──共創パートナー獲得のための会社/事業紹介資料の事例
ディープテック企業 R社様
今回は難易度の高いディープテック案件についての事例紹介です。
難解な既存資料
R社様からのご依頼は、
「研究が進み、社会実装の段階に入った。共創パートナーとなる企業や団体を探すため、会社と事業を紹介する資料が必要」
というものでした。
R社様は社会実装前の先端技術を研究・開発し、事業化を目指す──いわゆるディープテック企業です。
一般的な資料作成は、セールスやマーケティング文脈で語られることが多いのですが、ディープテック領域は前提となる専門知識の層が厚く、伝え方の設計がまったく異なります。
今回は特に「共創パートナー探し」が目的。
専門的な情報・技術を、公共領域の関係者や投資家など“非専門家”にも伝わる形で、説明資料へ落とし込まなければなりません。
私は過去に事業会社で、エネルギー・交通などインフラ領域の技術者にデザイン支援を行い、理系の考えや技術をビジネス文脈で表現してきた経験があったため、R社さまの支援も可能と判断し、本件をお引き受けしました。
…が、共有いただいた資料は想像以上に難しかった💦
「既存の資料があるにはあるのですが、研究者が作ったもので、一般のビジネスマンには理解が難しくて」
解説のメモも添えていただいたのですが、この時点では何が何だか、まったくわかりませんでした。
こうしてR社様のお仕事は、既存資料とメモの読み解きから始まることになりました。
研究者の思考空間
渡された既存資料を何度も何度も読み込んで、なんとか見えてきたのは、10数ページの資料にぎっしりと、以下のような研究者の方の思考が「圧縮」されているということでした。
・会社の紹介
・この領域の前提条件
・基本的な技術の説明
・研究の進捗
・提携企業紹介
・社会に貢献するためのビジョン
・目指すべき未来
・具体的なビジネスモデル
・それを構築するための技術の説明
・研究者としての意気込み
・……
私がなぜ「圧縮」と感じたかというと、
ほぼほぼ全ての情報が網羅されているのに、受け手に伝わる順番で並んでいない、そして、情報の居場所バラバラだったからです。
読んでいて、情報をぎゅーっと押しつぶし、一塊にまとめたような感触がありました。
実はこれは、研究者や優秀なエンジニアの方が作成する資料によく見られる現象です。
人間の思考は、そもそもテキストや図表のような平面ではなく、立体的なネットワークに近い。
例えば「猫」という言葉一つとっても、「哺乳類」「4本足の動物」といった分類情報から、「かわいい」「好き」などの感情、「友人の三毛猫」「近所でみかけるハチワレ猫」といった記憶まで、複数のレイヤーの情報が同時に紐づいています。
科学者・エンジニアの思考空間、特に専門分野のそれは、はるかに複雑で緻密なものであることが想像されます。
技術的な前提、研究の歴史、最新の知見までの膨大な知識・情報が、頭の中で立体的に配置され、相互にリンクし、常時更新されている状態でしょう。
R社様の場合はさらにビジネスの構想まで加わっているため、複数の時間軸(現在/研究の進捗/社会実装後の世界)まで構造に組み込まれていました。
つまり、知識や情報が「4次元的」な形で構築されているのですが、それをスライドという「文章+図表」の平面(1.5次元)に落とすと、思考空間での位置関係や連携を再現することができません。
結果として、優先順位と配置が崩れ、「難解な資料」になってしまう。
(というのが私の仮説です💦)
R社様の資料もまさにその状態で、技術説明がビジョンの紹介文に混ざっていたり、その続きが別ページの図表キャプションに入っていたりと、情報の居場所が定まっていない状態でした。
私の経験の中でも特に専門性が厚いこともあり、読み解きに時間を要する案件でした💦
圧縮された思考を、解凍する
では、こうした「圧縮型」の資料を、どうやって解凍し、分解するのか。
魔法のテンプレや小手先のハックはありません。
やることはひとつ。
資料と真正面から向き合い、内容が頭に馴染むまで再構成のループを回すことだけです。
具体的には、こんな手順です。
1. 全スライドのラフ構成を作り、既存資料のどの要素を使うか決める
2. 使う要素をコピペ/スクショで張り込み、手早くスライド化する
3. 冷静に読み直し、ダメな部分を直して 1 に戻る
4. 1〜3 を、1日に2〜3回まわす
このループを数日(体感では5日ほど)続けると、内容が頭に馴染み、
事業の全体像や、要素同士の意味・つながりが見えてきます。
特に、資料中のテキストのうち、連携を示す副詞や接続詞、動詞の能動/受動などが読み取れるようになってくる。
これらは「何を、誰が、どうするのか」を語っているので、その意味合いを読み取れるようになると、一気に構造が立ち上がってきます。
この状態になって初めて、資料を「パズルのピース」として分解し、非専門家にも伝わる順番で、ビジネス資料として再構成できるようになります。
正直力技です(血反吐)。
でも他に方法はありません。この段階は無心で情報と知識に馴染むのみです。
不足情報を見つけ、追加提案する
何日かひたすら資料に向き合い、ようやくビジネス資料として再構築できるようになると、今度は「足りないところ」が見えてきます。
R社さまの既存資料では、
・もっと丁寧に説明するべき箇所
とともに、
・パートナー企業、投資家が知りたいクリティカル情報
が、ストーリーの流れ的に不足してしまっていました。
これは、資料を作成した時点では優先度が高くなかったことや、情報量のバランスの中でテキストとして薄く見えてしまったことが理由として考えられます。
そういった箇所には、ラフ案で不足要素をスライド上に仮置きして補い、
「この流れだと、ここにこの情報があると理解が一段深まります」
という形で、必要性ごとに提案しました。
企画としてご了解いただけたものについては、追加の説明をいただいたり、新たに画像を撮影していただくなどしながら、資料に反映していきます。
全体の流れが整うと、また新たに先方から「これをもっと強調したい」「追加の要素を入れたい」「順番的にはこっちが適切」などのアイデアも出てきます。
次第にやり取りの流れがよくなり、追加 → 調整 → 反映を何度か繰り返しながら、少しずつ完成形に近づけることができるようになりました。
今はまだない、未来の技術
ディープテック系の資料作成で難しいのは、今はまだ知られていることが少ない技術を扱っていることです。
つまり、ストックフォトや素材サイトに適切な画像がない!ことがほとんどなのです。
やっと近いものを見つけても、実際の用途やメーカーの特定、材質などの微妙な違いで意図が合わない、ということも。
R社様の案件では、AIによる画像生成を採用しました。
が、ここで、もう一つ難しい論点が出てきます。
「法的な安全性」です。
共創パートナーとして行政も視野に入っていたため、資料内の画像についても、グレーゾーンを避けた安全性の高い運用にする必要があり、生成ツールや生成条件も含めて慎重な判断が必要でした。
今回は、現時点では最も安全性を担保できると考えられるツールを中心に、試行錯誤しながら必要なビジュアルを作っていきましたが、クオリティと内容を両立させるには、正直かなりの粘りが必要でした。
それでも、過去、インフラ系の技術部門を支援していた頃は必要な画像をすべてIllustratorとPhotoshopで自作していたことを思うと、AIでリアルな画像を何度でも試せるのは、夢のような環境です😭
とても難しいことでしたけどね!
最も重要なこと、クロージング
プレゼンテーションで最も重要なこと、それはクロージング、と私は考えています。
クロージングは、相手に「次の一歩」を渡すための言葉です。
どれだけストーリーを丁寧に組み立てても、最後の受け皿であるクロージングが弱いと、聞き手は次の一歩を踏み出せません。
尻すぼみのまま終われば、まとまるものもまとまりません。
そのため私の資料作成では、ストーリーの流れを設計し終えたあとに、今度はクロージングから逆算して全体を見直すということを追加します。
これにより、最後の言葉に自然と収束するように調整して仕上げることができ、意思決定の負荷が小さくなります。
R社様のケースでは、最終的なクロージングを「次は具体的な提案をお持ちします」に設定しました。
相手に求めるのは決裁ではなく、次回の合意。
資料全体も「提案を受け取る」流れに整え直し、次回の目的が明確になるよう仕上げました。
こうして完成した資料は、R社様からは「こんな資料が欲しかったんです!」と大変喜んでいただけるものとなりました
その後R社様は、企業や公共領域との共創を含め、活動の幅を広げられています。
この事例が示していること
ディープテック領域の資料作成では、単に「先端技術を説明する」ことではなく、「専門家の頭の中にある構造」を、非専門家の理解の階段へ変換することが大切です。
今回のR社様の事例で、特に重要だったのは次の3点です。
1)圧縮された思考の解凍
──情報を減らすのではなく、構造をほどき、適切に配置する。
2)不足情報を特定し、意思決定に必要な要素を追加する
──共創や投資の判断に必要な“クリティカル情報”を、流れの中に補う。
3)最後のクロージングに向けて、全体を収束させる
──聞き手が「次の一歩」を踏み出せる形に整える。
ディープテック領域では「伝える」こと自体が競争優位になります。
技術がどれだけ優れていても、理解されなければ協業も投資も進まないからです。
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私の資料作成サービスでは、専門的な内容を読み解き、非専門家に伝わるよう再設計し、最後のクロージングまで整えます。
「今ある資料が難しすぎて伝わらない」という方は、お気軽にメッセージからご相談ください🙇♀️
難しければ難しいほど燃えるタイプです!
※本記事は守秘のため、固有名詞や技術詳細は伏せていますが、プロセスは実案件で用いたものです。