることも検討しましょう。
その方法とは、海外事業の売上が大きい企業の経理に転職してみることです。
海外取引が盛んな企業の経理部は、経理関係の資料が英文であることが多いです。
海外事業所の経理担当者と英語で話す機会も多いかもしれません。
そのため、海外を視野にキャリアを築きたいのであれば、このような経験も練習になり貴重でしょう。
ここで、本当に自分は海外でのキャリアを築きたいのか、自分に務まるかも確認できるかもしれません。
転職面接の際は、過去の実務で海外対応していた経験があるなら積極的にアピールするべきです。
海外での実務経験は、数年間の勤務経験だけをいうものではありません。
たった数ヶ月の海外赴任や、1週間の海外出張でも、立派な海外での実務経験になりますし、私のように日本で働きながら外国企業の経理担当者と仕事をした経験もあるなら、それも立派な実務経験です。
先ほど、外国企業で働くなら語学系資格は必要ないと伝えましたが、日本企業に応募するとなると、英語関係の資格は有利に働きます。
ひとまず日系企業へ転職するなら、TOEICで700点や800点など履歴書に書けるくらいのスコアは取得しておいた方がいいでしょう。