今、何を期待した?

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コラム
昨日の夜のことが、
夢だったみたいに思えた。

朝の教室。
窓から差し込む光が、
机の上を白く照らしている。

誰かの笑い声。
椅子を引く音。
教科書を開く音。

いつもと同じ朝。
いつもと同じ教室。

なのに、凪の中だけが少し違った。

机に頬杖をつきながら、
窓の外を見る。

青空。
風に揺れる木々。

ふと、昨日の夜を思い出す。
"今日はもう十分なんじゃない?"

陽菜の声。
夜道。
街灯。
並んで歩いた時間。

凪は、慌てて顔を上げる。

まただ。
今日だけで、何回思い出しているんだろう。

「……変なの」
小さくつぶやく。

その時、教室のドアが開いた。

凪の心臓が、一瞬だけ跳ねる。

でも入ってきたのは、
別のクラスメイトだった。

凪は、自分でも驚く。

今、何を期待した?

視線を落とす。

胸の奥が、少しだけざわつく。

"違う"
凪は心の中で言う。

ただ、昨日たくさん話したから。
ただ、少し安心したから。
ただ、それだけ。

なのに、否定しようとするほど、
陽菜の笑顔が浮かぶ。

"凪が楽なほうが、見てて安心する"

また。、凪は額を机につける。

おかしい。
こんなの、今までなかった。

悠真のことを考える時は、
もっと違った。

会えると嬉しい。
優しいと嬉しい。
話せると嬉しい。

でも、今みたいに、
気づくと頭の中にいる感じじゃなかった。

もっと静かだった。
もっと、わかりやすかった。

じゃあ、これは何なんだろう。
凪は、机の木目を見つめる。

"私は陽菜のことが気になっているの?"

その問いが浮かんだ瞬間、
胸が大きく鳴る。

違う。
そう思う。

でも、何が違うのかは、
うまく説明できない。

"私は普通だし"
その言葉を考えた瞬間、
凪は自分で違和感を覚えた。

普通って、何だろう。
昨日までなら、考えなかった問い。

でも、陽菜と出会ってから、
問いが少しずつ変わり始めている。

嫌われないためには?
じゃなくて、どうしたら楽になれる?
でもなくて、もっと奥。

"私は、本当は何を感じているんだろう?"

その時だった。

「おはよ」
聞き慣れた声。

凪の心臓が、また大きく跳ねる。

顔を上げる。

そこには、
少しだけ眠そうな顔をした陽菜が立っていた。

朝の光の中で、陽菜が笑う。

「何その顔」

凪は、何も言えなかった。

ただ、自分の心臓の音だけが、
やけに大きく聞こえていた。
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