junction ~わたしの人生を変えたこと㉔~

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コラム
~前回㉓からのつづき~

膠原病内科の川本先生は2通の手紙を読み終えると電子カルテの入力に集中していました。


4年以上も病気を見過ごしていたことの言い訳を考えているのでしょうか。


それとも、他院での診断を持ち込んだわたしに立腹しているのでしょうか。


川本先生の気持ちを想像しながら、じっと次の言葉を待っていたのです。


息がつまるほどの緊張は、淡々とした川本先生の言葉でほぐれていきました。


「とりあえず、脳神経内科の吉田先生の指示通りに注射の量を戻しますね。」


結局、川本先生はこの病気については詳しくなく全面的に吉田先生の治療方針に従うかたちになりました。


川本先生のお気持ちがわからないまま、不足分の注射薬を受け取って帰宅したわたしたち。


混み始めた高速道路を自宅に向かいながら、病名の分からなかった4年間をふり返っていました。


なん度も希望と絶望をくり返したこと、死後に解剖(献体)を望んでいたこと。


まだ明るい夕方の街並みを見下ろしながら、二人は過去から未来の話へとふくらませていました。


現在でも研究段階にあるこの病名には保険診療で使える治療薬は多くはないのです。


この”生物学的製剤の注射”も新たに見つかった脳神経内科の病名では処方出来ません。


あくまでも膠原病の治療として処方を受けるしかありませんでした。
複雑な医療保険制度のなかでも有り難いことに治療を続けることができたことにホッとしました。


そして、注射の量が元に戻った
たったこれだけのことで体調は目に見えて回復していきました。


痛む関節は消えて、起きていられる時間がふえていきました。


買い忘れや献立がたてられないなどの困りごとも減りました。


両手両足の同時におきた腱鞘炎も気がつくと治まっていたのです。


新型感染症のパンデミックによる自粛・ステイホームの2020年


子どもたちの学校もオンラインなどを活用しながら徐々に動き出していました。


脳神経内科でもステロイドの点滴治療を試したり、漢方薬を試したり。


効果をみながら治療方針を試行錯誤しているようでした。


感染症に世界が大騒ぎをしているなか、わたしも感染防止のために自宅で過ごしていました。


すでに病気で4年以上も《一人ステイホーム》を過ごしてきたので、さほど不便も感じません。


むしろテイクアウトやお取り寄せ商品などの”おうち時間”の充実がすすみ便利に感じていました。


自己注射の量を元に戻して半年もすると、痛むところはなくなり身体が楽になりました。


休みながらの家事をして、家族の世話を焼く。


自己注射を減らす以前の日常が戻っていました。


残るは、強い倦怠感と疲労感、ボーっとする頭、集中力・思考力の低下、文章理解力の低下、記憶力の問題。


相変わらず元気になったわけではないのです。


内服薬の管理方法を工夫したり、安全装置付きの器具や家電に交換することで自宅内での生活は問題なくできていました。


新型感染症の収束が見えないなか、脳神経内科の内服薬も定まり慢性期とよばれる状態になっていました。


「耳鼻科からの治療を試してみませんか?」


2022年11月。
脳神経内科の吉田先生から新たな治療法を勧められたのです。


でもこの時のわたしは、新たな治療法にまったく期待をしていません。


(先生の顔をたてるつもりで行こうかなぁ…。)


自宅の近くでこの治療法を実施している医療機関を探しました。


電車を使って通える範囲に4件の耳鼻科が見つかりました。


訪ねた耳鼻科は年配の女性医師でした。


「あなた…大変だったわねぇ。頭のボーっとする感じが楽になりますよ。」


問診票に目を通した先生はにこやかに話しかけてきました。


(ほんとかなぁ…。6年半も続いている症状が良くなるなんて…。)


信用どころか怪しい話と疑いながら、とりあえず週に一度続けてみることにしました。


治療を3~4回ほど受けたころ娘のしおりが驚いた様子で言ったのです。


「お母さん、なんか元気だよね!?」


言われてみれば、頭痛の頻度が減り、目眩も気にならなくなっていました。


あっ、頭のボーっとする感じも楽になってる!


この治療すごい、すごく効いてる!


家族も驚かせてしまうほどの効果を発揮した新たな治療法。


それは期待値ゼロから一気に希望の光となったのです。
6年半の歳月は、発病当時には中学生だった二人をそれぞれ大きく成長させました。


学校を卒業した長男のこうきは独立して巣立っていったので家族は三人に。


娘のしおりも高校を卒業して、自らの夢に向かって新しい進学先で勉強をスタートしていました。

~次回🈡につづく~

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