──事業拡張のための会社/事業紹介資料の事例
ファッションイベント企画 W社様
協業や資金調達の前に「事業の全体像」を共通言語化すると、商談が一気に進みます。
今回は、アイデアを「共通言語」に落と込み、土台を作った事例を紹介します。
商談に備えて先回りの資料化
W社様は、オーディション体験型のファッションイベントを定期的に開催されている企業です。
主な事業であるファッションイベントは、参加者の熱意が高く、華やかで、メディアやSNSとの相性もよいことから、順調に実績を積み上げ、数年で大きな注目を集めるまでに成長。
事業が安定し、事業家・投資家から声がかかる機会が増えたタイミングで、「商談に備えて今のうちに整えておきたいから」とI様から相談がありました。
社内向けの資料は作ってきたものの、商談用の資料は初めて。
「何が必要か分からないので、それも含めてアドバイスしてほしい」という依頼でした。
認識のズレ
この時点で、I様の中にある確かな手応えは、まだ「ビジネスの共通言語」になっていませんでした。
I様が商談で一番伝えたいのは、
「夢を実現するために本気で取り組むイベント参加者たちの輝き」。
相談を受けた時期は、まさにイベントの真っ最中。
I様は目の前でその「輝き」を体感しているタイミングでした。
一方で私は、
・多くの人を夢中にさせる企画と演出
・初期参加者数千人を、5回のオーディションで十数人に絞り込む運用の手際
・自然と利益が生まれるエコシステムの設計力
こそが、商談で評価されるポイントになると感じていました。
特に、応募者管理から情報発信、メッセージのやりとり、入金までを一元化するオリジナルアプリが秀逸でした。
ただ、I様にとっては「ビジネスとして当然」の範囲。最初は価値の置き方が噛み合いませんでした。
参加者の夢から価値を語りたいI様と、仕組み・再現性を軸に語りたい私。
視点が揃わないまま、手探りのディスカッションが続きました。
一枚の地図
状況を変えたのは、1枚のスライドでした。
オーディションの仕組みが複雑だったため、I様には「どの段階で何が行われるか」を整理してもらっていました。
私はそれを図に起こして、スライド化してみたのです。
この1枚が、議論の基準点になりました。
正直、最初の図は間違いだらけでした。
しかし、I様は「難しいですよね」と言いながら一緒に確認してくださり、情報の修正や抜け漏れを埋めてくれました。
そして、完成した図を見て、I様は嬉しそうにこう言いました。
「これがあると格段に先方に説明しやすくなりますね」
さらに続けて、
「スタッフからも、新しい人がイベントの仕組みをすべて理解するのに時間がかかるという声が上がっていたんです。こういうものがあれば、誰もがオーディションの仕組みをすぐに理解できるようになると思います」
そう、I様に必要なのは、商談で何を伝えるかを考えることではなく、「イベントの全貌」を整理し、共有できる形で表現することでした。
お互いにその点について納得できたことで、
・I様が「伝えたいこと」のメモを作成する
・私が資料化する
・一緒に足りない部分を補い、間違いを訂正していく
という進め方に切り替え、資料制作が一気に前に進み始めました。
アイデアを表現すること
I様は「まず全部を一度、形にしてみる」と腹を決め、短い時間でアイデアを言語化・資料化していきました。
しかし、これができる人は、実は多くありません。
技術的に難しいだけではなく、構想を言葉や形にした瞬間、矛盾や弱点まで可視化されてしまうからです。
私も、「頭の中では完璧だったアイデアが、言葉や図表に落とした途端に輝きを失う」ことに戸惑う方を、多くの現場で見てきました。
今回、I様は不完全さを恐れずに出し切った。
議論の基準点ができ、次の打ち手が積み上がっていきました。
この姿勢こそが、事業を前に進める推進力になったと感じています。
「つなぎ」を作る
ただ、伝えたいことを表現し、並べるだけでは商談資料は成立しません。
相手が「納得しながらストーリーを理解し、決断する」ためには、
・なぜ必要か
・どう実現しているか
・何が良いのか
・本当に成立するのか
を、自然な順番と理由でつないでいく必要があります。
I様のアイデアが増えるほど、伝えるべき「要点」は強くなります。
しかし要点が強くなるほど、要点同士をつなぐ「順番」と「理由」も強くなければ、ストーリーとして成立しません。
当時はイベント進行中で状況が動いていたため、I様の認識やアイデアも日々更新されていました。
そのたびに「つなぎ」も作り替える必要があり、正直、脳が焼き切れるくらい考えました。今回はここが最も難しい部分でした。
最終的には、次の4つで要点と要点をつなぎました。
① オーディション参加型である必要性(市場・参加者心理)
② それを支える仕組み(運営体制とオリジナルアプリ)
③ そこから生まれる価値(社会的意義)
④ 実際に生まれるリターンとリスク(経費と売上見込み等)
この4つを「つなぎ」にすることで、I様の「参加者の輝き」も、私が強いと感じた「事業の再現性」も、
同じ資料の中で矛盾なく立ち上げることができました。
協業提案に耐える「商談の土台」へ
こうして出来上がった資料は、W社様の事業を詳細に説明しながら、I様のアイデアの全貌を整理し、協業先に応じて提案の切り口を柔軟に変えられる「商談の土台」になりました。
もともとの事業アイデアが強く、エコシステムが堅牢だったことに加えて、
「全体像の可視化」と「つなぎの設計」によって、価値が伝わる基本形に落とし込めたことが大きかったと感じています。
現在W社様は、各地に関連スクールを開き、イベントの裾野を広げています。
参加者からインフルエンサーへ成長する事例も生まれ、事業は次のフェーズへ進んでいます。
この事例が示していること
この事例で一番難しかったのは、経営者の頭の中にある全貌を「テキストと図表という共通言語」に変えることでした。
それは技術的に難しいだけではありません。
多くの人にとって、自分の構想を言葉や形にすることは怖いことです。
言語化した瞬間に、矛盾や弱点まで露わになってしまうからです。
だからこそ無意識に避けてしまい、「形にする」段階で止まってしまうことが多いのだと感じます。
恐れずにアイデアを表現し、共有できる形に落とし込む。
その一歩が、次の商談と次の展開を動かす推進力になります。
※本記事は守秘のため、固有名詞や詳細は伏せていますが、プロセスは実案件で用いたものです。
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「何をどう伝えるべきか」から一緒に整理し、
実際に商談で使える資料に落とし込みます。
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