英文校正に「唯一の正解」はあるのか?― 小さな修正が教えてくれたこと

英文校正に「唯一の正解」はあるのか?― 小さな修正が教えてくれたこと

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学び
久しぶりのブログ更新ですが、今回は読みものにしてみました。
ある日の校正会社の裏側です。
少しだけ覗いてみませんか。

ある日、編集担当者の方から一本の問い合わせをいただきました。

「この修正には、どのような理由があるのでしょうか。」
英文校正では、ごく自然な、またよくいただくお問い合わせです。
しかし、このような一見シンプルな質問ほど、実は回答に悩むことがあります。

「修正したのだから、明確なルールがあるはず。」
そう思われるかもしれません。
もちろん、多くの修正には文法や語法に基づく理由があります。

一方で、「どちらも英語として成立する表現」の中から、より適切と思われる表現を選んでいるケースも少なくありません。

「正しい英語」と「より適した英語」は違う
英文校正というと、「誤った英語を正しい英語に直す仕事」というイメージを持たれることがあります。

もちろん、それは間違いではありません。

例えば、冠詞や時制、主語と動詞の一致などは、文法に基づいて修正理由を説明できます。

一方で、学術論文の校正では、それだけではない修正も数多くあります。

例えば、

ハイフンを入れるかどうか

タイトルでどこまで大文字にするか

カンマの位置

同じ意味でも、どちらの表現を選ぶか

こうした修正には、「絶対にこちらが正しい」と言い切れないものも少なくありません。

今回いただいたお問い合わせも、その一例でした。著者が用いた表現と校正者が修正した表現のどちらも、英語論文ではよく使用される表記であり、意味や文法に違いはありません。

ごくわずかな違いではあるものの、その修正内容をノンネイティブの視点で見たとき、「正解はどちらなのだろう」と迷ってしまうのも無理はありません。

そんなごくわずかな違いであっても、校正者は経験や慣例、あるいはスタイルを踏まえて、より適していると思われる表記を選ぶことがあります。

ネイティブでも意見が分かれることがある
「ネイティブなら答えは一つでは?」と思われるかもしれません。
でも実際のところ、ネイティブ校正者だからといって、全員が同じ判断をするわけではありません。

アメリカ英語とイギリス英語では表記が異なることもありますし、出版社やジャーナルごとに採用しているスタイルもさまざまです。

さらに、校正者がどのような環境で教育や研究に携わってきたかによっても、「自然だ」と感じる表現には違いが生まれます。

こういった面も考慮すると、英文校正でも「これだけが唯一の正解」と言い切れない場面は少なくありません。

これは英語だけに限った話ではありません。
言語の種類を問わず、同じ内容を別の表現で何通りにも表すことができるのです。

AIが普及した今だからこそ
最近は生成AIに英文を相談する機会も増えました。

AIは非常に優秀で、「こちらの表現が一般的です」と答えてくれることも少なくありません。

実際、多くの場面でその回答は役に立ちます。

一方で、「こちらが正解です」と断定的に示されることで、本来は複数の選択肢があることに気付きにくくなる場合もあります。

しかし、英文校正の現場では、「どちらも使われています」「投稿先によって異なります」「著者の意向を尊重した方がよいでしょう」という判断が求められる場面もあります。

AIは「正しそうな答え」を提示することは得意です。

一方で、実務では「今回のケースでは、どこに着地点を置くのが最もよいか」を考える必要があります。

そこには、言葉だけではなく、投稿先や編集方針、著者の希望といった背景も関わってきます。

英文校正は「正解」だけを教える仕事ではない
今回の問い合わせを通じて、改めて感じたことがあります。

英文校正では、「正解」をお伝えすることももちろん大切です。

ただ、それだけでは十分ではありません。

私たちの役割は、英語そのものを教えることではなく、研究成果をより適切な形で世界へ発信できるようお手伝いすることです。

そのためには、一般的な学術英語を基本としながらも、投稿先の方針や著者のご意向を尊重し、ときには柔軟な判断をすることも大切になります。

「唯一の正解」を押し付けるのではなく、その論文にとって最適な表現を一緒に考える。

それが、私たちの考える英文校正です。

おわりに
今回の問い合わせは、とてもシンプルだっただけに回答に悩みました。

けれど、そのおかげで改めて考える機会にもなりました。

英文校正には、明確なルールで説明できる修正もあれば、経験やスタイル、投稿先とのバランスを考えながら判断する修正もあります。

そして、そのどちらも、論文をより良い形で世に送り出すためには欠かせない仕事です。

「回答が難しいな」と感じた問い合わせが、結果として自分たちの仕事の本質を見つめ直すきっかけになりました。

もしかすると、こうした小さな疑問こそが、より良いサービスにつながるヒントなのかもしれません。

今回は実際の出来事を通して、英文校正会社の仕事の裏側を少し覗いていただきました。

興味を持っていただけたら、また翻訳や英文校正の仕事にまつわる話もご紹介したいと思います。
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