さっきまで、頭の中で考えていた相手が、目の前にいる。
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コラム
教室のざわめきが、少し遠く聞こえる。
「何その顔」
陽菜が笑う。
朝の光が、窓から差し込んでいる。
凪は、何も言えなかった。
言えるわけがなかった。
さっきまで、頭の中で考えていた相手が、
目の前にいる。
しかも、昨日までとは違う。
昨日の夜、公園で話した。
並んで歩いた。
本音を言った。
そして今、陽菜を見るだけで、
胸の奥が少し落ち着かなくなる。
「寝不足?」
陽菜が聞く。
凪は慌てて首を振る。
「ち、違う」
陽菜が少し笑う。
その笑顔を見た瞬間、また胸が鳴る。
凪は視線を逸らす。
なんなんだろう。
昨日から、ずっと同じことを考えている。
悠真のことを考える時とは違う。
悠真は、好きだと思えた。
優しい。
かっこいい。
一緒にいると嬉しい。
ちゃんと説明できる。
でも陽菜は違う。
説明しようとすると、わからなくなる。
安心する。
それは確か。
でも、安心だけなら、
こんなに何度も思い出さない気がする。
"凪が楽なほうが、見てて安心する"
また思い出す。
凪は小さくため息をつく。
その様子を見て、陽菜が首をかしげる。
「なんか悩んでる?」
ドキッとする。
図星だった。
でも、まさか言えない。
"あなたのことです"
なんて。
凪は机の上の教科書を見る。
その時、教室の後ろから声がした。
「おはよう」
悠真だった。
クラスメイトたちが反応する。
いつもの朝。
凪も反射的に顔を上げる。
悠真が笑う。
今までなら、それだけで少し嬉しかった。
でも今日、凪は気づいてしまう。
その直後、自分が何をしたか。
凪の視線は、無意識に陽菜へ向いていた。
陽菜は、何も気づいていない。
窓際で、普通に笑っている。
その横顔を見た瞬間、胸がまた揺れる。
凪は慌てて前を向く。
おかしい。
本当におかしい。
"私は陽菜に恋してるの?"
頭の中で、その問いがまた浮かぶ。
でも、その答えはまだ怖かった。
だから凪は、別の問いを探そうとする。
"私は、陽菜の何に惹かれているんだろう"
その問いだけが、静かに胸の奥へ残った。
そして、
その答えを知るのが少し怖くて、
少しだけ知りたかった。