「介護をされてて大変ですね」
「そうですね。でも、私しかいないので」
多くの介護者は
「私しかいない」という言葉を何気なく使いますが
この言葉が
「介護者を追い詰める」言葉になっています。
これは【役割集中】です。
介護の負担は身体介助だけではありません。
実は、一人に役割が集まりすぎることが
心を疲弊させる大きな要因になっています。
役割集中とは何か?
役割集中とは、本来複数で担うはずの役割が
一人に偏ってしまう状態です。
例えば
・食事の準備
・排泄や入浴介助
・病院の付き添い
・ケアマネージャーとの連絡
・介護サービスの調整
・お金の管理
・家族への説明
・親の不安を受け止める
・将来のことを考える
これらの事を一人で抱えていることが多いです。
しかも、介護者は「やること」だけでなく
「考えること」まで担当しています。
誰も見えないところで常に頭の中は介護でいっぱいなのです。
育児に例えても同じような不満を耳にします。
・夫婦で育てているのに、自分だけが子供を育てているように感じる
・家事を分担しているのに思った以上にやってくれない
・「言ってくれたらする」ということは気付くこともこちらの役目
置かれている状況は異なっても、
不満や疲労を感じている人は
身体の疲れよりも「心の疲れ」のほうが
顕著にみられます。
本当に疲れているのは「身体」よりも「脳」
「何をしていない時間でも疲れる」
「休む時間はあるのに、休んだ気にならない」
心理学では人は複数の役割を動じに抱え続けると
認知的負荷(頭の負担)が増え続けることが知られています。
・今日はデイサービスだったかな?
・薬は残っていたかな?
・来月の受診予約は?
・もし転倒したら
・今日の献立は
・掃除できていない場所を終わらせないと
・今月の支払い
・施設の費用はいくらかな・・・・
など
24時間身体を動かしているわけではないのですが
24時間「考え続けている」のです。
だから休んでも疲れが取れず、疲労は溜まっていきます。
「全部自分でやる」が習慣になる理由
では、なぜ、役割が集中してしまうのか?
理由は【責任感】です。
「自分でやったほうが早い」
「親に悪い」
「兄弟は忙しい」
「頼んでも、やり方が気に入らない。機嫌を取るのが面倒。結局自分がやることになる」
最初は「自分がやったほうが丸く収まる」と思っていたものが
少しずつ「やらないといけない」状況に変わっていきます。
そうして、気付いた時には
周囲が「任せておけばやってくれる」という考えになってしまい
誰も「言われないと」役割を引き受けなくなっています。
これは介助者が優しいからではありません。
人は一度、役割を固定されると
その状態が続きやすいという特徴があります。
家族の中でも
「いつもの担当」が自然とできあがってしまうのです。
役割集中が生み出す悪循環
役割が集中すると
役割が増える
↓
休めなくなる
↓
心の余裕がなくなる
↓
イライラしやすくなる
↓
自己嫌悪になる
↓
「もっと頑張らないと」とさらに抱え込む
↓
役割を増やしてしまう
この悪循環に入ると
「もっと頑張る」ことが解決策ではなくなります。
自己嫌悪が強くなり、
無気力や無力感が強まり
知らず知らずに介護うつのような症状に陥る方も
少なくありません。
解決の第一歩 「介護」を減らすことはではない
ここで、
「介護」を減らさないとと考えてしまいます。
サービスを利用して負担を減らすことは
もちろん大切です。
でも、それ以上に必要なのは
「役割を分けること」です。
例えば
・病院予約だけは兄弟に頼む
・ケアマネの連絡だけは家族で分担する
・買い物だけ宅配を利用する
・書類整理だけは家族に任せる
介護そのものを代わってもらえなくても
役割を少しずつ分散させることはできます。
心理的負担は「全部」ではなく
「一部」を手放すだけでも軽くなります。
役割集中にある方は役割を他の人に渡すことにも
恐怖心や大丈夫かなと心配になります。
そのため、全てを手放すことはとてもハードルが高い。
だから、「一部」だけ手放すことが必要です。
休むとは何もしないことではない
「休んでも結局介護のことを考えてしまう」
これは自然な反応です。
だから必要なのは
介護から完全に離れる時間ではなく
「介護者という役割を一時的に降ろす時間」です。
親の子供ではなく
介護者でもなく
一人の自分として過ごす時間
・ほっとできる好きな飲み物を飲む
・風景をみながら散歩をする
・好きな映画をみる
・しばらく会えていなかった友人に会う
・短時間でも好きなことに没頭できる時間を作る
そんな時間は怠けている時間ではありません。
現状の生活を続けるための大切な基盤作りです。
最後に
介護者は自分の頑張りを過小評価しすぎです。
「これくらい普通」
「もっと大変な人がいる」
そう自分を奮い立たせて
自分の限界を見て見ぬふりをしてしまいます。
本当に心を追いつけるのは介護の量ではなく
「一人に役割が集中し続けること」です。
もし今、「なぜこんなに疲れているのだろう?」
と感じるなら
自分に問いかけてみてください。
「私は今、いくつの役割を一人で抱えているのだろう?」
その答えが見えてきたとき、
「もっと頑張る」以外の
選択肢も見えてくると思います。
介護の悩みは
「気持ち」ではなく
「構造」から
生まれることが多いです。
「自分が悪い」と決して思わず
「構造」に目を向けていくきっかけになればと思います。