♣クラブクワッド②
=ヘルメット持論=「乗るなら、かぶれ!」
■昔、
私が小さな営業会社でリーダーをしていた頃の話です。
その会社は「やる気さえあれば年齢不問」という、
良く言えば活気に満ちた、少々言い方を変えれば
勢い任せの会社でした。
■私のチームの班員さんの中に、
黒松さんという人がいました。
■還暦をゆうに超えていましたが、
元気そうなおじさんでした。
■経歴は、なかなか個性的で、
某有名大学卒!なのですが、
そのあとは、いろんな所の職を転々と。
俗にいう、“ 転職ジャーニーマン ” のような人でした。
■とても誠実な方なのですが、
頭が良すぎて?少々理屈っぽい。
そのためか?営業成績は、はかばかしくなく
超低空飛行をしていました。
■毎月の成績発表会では、
昔、ヤンチャだったと言われていた社長から
手厳しい叱責が飛びます。
「お前なんかぁ!!◯めちまえーー!!◯ねーー!!ボケーー!!」
■これは、……もう営業会議ちゃう、
ほぼリング外の大乱闘や~という感じでした。
■それに対して黒松さんは、終始静かに頭を下げ、
「申し訳ございません。次、頑張ります。」
とだけ答えるのです。
■その姿に、
私はある種の強さを感じていました。
■どんな言葉を浴びても、
翌日には何事もなかったかのように出社する。
まさに、“ 折れない人 ” でした。
私は、心の中で密かに、この鋼の精神力に敬意を表していました。
■そんなある日。
皆勤賞(金一封)を常に目指しているはずの黒松さんが、
珍しく出社して来ませんでした。
■さすがの社長も気になったのか?
私に 「ちょっと様子を見てきてくれ」 と。
■私は、仕事終わりに、黒松さんの所に行ってみました。
■黒松さんは、
会社の借り上げアパートに一人暮らしでした。
■インターホンを何度か押してみましたが、
返事はありません。
■でも、不思議なことに、
「中に誰かいる」気配だけはあるのです。
■鍵は開いていました。
「黒松さ~ん、黒松さ~ん…?」
恐る恐るドアをちょっと開けた瞬間——
ポタッ……ポタッ……
えっ?床に赤いもんが!!!……
■いや、赤いというか、
・濃い、
・重たい、
・命 そのものの色が!
■慌てて中に入っていくと、
部屋の奥で、黒松さんが布団に横たわっていました。
そして、その頭の周り——
●血、血、血。 広がっとる---にじんでる!
固まりかけているものもありました。
■それは、まるでテレビでよくある1シーンの
事件現場のようでした。(ブルーシートかける前のやつです)
■「黒松さーーーん!!」
・・・
■頭にタオルは巻いているのですが、
まだ赤いものが広がっていました。
明らかにただ事ではない状態でした。
■私は、心の準備など全くしていなかったので、
日常の延長にあるはずの空間が、
まるで別の場所のように感じられました。
■「黒松さん!」
再度、声をかけると、かすかに反応がありました。
黒松:「昨日…自転車で転んで…なんとか帰ってきたんですが…」
その言葉に安堵しつつも、状況は深刻でした。
■私は、救急車を呼ぼうとしましたが、
「大げさにしないでください!」
と、遠慮がちに断られました。
■近づいてみたら、めっちゃ酒くさい。
(ああ……なるほど!
あの社長の激ヅメ(激しい𠮟責)を耐えるための一杯。
いや一杯が、二杯、三杯・・・と深酒になってしまったのでしょう。
人生の重みをアルコールに紛らわせたのでは?)
■事情は察せられましたが、
それでも怪我の重さは変わりません。
■仕方ないので、私の車で病院へ連れていきました。
■側頭部は、何針も縫う大怪我でした。
■「どうしても入院したくない。」というので、
仕方なく再び部屋まで送って帰ってあげました。
■私の車の中には、
止血のためのティッシュや布が散乱していました。
後で、シートにこびりついた血痕を落とすのに
一苦労でした。
■今でもふとした瞬間あの鮮烈なシーンが
よみがえる時があります。
・・・
■2~3日後。
黒松さん、普通に出勤してきました。
私:(いや~、ほんまにこの人、心も体も鉄人!や~)
■そして、一日の仕事を無事終えて、帰り際。
自転車にまたがる黒松さん。
■その頭には——
どどーんっ!と、
フルフェイスばりのヘルメット。
■もはや、守りすぎて、逆に
武士が“いざ出陣!”とばかり、兜でもかぶったような。
■思わず笑ってしまいそうになるのを必死でこらえて、
💮「それでいい!!それが正解!」
と声にはならない心の声で賞賛しました。
■自転車の死亡事故のほとんどが、
ノーヘル(ヘルメット被ってない)と聞きます。
■最近、
やっと自転車のヘルメット着用が努力義務になりましたが、
罰金・罰則がないせいか、まだまだノーヘルの人が
多いような気がします
■私があの日見たあの “ 惨いシーン ” は、
決して特別な出来事ではありません。
ほんの少しの不注意で、誰にでも起こり得る現実です。
■私はこう考えています。
🚙自動車に乗れば、
自然とドアを閉め、シートベルトを締めます。
それと同じように、
🚴自転車やバイクに乗るなら、
ヘルメットをかぶり、あごひもを締める。
■それを、
「特別なこと」にしてはいけない!と思います。
あの日の光景を知る者として、
静かに、しかし強く訴えたいです。
--------「乗るなら、かぶれ!」------
=それだけで、守れるものがあります!=
“ Ride your life!”
----つづく